ビル・マーフィー・ジュニア『ハーバードビジネススクールが教えてくれたこと、教えてくれなかったこと』
ハーバードビジネススクールが 教えてくれたこと、教えてくれなかったこと 起業した卒業生3人の10年間
- 作者: ビル・マーフィー・ジュニア,藤原朝子
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 2011/12/01
- メディア: 単行本
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3人のハーバードビジネススクールの卒業生たちのキャリアをレビューしながら、成功のルールを見ていくスタイル。おもしろかった。成功のルールが10個挙げられているのだけど、その前提に「起業は学べる」ということが書かれていて、それはとてもいいな、と思いました。
何より、9つめですよ。「粘って、辛抱して、勝つ」。絶対に「ああ、起業なんてしなきゃよかった…」と思う瞬間があるに決まっていて、でもあきらめずに続けることが大事で、ということですよね。励まされます。
【成功のルール】 起業は学ぶことができる
- 成功を固く決意する
- まず問題を見つけ、それから解決策を考える
- 大きく考える、新しく考える、もう一度考える
- 1人ではできない
- 1人でやらなくてはいけない
- リスクを管理する
- リーダーシップを学ぶ
- 売り込み方を学ぶ
- 粘って、辛抱して、勝つ
- 一生続ける
東浩紀・編集『日本2.0 思想地図β vol.3』
思想地図βのチームで、ディスカッションしながら創った日本の新憲法草案。読みがいがあります。辞書かってくらい分厚いし…。そう安全帯は、二元性の原理で貫かれています。天皇と総理、国民と住民、国と基礎自治体、国民院と住民院を設定してあったりとか。専門家を集めてディスカッションしながら草案を描いていく過程は楽しかったろうなあ。
以下、メモ。
p.104-105「
ぼくがこの草案の創作にあたり、重要な原理として表現したいと考えたのは、ひとことで言えば、フローとしての日本とストックとしての日本の両立という理念である。ぼくたちはいま、ネットワークが世界全体を覆い、ヒトとカネとモノの奔流がかつてない速度で国境を超える時代に生きている。国民がそれを歓迎するか否かにかかわらず、国内に住む外国人はこれからますます増えるだろうし、またその逆に国外で生きる日本人もますます増えていくことだろう。日本文化は日本だけのものではなくなるだろうし、逆に国内にもさまざまな文化が流れ込むことになるだろう。つまりは、日本なるもののウチとソトを決める境界はますます曖昧になっていくはずなのだが、にもかかわらず、そこでもぼくたちが(日本という国家が解体したり消滅したりすると前提するのでないかぎり)、意識的にせよ無意識的にせよ、日本人としてなにかしらの伝統と遺産を引き継ぎ、これから生まれる子どもたちに譲り渡していくこともまたまちがいない。日本という国家の制度的な境界はこれから溶解せざるをえないだろうし、また特定の立場からはそれは好ましい傾向と考えられるだろうが、現実的に考えたとき、日本列島というこの土地に蓄積された膨大な記憶、言語や文化や習俗の独自性がそうたやすく消え去るとも考えられない。
流れる日本と留まる日本。解体する日本と解体に抵抗する日本。市場と遺産。ぼくはこの草案で、その二面を止揚する制度を提案しようと考えた。天皇と総理、国民と住民、国と基礎自治体、国民院と住民院、以下の草案全体を貫く二元性の原理は、そこから導かれている。」
p.106-107
前文
- 日本は公正な国でなければならない。
- 日本は平和な国でなければならない。
- 日本は繁栄する国でなければならない。
- 日本は開かれた国でなければならない。
p.116
#内閣は「政議院」。構成員は「政議」なので、太政官と参議の関係みたいだな
p.178-179「
新憲法で特徴的なもう一つの点は、「議事の公開」に、単なる外部監視による議事の記録以上の積極的な意味を見出している点である。この点では、東浩紀『一般意志2.0』(講談社、2011年)の一側面、あえて無味乾燥に言い換えれば「具体的事柄についての社会の大きな反応とリアルタイムに連携する新しい熟議民主主義」を新憲法は志向していると言える。
このような理念は現代の情報通信技術の発展を見る以前にはまったく成立しえなかった。なぜなら、「社会の大きな反応」という考え方が、統計的な手法を前提としているからである。たとえば、国会の議事を公開し、聴衆による野次(という参加方法)を許すような考え方は、その聴衆の野次が「社会の大きな反応」を代表しているという仮定が存在しなければ、非論理的である。」
↓
「衆合的意見」
ポール・アダムス『ウェブはグループで進化する』
ウェブはグループで進化する ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」
- 作者: ポール・アダムス,小林啓倫
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/07/26
- メディア: 単行本
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ソーシャルネットワーク(TwitterもFacebookも)は大好きで、そこつながりで知り合えたステキな仲間もたくさんいるわけですが、均等にネットワークってできていかないので、この「グループで進化する」って感じはすごくわかるなあ。
p.7-9
今まさに新しい世界を築いているのは4つの変化
- アクセス可能な情報の急増
- ウェブの「コンテンツ中心型」から「人中心型」への構造変化
