橘川真彦『児童と青年の発達心理学』
- 作者: 橘川真彦
- 出版社/メーカー: 地方・小出版流通センター
- 発売日: 1998/11
- メディア: 単行本
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創造性ってどんなふうに育つのだろうな、というのを発達過程のなかに入れられないかと思い、リサーチをかけていったのですが、やっぱり創造性って「スキル」なのよね。アーティスティックな才能とか、創造的な囚われない思考って、どういうふうに獲得されていくのだろう。そのあたりをしっかり説明している人っていないのかな。ギルフォードやトーランス、恩田彰など、今まで知らなかった人たちの名前を得ることができたので、このあたりを検索ワードにして次のリサーチに進むか。
以下、メモ。
p.102-103
創造的思考の過程(ワラス Wallas, G., 1926)
- 準備期:解決すべき問題を設定する時期。問題への感受性を働かせ、資料を収集する段階。
- あたため期:問題解決への努力を休止したり、他の活動をしたりし、一見思考を放棄しているように見える、ひらめきを待つ段階。
- 啓示期:思いがけない時に突然解決策がひらめく時期。
- 検証期:ひらめいた着想が作品や製品など具体的な現実に妥当なのかを吟味する時期。
p.103
トーランスによる、創造性の高い人間に共通した人格特性:
確信していることに対しては勇気がある、好奇心が強い、自分で考え判断し、仕事に没頭して余念がなく、直感的、かつ持続的で、ものごとを認めようとしない、危険をものともせず、権威者の判断を受け入れることを好まない。
p.103-104
創造性の構造(ギルフォード)
- 問題に対する敏感さ:問題を発見したリ、改善点や不足点を敏感によみとる能力。
- 流暢性:アイディアを流暢に次々と多量に生み出す能力。連想・言語・表現・観念の流暢さが含まれる。
- 独創性:一般の人とは異なる非凡な反応を生む能力。反応の非凡生、反応の遠隔連合、反応の巧みさにより評価される。
- 柔軟性:特定の解決方法にこだわらない。自発的柔軟性と適応の柔軟性がある。
- 綿密性:細かい点にも注意を払って課題解決を完成する能力。
- 再定義:物事の概念を分解した後、再構成したり再定義したりする能力。
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このなかでも、流暢性・独創性・柔軟性が、拡散的思考の中心的な因子であると考えられている。
p.104
トーランスの実験によれば、小学校1年生~3年生にかけては、創造性のスコアは確実に増加するが、3年生と4年生の間に鋭い低下現象が見られる。5年生から6年生には再び成績は回復するが、小学校6年生から中学1年生の間にまた低下が現れる。2つの谷を通過することが知られている。
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小学校4年生にみられる低下は、この年令の子どもたちが社会的な服従や妥協や競争といった社会的技能を学習するのと同時に、社会化の圧力が個性や自由の発揮を妨げるといえるだろう。
p.105
創造性の教育についての阻害条件(恩田彰・1974)
- しつけを重視しすぎて自発性を軽視する
- 子どもに期待しすぎる
- 指導計画の進め方に柔軟性が欠ける
- 集団への同調性を強制する
- 回答の仕方が決まった質問しかない
- 失敗と欲求不満を恐れて、それを処理する能力と態度を抑える
- 質問を無視したり、探索や冒険を抑制する
- 集団からの逸脱を異常視する
p.105-106
恩田彰による、創造性を開発する方法の原理:
- 心的エネルギーの開発と統制:創造活動の原動力としては、生命力・活力ともいうべき心的エネルギーがあげられる。創造性は知能と比べて情意的傾向が強く、動機付けと関係が深い。
- 新しいイメージの開発:新しいイメージやアイディアがより明確化されればされるほど創造が実現しやすく、より具体的になればなるほど、それが目標となってその達成処理が容易になる。
- 素材としての知識や技術の習得と体系化:基礎的