- 人間関係を正確に把握し、分析することが史上始めて可能になったこと
- 人の意思決定に関する研究の進歩
p.94-96
人間関係にはタイプがある:
知り合い、情報源、遊び友達、協力者、仲間(遊び友達であり、協力者である人々)、癒し手(仲間に近いが、心理面での支援を与え合う人々)、相談相手、親友
↓
相談相手と親友の数は非常に少なく、5人未満であることが多い。
p.244-251
各章のポイント整理=今日のソーシャルウェブ
- ソーシャルネットワークは目新しいものではなく、ソーシャルウェブは一時的な流行ではない
- 情報共有は目的達成の手段
- ソーシャルネットワークは独立した小グループで構成されており、グループをつなぐ役割を果たしているのは普通の人々
- 親しい人々から強い影響を受ける
- 情報の拡散においては、個人の性質よりもネットワーク構造のほうが重要になる(イノベーター・ハブとフォロワー・ハブ、個人の存在に着目)
- 人は他人を観察することで、どのように振る舞うべきかを理解する
- 私たちが下す決断の大部分は、無意識と感情をつかさどる脳によって行われる
- 人は新しいことを避けるようにできている(特に自分の信念と反する場合)
- 人は友人から情報を得ることがますます増えている
p.252-254
これから数年でどのような変化が訪れるか
- ビジネスを人中心型へ移行することが必要不可欠になる
- 新しい知識体系が求められるようになる
- 人の社会行動
- ネットワーク
- 人の思考回路
p.260
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リンダ・グラットン『ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる 働き方の未来図<2025>』
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- 作者: リンダ・グラットン,池村千秋
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2012/07/28
- メディア: 単行本
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10年後にはどんな働き方をすることになるのか、を語る本。どんどん変わっていく世界だからこそ、固定観念を問い直さなければならない、というもの。
3つのシフトを!ということで挙げられているのは、
- ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
- 孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
- 大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
ということですね。まあでも、僕は働き始めて10年ちょっとだけど、その間でも働き方はまったく変わっているわけで、どんどん会社の枠を超えて、ソーシャルを使って新しい人とつながって、働いて、持っている知恵を与え合って…というのができるようになっていて、楽しいよなあ。
教育業界にいるということは、10年後や20年後に社会に出て夢を叶えたり家庭をもったりする子どもたちを相手にした仕事なわけで、2025年にはどんな社会になっているかを考えて、そこで役立つものを提供したいと思うよね。これは、SFCに入学してすぐに、「君たちは未来からの留学生なのだから、未来がどんな世界になっているかをきちんと理解し、そこで必要なことを学んで卒業しろ!」と言われたのと同じ。今でも仕事の中ではときどき引用する言葉です。
ものすごく「おお!」と思うことはないけれども、いろいろと考えるきっかけが多く、刺激的な本です。
以下、メモ。
p.26-27
未来に押しつぶされない職業生活を築くために、どのような固定観念を考える問い直すべきなのか?
3つの面での常識の<シフト>が必要:
- ゼネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直すべき
- 職業生活とキャリアを成功させる土台が個人主義と競争原理であるという常識を問い直すべき
- どういう職業人生が幸せかという常識を問い直すべき
p.68
変化に押しつぶされないためにすべき例として挙げられた<シフト>
- 広く浅い知識しかもたないゼネラリストから、高度な専門技能を備えたスペシャリストへの<シフト>
- 孤独に競い合う生き方から、ほかの人と関わり協力し合う生き方への<シフト>
- 大量消費を志向する
p.34-61
未来を形作る5つの要因
- テクノロジーの変化
- テクノロジーが飛躍的に発展する
- 世界の50億人はあインターネットで結ばれる
- 地球上のいたるところで「クラウド」が利用できるようになる
- 生産性が向上し続ける
- 「ソーシャルな」参加が活発になる
- 知識のデジタル化が進む
- メガ企業とミニ起業家が台頭する
- バーチャル空間で働き、「アバター」を利用することが当たり前になる
- 「人工知能アシスタント」が普及する
- テクノロジーが人間の労働者に取って代わる
- グローバル化の進展
- 24時間・週7日休まないグローバルな」世界が出現した
- 新興国が台頭した
- 中国とインドの経済が目覚ましく成長した
- 倹約型イノベーションの道が開けた
- 新たな人材輩出大国が登場しつつある
- 世界中で都市化が進行する
- バブルの形成と崩壊が繰り返される
- 世界のさまざまな地域に貧困層が出現する
- 人口構成の変化と長寿化
- Y世代の影響力が拡大する
- 寿命が長くなる
- ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える
- 国境を越えた移住が活発になる
- 社会の変化
- 家族のあり方が変わる
- 自分を見つめ直す人が増える
- 女性の力が強くなる
- バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える
- 大企業や政府に対する不信感が強まる
- 幸福感が弱まる
- 余暇時間が増える
- エネルギー・環境問題の深刻化
- エネルギー価格が上昇する
- 環境上の惨事が原因で住居を追われる人が現れる
- 持続可能性を重んじる文化が形成されはじめる
p.78-85
時間の細切れ化が進み、時間に追われることの弊害
- 専門技能を磨きにくくなる。
- ものごとに集中して取り組む時間が失われる。10000時間は修得にかかる(心理学者ダニエル・レヴィティン)
- 観察と学習の機会が失われる
- 仕事の作業の手を休めて、自分より高度な技能の持ち主の振る舞いを観察する時間もなくなる。
- 自分の技能を高めるためには、達人たちの仕事ぶりを観察し、自分との細かな違いを知ることが不可欠だ。
- 気まぐれと遊びの要素が排除される
- 遊び心と遊びの要素が犠牲になってしまう。
p.93-94
時間に追われる未来を迎えないために、3つのシフトを成し遂げることが効果的だ:
<第一のシフト>
- 専門技能の習熟に土台を置くキャリアを意識的に築くこと。一つのものごとに集中して本腰を入れることが出発点になる。
<第二のシフト>
- せわしなく時間に追われる生活を脱却しても必ずしも孤独を味わうわけではないと理解することから始め、自分を中心に据えつつも、ほかの人たちとの強い関わりを保った働き方を見いだすこと。
<第三のシフト>
- 消費をひたすら追求する人生を脱却し、情熱的になにかを生み出す人生に転換すること。
p.127
<第二のシフト>のために、3つのタイプの人的ネットワークを積極的に築いていく必要がある:
- ポッセ(同じ志をもつ仲間)をもつ。いざというときに頼りになり、長期にわたって互恵的な関係を築ける少人数のネットワークである。
- ビッグアイデア・クラウド。多様性に富んだ大人数のネットワーク。
- 自己再生のコミュニティ。頻繁に会い、一緒に笑い、食事をともにすることにより、リラックスし、リフレッシュできる人たち。
p.185
賢い群衆:
アメリカの物理学者フィリップ・アンダーソンの「量は質の変化を生み出す」ということ。世界の50億人が結びつき、能動的に活動すれば、過去の延長線上にない画期的なアイデアが誕生し、集積効果を通じて、新しいものごとの創造と共有が前例のないレベルまで進む。
p.232-235
仕事の世界で必要な三種類の資本:
第一の資本
知的資本=知識と知的思考力。学校教育で養うもの。
第二の資本
人間関係資本=人的ネットワークの強さと幅広さ。
第三の資本
情緒的資本=自分自身のいついて理解し、自分のおこなう選択について深く考える能力、そしてそれに加えて、勇気ある行動を取るために欠かせない強靭な精神をはぐくむ能力。
p.287-288「
ここで取り上げた家具職人やソフトウェアプログラマー、物理学者、映画制作スタッフに共通するのは、自分のつくり出した作品に自分の刻印を押していることだ。それにより、ほかの人たちに自分の業績を知らしめ、自分の評判を管理できる。評判づくりとナルシシズムは、似て非なるものだ。魅力的な個人ブランドを築きたいと思うことは、ナルシシズムの表れではない。評判管理はビジネスの世界で不可欠になるのだ。
ただし、未来の世界で個人ブランドを築くためには、「私って、こんなにすごいんです!」と大声で叫んで歩くだけでは十分でない。(略)魅力的な個人ブランドを築いて大勢の人たちとの差別化を図り、その個人ブランドに信憑性をもたせることが欠かせない。職人にせよ、プログラマーや物理学者にせよ、まずは質の高い仕事をし、そのうえで自分の高い異質を世界に向けてアピールする必要があるのである。」
p.305-306
ポッセに関して重要な点は3つだ:
- ポッセは比較的少人数のグループで、声をかければすぐ力になってくれる面々の集まりでなくてはならない。また、メンバーの専門技能や知識がある程度重なり合っている必要がある。専門分野が近ければ、お互いの能力を十分に評価できるし、仲間の能力を生かしやすい。
- ポッセのメンバーは以前一緒に活動したことがあり、あなたのことを信頼している人たちでなくてはならない。知り合ったばかりの人ではなく、あなたのことが好きで、あなたの力になりたいと思ってくれる人であることが重要だ。
- 充実したポッセを築きたければ、ほかの人と協力する技能に磨きをかけなくてはならない。他人に上手にものを教え、多様性の強みを最大限生かし、たとえバーチャルな付き合いでもうまくコミュニケーションを取る技能が不可欠だ。
p.333「
未来の世界で自己再生のコミュニティの土台をなす要素の多くを、キケロがすでに指摘しているように、私には思える。友人関係は自然に生まれるものではなく、エネルギーと時間を意識的につぎ込まなければ成り立たないこと。活力源となる友人関係の核をなすのが関心と価値観の共有であること。キケロは、こうした点を2000年以上前に指摘していた。自分と似た人としか友達といなれないというのではない。友情が花開くためには、関心と経験を共有している必要があると、キケロは言いたいのだ。友情は、関心と経験の共有という土台の上に生まれて、相互の善意と愛情、対話の深まりを通じて強化されていく、というのである。」
石破茂・宇野常寛『こんな日本をつくりたい』
- 作者: 石破茂,宇野常寛,田村昌裕
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2012/09/07
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宇野常寛さんの言動は、最近とても気になっていて、でもどちらかと言うと政治とは無関係に感じていたので、石破さんと対談!?と思って手にとった。とても真摯に語り合っているのがよいですね。
「実現不可能なベストよりもまずは実現可能なベターを目指すことが理想の実現のためには大切だ」というのが、中で出てくるのだけど、本当にそうだなあ、と思います。戦後の制度をいつまでも引きずっていないで、新しい枠組みを考えて、100点満点を取れなくても、今の点数を少しでも上回るように変えていこうよ。
がぜん、石破さんに興味が出てきました。いろいろと言いたいことはあるし、信用できない部分もいっぱいあるけれど、ベターな選択肢として、新しい自民党になってほいいね。
以下、ここはよかったな、ってところをメモ。
p.3「
僕の考えではこの「政治漂流」、すなわちポスト・コイズミ時代の政情不安定は、自民/民主という二大政党体制が機能していないため、議会制民主主義自体が麻痺しつつあることの証左である。誰もが気づいていることだが、今や自民/民主の両党はともに右から左まで、新自由主義から社会民主主義まで、親米から反米までほぼすべての論者が党内で一通りそろってしまう総合デパート状態だ。つまり、呉越同舟が過ぎて政策レベルではまとまりようがない上、口あたりのいいことを述べて有権者のボリューム層に訴えようとするのでどちらも似たような政策になってしまう。どちらのマニフェストも幕の内弁当のようなもので、せいぜい副菜がコロッケか、カキフライかの違いしかない。その結果、党内抗争が絶えないその一方で、政権は常に政策論争ではなくスキャンダルの追求と人格批判にさらされ続けることになる。これで「政治漂流」にならないほうが不思議だ。この状態はもはや大きな政界再編でしか打開できないし、そのためには選挙制度や政党文化自体の見直しも視野に入れた議論が必要なはずなのだ」
↓
なのに、「指摘はもっともだがそう簡単にはいかないのだ」的な事実上何も言っていない答弁によってごまかさる。そして、「リーダーの資質」を問う人格論にをしていても意味などない。
p.25「
石破 小沢さんが「普通の国」と言った時に非常に違和感があったのは、普通の国ってどこにあるの?ということなんです。
アメリカは普通の国ではない、極めて特異な、ユニークな国です。中国が普通の国ですか?私にはそうは思えない。イギリスだってフランスだって普通の国ではありません。普通の国なんてどこにもない。それなのに、「普通の国になる」というのは一体なんなんだ。」
p.62「
宇野 国民主権という問題を今、もう一度考えるのならどのようなかたちで国民に自覚を促すのか、「自分が為政者だったらということを少しでも考えて」投票行動をするような文化を育てていくのかをゼロから考えていくべきなのだと思います。憲法改正や政治改革の問題を考える時には、常にこの視点に立ち返っていきたいですね。」
p.80「
石破 これまでの政治家の決定的な説明不足にあると思いますよ。不安が蔓延しているのは分かっているのに、若い人にこそ理解してもらおうという努力がまるでなされなかった。」
p.99
2011年10月~12月 非正規雇用が過去最高35.7%、正社員は64.3%
↓
宇野 だからたぶん、「正社員」や「公務員」が身分保障を獲得できる「狭き門」だと思われているんでしょうね。この認識が正しいかどうかはともかく、そんな印象がぼんやりと共有されている。この「不幸な状態」を解消する方法は、大きく分けて二つあると思うんです。一つは「戦後」のように「誰もが正社員になれた時代」に戻すこと。もう一つは「非正規雇用やフリーダーでも、ちゃんと生きられるような社会」をつくること、つまりこの格差の存在自体はある程度認めた上で、セーフティネットを張ることで緩和するという発想ですね。そして、これまで話してきたように、僕は後者のほうが現実的だと思うんです。国際競争力の問題から言っても、戦後的な企業文化を維持しても誰もが正社員になれた時代を維持するというのは非常に難しいでしょうし。
p.119-120「
石破 アップルを例に出すまでもなく、ビジネスモデル自体を輸出するという発想は、これから絶対に必要ですね。だとするとその逆に日本に外国の企業が来てもらうという発想も大事になってくるでしょう。たとえば「ベンツ日本工場」とか「BMW日本工場」を見たことがありますか?子どもの頃から不思議に思っていたのですが、ベンツ日本工場も、BMW日本工場も、あるいはフィリップス日本工場でもいいんですが、まったく見たことがない。日本の製造業は世界中に工場を持っているのに、なぜ外国から工場は来なかったのでしょう。労働者を連れてくるのも一つのやり方ですが、雇用をつくる場、つまり外国企業はなぜ日本に投資をしないのか、ということを考えていかないと、結局GDPが上がることにはなりません。
日本を国際化するというのは、企業の日本への投資を増やすという意味もあります。日本のGNPはある程度伸びているのにGDPが伸びないのは、海外から投資がないからです。そこには、必ず理由があるはずです。」
p.121-122「
石破 日本国内の外資系企業は非製造業の割合が高く、また外資系の日本国内の設備投資額も、2007年は1.5兆円あったのが、2009年には1/3の0.5兆円に激減しています。外資系企業のアジア本社の割合も、シンガポール24%、中国23%、香港19%、台湾7%、韓国7%などに比べて日本は6%いかありません。
このアジア地域においては、各国が投資誘致合戦を繰り広げています。すでに法人税減税(日本30%に対してシンガポール17%)、背t日とし減税などは、ゼロつまり「税金タダですから来てください」という国も珍しくなく、競争は激化する一方です。人材育成という点でも、シンガポールなどでは小学校から本格的な英語教育をし、あるいは金融やマーケティング論を授業に取り入れているのに対して、我が国ではこれらのライバル国と同じ土俵にすら立っていません。」
p.147-148「
宇野 今、反原発運動の人たちが盛んに、原子力発電所の落とすお金に依存した地方の産業構造を批判しています。その批判はまったく正しいとおもいますが、その一方で彼らの多くが「駅前の商店街」を擁護して「ロードサイドのショッピングセンター」を批判している。けれど、単純に考えて「原子力ムラ」と「駅前の商店街」はどちらも、かつての角栄的な利益誘導政治に基づいた産業構造の産物で、両者は表裏一体のはずです。僕の考えでは、なんとなくハートフルなイメージがあるから「駅前の商店街」は素晴らしいと言い、大資本と結びついているものはとにかく批判的に捉えなきゃいけないという昔の左翼的な発想をひきずって「ロードサイドのショッピングセンター」を悪だと決めつけても、まったく問題は解決しない。地方を再生するために重要なのは、これまで話してきたように、すでに機能しなくなっている戦後的な地方経営の構造そのものをどうつくり替えるか、のはずなんです。」
p.155「
石破 原発に異常な事態が発生した際の対応は、「止める」「冷やす」「閉じ込める」の3つですが、福島第一原発は止まったものの「冷やす」と「閉じ込める」に失敗してしまいました。これに対して女川原発は同じように震災や津波にあったにもかかわらず、「止める」「冷やす」「閉じ込める」が問題なくできた。福島第一原発でも電源の喪失さえなければ事故は起こらなかった、ということをどのように評価するか。
同じように、大事なのはマネジメント、管理の能力です。技術だけではなく、誰がどのように原発を管理するか。今回は総理大臣から現場まえ、これが非常に悪かったと思われます。この懸賞を徹底して行い、絶えず改善していくことが必要です。
総理大臣は生半可な知識で現場を混乱させてはなりません。現場について言えば、アメリカでは原発の運転員の多くは、空母や潜水艦など海軍の原子力動力艦の運転に携わってきた人たちだそうです。民間船と違って軍艦は被弾などによる事故を当然に想定していますから、対応能力は相当に高いと考えるべきでしょう。日本は「むつ」の失敗以来、原子力動力船を官民ともに持っていませんから、この能力を高める人材を確保するためには、相当の努力が必要です。」
p.160-161「
石破 私は最近、時速370キロという世界最速のスーパー・エコカー「Eliica」を開発された慶應義塾大学の清水浩先生にお話を伺い、エリーカにも実際に乗ってきました。これは電気自動車ですから、当然排気ガスを出さないし、エンジン騒音もない、必要なエネルギーはガソリン車の四分の一という、いわゆるエコカーです。でありながら、加速は、あのポルシェ911ターボを超えるスポーツカーでもあるのです。先生曰く、今の電気自動車が売れないのは、「つまらない」「面白くない」「わくわくする楽しさがない」からだそうです。「車好きが好きになれる電気自動車をつくらないと、電気自動車の未来はこれ以上開けない」とおっしゃっていました。先生は決して自動車の専門家ではないのですが、車が大好きで、みんながわくわくする車でなければダメだと考えて、そういう車をつくったそうです。」
p.173-174「
宇野 たとえば僕は「憲法九条を世界遺産にしよう!」という文化左翼の言葉と、「憲法九条を改正して<普通の国>になろう」というかつての保守派の言説は、コインの裏と表のようなもので、実はまったく同じ論理構造でできていると重います。つまりどちらも偽善、もしくは偽悪を受け入れることで近代国家として成熟するべきだと説いている。主張自体は真逆だけれど、どちらもアイロニカルな物語を文化空間で共有することで個人と国家を結びつけようという発想に基づいている。けれど、これまで確認してきたように、こうした発想は冷戦下の国際秩序があってのものです。冷戦構造がなくなれば、当然、こうした個人と国家を結びつける物語回路が機能するわけがない。けれど、悲しいことに今の日本では護憲派も改憲派も、そのことに気づいていない。彼らは国家が国民統合のために語る「物語」として憲法を捉えている。この発想を捨てない限り、たとえ「改憲」が実現したとしても、それが「機能する」憲法を手にすることにはつながらないと思うんです。」
p.182-184「
宇野 じゃあ、どうすればその「検証」する視点をきちんと教えることができるのか。僕なりに何度か考えたことがあるんですけれど、そのたびに引っかかるのが「歴史に<if>はない」という言葉なんですよね。でも、僕はそうじゃないんじゃないかと思う。実は、歴史のifを考えることが歴史を学ぶ上では一番大切なことなんじゃないかと思うんです。
石破 「もしこうだったら」という話は大事です。猪瀬直樹さんが書かれた『昭和16年夏の敗戦』(中公文庫)という本がありますが、それを呼んで目から鱗が落ちました。「合理的にデータに基づいて考えればアメリカとの戦争には勝てない」と、昭和16年の夏、つまり日米開戦の前に結論が出ていたわけです。ところがその結論に対して「机上の空論」とか、「貴様は日本人の魂をどこに置いた!」とか、「非国民」「戦は時の運」とか、理屈にもならない屁理屈で戦争に突入し、国民をだましてきた。陸軍も海軍も軍備を整えてきて、今さら、「戦争なんてできません」とは言えなかった。
突き詰めて考えることなしに、最後は「まあ仕方ないか」「やむを得まい」ということで、あの戦争に突入していった。だいたい日本人が「やむを得まい」と言ってする決断に、ろくなものはありません。」
↓
「新しい歴史教科書をつくる会」が、「物語を語れ。物語がないから公共心がなくなっている。」と語っていたが…
↓
「宇野 僕はそこにすごく違和感があった。やはり歴史は物語ではないのではないか、ただの事実の積み重ねなのではないか。それを一貫した価値観に基づいた物語として読んでしまうと、歴史から学ぶことからむしろ遠ざかってしまう。やはり歴史は物語ではないのだから、ifの可能性をどんどん考えるべきだし、そこにしか歴史を学ぶ意味はないはずなのに、どうしてお自分探し的な動機から都合の良い物語を語ろうとする。実はこれって、左翼も一緒ですよね。
石破 それはやはり、教育の過程でディベートをしてないからではないでしょうか。「自分が為政者であったら、どうするか」という考え方を教えないわけですよね。第一部でも言いましたが、国民主権というのはそういうことなのではないか。国民が主権者というのは、結局自らが為政者だったらどうするか、ということを考えて一票を投じることです。それが主権者だと思います。
宇野 すでに完成された物語を受け身で学ぶのではなくて、自分が当事者としてifの可能性をゲーム的に検証することが歴史を学ぶことなんだと思います。」
p.186-187「
宇野 日本の戦後教育って、明らかに日本的なサラリーマンや専業主婦を育成するための、ある種のプログラムだと思うんです。だから、小中高ずっと学級制度で、同じ人達と付き合って空気を読む訓練ばかりさせられる。ところが大学だとちょっと事情が異なります。高校までのような学級制度があるとは限らないので、特に都市部の大学では自分で自分が所属するコミュニティを獲得しないと人間関係が築けないわけですね。(略)たいていの場合、二つ以上のコミュニティに所属することになるでしょうしね。だから小中高の教育に過剰反応した人は「与えられた箱」の中の空気を読むことはできても、「自分に合った箱」を探すノウハウはあまり身についていない、というわけです。
「これまで」はそれでも良かったと思うんです。だって終身雇用を前提とした日本的サラリーマンと専業主婦の育成を前提にしていたんですから。しかし、これからの教育はそれじゃいけない。」
p.209-210「
宇野 本名を名乗らないからこそ、自由に自分の意見を言えるんだと思うんです。それを日本人の未成熟だと批判するのは簡単だと思いますよ。でも現実的に考えていくと、まずはそういう日本人の性根を受け入れて回っていくシステムをつくるしかないと思うんですよね。
もちろん、それはベストなかたちではないかもしれない。しかし、実現不可能なベストよりもまずは実現可能なベターを目指すことが理想の実現のためには大切だと石破さんもおっしゃったじゃないですか。たとえ匿名でも、何もコメントがつかないより進歩していると思うんです。今までは居酒屋で愚痴を言っているだけだった人間が、直接国会議員のブログにコメントをつけることができる。無責任な主体から発せられるその意見一個一個はすごく愚かで卑怯なものが多いかもしれないけれども、その愚かさと卑怯さがインターネットでははっきりと目に見えることになる。これはこれで進歩のはずで、そこから始めるしかないと思うんですよ。」
藻谷浩介『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷 浩介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 新書
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エビデンスに基づいてものごとを考える、印象に流されないで考える、ということの大事さを教えてくれる本。(経済的な読み方してないかもね・笑)でも、とても勉強になりました。
ここでご紹介した小売販売額や課税対象所得額、あるいはこの先で使う国勢調査のような、確固たる全数調査の数字は、現場で見える真実と必ず一致しますし、お互いの傾向に矛盾が出ません。一致しないのは、得体のしれない世の空気だけです。こういう空気というのは、数字を読まない(SY)、現場を見ない(GM)、空気しか読まない(KY)人たちが、確認もしていない嘘をお互いに言い合って拡大再生産しているものです。(p.69)
そんな感じになっちゃっているから、ダメなのだ、ということを淡々と説明されます。
「生産年齢人口減少」と「高齢者激増」の同時進行を、「少子高齢化」というズレた言葉で表現する習慣が、全国に蔓延しています。ですが「少子高齢化」というのは、少子化=子供の減少と、高齢化=高齢者の激増という、全然独立の事象を一緒くたにしているとんでもない表現であり、「子供さえ増やせば高齢化は防げる」というまったくの誤解の元凶にもなっています。さらには最も重大な問題である「生産年齢人口減少」を隠してしまってもいますね。(p.96-97)
もっとも重大な問題を覆い隠すなんとhなしの世の空気。もちろん、それに大きく影響を与えるマスコミやメディアなど。それらに流されずにきちんと情報を読める、冷静に判断できる人を育てるカリキュラムを作らなくては。本筋の経済だけではなく、そんなことを考えさせられました。
以下、メモ。
p.48-49「
今の不景気を克服してもう一回アジアが伸びてきたときに、今の日本人並みに豊かな階層が大量に出現してきたときに、彼らがフランス、イタリア、スイスの製品を買うのか、日本製品を買うのか、日本の置かれている国際競争はそういう競争なのです。フランス、イタリア、スイスの製品に勝てるクオリティーとデザインとブランド力を獲得できるか、ここに日本経済の将来がかかっています。
車でいうと、中国のメーカーに勝つとか、インドのナノに対抗して安い車を出すとかそういう話ではない。海外市場ではBMWやベンツにも十分伍していますが、その先のフェラーリに勝てるかということです。不動産開発でいうと、ドバイの超高層開発に勝つのではなくて、パリの街並みよりも資産価値の高い中低層の街並みを東京や大阪につくれるかということが本当の勝負です。(略)100年後も200年後も文化的価値を放ち続け商業を引き寄せる都市インフラ、日本で言えば京都の東山周辺みたいなものをつくれるか、そこに世界中の金持ちの上品な投資を呼び込めるか、これが日本の課題です。」
p.69「
ここでご紹介した小売販売額や課税対象所得額、あるいはこの先で使う国勢調査のような、確固たる全数調査の数字は、現場で見える真実と必ず一致しますし、お互いの傾向に矛盾が出ません。一致しないのは、得体のしれない世の空気だけです。こういう空気というのは、数字を読まない(SY)、現場を見ない(GM)、空気しか読まない(KY)人たちが、確認もしていない嘘をお互いに言い合って拡大再生産しているものです。」
p.96-97「
「生産年齢人口減少」と「高齢者激増」の同時進行を、「少子高齢化」というズレた言葉で表現する習慣が、全国に蔓延しています。ですが「少子高齢化」というのは、少子化=子供の減少と、高齢化=高齢者の激増という、全然独立の事象を一緒くたにしているとんでもない表現であり、「子供さえ増やせば高齢化は防げる」というまったくの誤解の元凶にもなっています。さらには最も重大な問題である「生産年齢人口減少」を隠してしまってもいますね。」
p.124
80年代の住宅バブルについて
・顧客の中心がわずか3年間に出生の集中している団塊世代である以上、需要の盛り上がりは短期的であることは明らかだった。
・ところが、当時の住宅業界、不動産業界、建設業界は「景気がいいから住宅が売れている」と考える。
↓
実際は逆で、「団塊世代が平均四人兄弟で、かつ親を故郷に置いて大都市に出てきている層が多いため、一時的ながら大都市周辺での住宅需要が極めて旺盛になり、おの波及効果で景気が良くなった」ということだった。
↓
この団塊世代が住宅を買い終われば、日本史上二度と同じレベルの住宅需要は発生しない。
p.168-169「
「常に正しい」三面等価式を持ち出すとは、何やら神聖不可侵な雰囲気ではありますが、残念ながら日本経済の現場にはもっと俗っぽい現実があります。繰り返しお話ししてきた、生産年齢人口=消費者人口の減少→供給能力過剰→在庫積み上がりと価格競争激化→在庫の時価の低下(在庫が腐る)という現象です。その結果発生した消費者余剰は、高齢者が老後に備えて確保する極めて固定制の高い貯蓄(=将来の利用福祉負担の先買いという一種のデリバティブ購入)という形で「埋蔵金」化してしまい、経済社会に循環していません。腐った在庫は最終的には叩き売られて企業収益を下げています。こういう現実を、「常に正しい」三面等価式ではどう説明するのでしょうか。」
p.177-178「
では日本経済は何を目標にすべきなのでしょうか。「個人消費が生産年齢人口現象によって下ぶれしてしまい、企業業績が悪化してさらに勤労者の所得が減って個人消費が減るという悪循環を、何とか断ち切ろう」ということです。
1.生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう
2.生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やそう
3.(生産年齢人口+高齢者による)個人消費の総額を維持し増やそう
この123が目標になります。もちろんこれらが実現できれば結果として経済成長率も改善しますので、これら目標は経済成長率に関する日本の国際公約とも矛盾しないものです。ですが、逆が起きるとは限りません。経済成長率を何か別の方法で上げたとしても、123は達成できなのです。」
p.190-191
「出生率上昇」では生産年齢人口減少は止まらない
↓
出生率は出生者数を増減させる2つの要因の1つにすぎません。もう一つ、出産適齢期の女性の数の増減という絶対的な制約要因があるのです。そしてこれは20~40年前の出生者数がそのまま遅れて反映されるものであるために、後付けでいじることはできません。
↓
出産適齢期の女性の数は、今後20年間で少なくとも三割程度、40年間には半数近くまで減少してしまう。
p.229「
それではお聞きしますが、日本で一番出生率が低い都道府県はどこでしょう。東京都ですね。それでは東京都は、女性は、女性の就労率が高い都道府県だと思いますか。低いと思いますか。高いと思いがちですよね。でも事実は違います。東京は通勤距離が長い上に金持ちが多いので、全国の中でも特に専業主婦の率が高い都道府県なのです。逆に日本屈指に出生率の高い福井県や島根県、山形県などでは、女性就労率も全国屈指に高いのですよ。」
↓
p.230
相関関係というのは因果関係ではない。
↓
p.233「
よく誤解されるのですが、「出生率を上げるために女性就労を促進しろ」と言っているのではないですよ。「内需を拡大するために女性就労を促進しましょう。少なくともその副作用で出生率が下がるということはないですよ」と言っているのです。」
田中博之『フィンランド・メソッド 超「読解力」 6つのステップで伸びる「言葉の力」』
フィンランド・メソッド超「読解力」―6つのステップで伸びる「言葉の力」 (リュウ・ブックス アステ新書)
- 作者: 田中博之
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- メディア: 新書
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評判のフィンランド・メソッドの研究で読んだ。特に読解力っていうことで、国語のカリキュラムへの転用ができないかな、と思って。さまざまな使えそうなアイデアが書いてあって勉強になりました。
あと、はっきり書かれている学校教育の目的を、「長い人生を歩んでいくために必要な基礎力を身につけること」とはっきり定義してあって、そのために方向性として2つ挙げているのにとても同意。そうそう!って感じ。
学校教育の真の目的=
子どもたちが長い人生を歩んでいくために必要な基礎力を身につけること。
そのための2つの方向性
1.なりたい自分を大きくする
2.なれる自分を大きくする
夢ばかりを応援するのも違うと思うし、それなりでいいと言うのも違うと思う。両方あるのだよね、と。
以下、メモ。
p.5
子どもにもおとなにも身につけてほしい6つの言葉の力:
- 論理的に思考して表現する力(論理力・表現力)
- 人間関係を豊かにする力(コミュニケーション力)
- イメージや感性を豊かに創造する力(創造力)
- 実践や行動につなげる力(責任力)
- 自分を励まし創る力(自信力)
- 言葉とその使い方を評価する力(評価力)
(田中博之『フィンランド・メソッドの学力革命』より)
↓
p.6「
フィンランド・メソッドは、読解力を育てるといっても、たんに読書の工夫をしたり、多読をしたり、地域図書館の活用を奨励しているだけではない。思考力や表現力の育成を重視したメソッドなのだ。
例えば、次にあげるような7つのメソッドは、典型的なフィンランド・メソッドである。
- 地域図書館を活用し家庭読書を充実させる
- サークルタイムで対話力を身につける
- ドラマやパペット劇で表現力を身につける
- カルタで読解と表現の構造を整理する
- 思考や表現の型を活用し個性的な創作を行なう
- 小集団でそれぞれの読みや表現を練り上げる
- 多様なテキストを読解したり創作したりする
p.17-18「
OECDが、21世紀のグローバル社会で活躍できる人間を客観的に評価する指標(国際比較指標)とは何かと研究し、その結果、それは従来の教科学習でもたらされる伝統的な学力ではなく、
「21世紀型学力は読解力」
という結論に達したのである。
ここでいう「読解力」とは、
「自らの目標を達成し、
自らの知識と可能性を発達させ、
効果的に社会に参加するために、
書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」
と定義されている。
もう少し具体的にその特徴を見ると、たんに、文章や資料から必要な知識や情報を「取り出す」(いつ?だれが?どこで?何を?)だけでなく、推論と資料の比較により「解釈」(なぜ?どのようにして?)したり、自らの知識や考えに基づいて、そのテキストの構造や主張点について「熟考・評価」したりする幅広い能力、ということになる。」
p.26
フィンランドの小学校4年生の作文の授業。
テーマは「1年生に冒険小説の楽しさを伝える」というもの。
- 熱心に冒険小説を書く4年生
- どうすれば1年生に伝わるかを考える→これが生活レベルでの成功体験になる
- 教室に1年生を呼んで、自作の小説を読み聞かせる
p.43-44
三段階の思考法を型として徹底的に入れる:
ホップ→「まずはじめに、私はこう考えます」
ステップ→「それを発展させて、次にこういう考えが生まれます(こういう問題が解決されます)」「その理由はこうです」
ジャンプ→「最後に、以上を総合すると、このような結論(あるいは解決)が生まれます」
p.78-83
サークルタイム:
- 与えられたテーマについて、互いに考えを述べ合う取り組み
- みんなが円形に座る(1つのサークルで6~15人くらい)
- 約束(ルール)は決めておくとよい
1.自分の考えを持って、それを発言する
2.友達の話は、中心に気をつけながら、最後まで聞く
3.話を聞いて、感想を持つ。はじめの考えから変わってもよい。
4.その感想をもとに、自分の考えを言う
(○○さんの考えに賛成/反対です。そのわけは~だからです。
○○さんの考えに似ています。それは~です。など)
5.一人一回は発言する
6.違う考えも大切にする
- 柔らかいボールをころころと転がして、発言者に渡していく。
良い点は2つ。1つは、転がるボールにみんなの視線が集中する。そして、そのままボールを拾い上げた子に主戦が集まる。2つ目は、発言するときにボールを手に持ちながらだとリラックスできる。
p.135
「カルタ」は、マインドマップみたいなもの。
#小説を創作するときには、主人公のキャラ作りにも使える。
#これ、RPGツクールのときのワークシートにそっくりだな。
p.136
イメージを広げ、創造性を養うために、フィンランド・メソッドでは「ほかのものになりきる」ということをする。
パペットや被り物などを使ってなりきりをする。
p.140
ホット・シーティング:
・一人の人間を座の真ん中に座らせて、周囲から質問攻めにする。
→創るキャラクターについて、いろいろと質問が飛び、それに即興で答えていく。
#これ、「Dead Poet Society いまを生きる」でキーティング先生がやってたやつだね。
#質問ゲームと組み合わせたらおもしろいかも。
p.160
学校で、修学旅行のプロデュースとかおもしろそう。
#同様に、家族旅行や社会見学のプロデューサーになりましょう、的なプロジェクトは可能かも。
p.166
学校教育の真の目的=
子どもたちが長い人生を歩んでいくために必要な基礎力を身につけること。
そのための2つの方向性
1.なりたい自分を大きくする
2.なれる自分を大きくする
p.197
成長の足跡を「自己成長アルバム」にまとめる
#ポートフォリオを作りましょう、ということ。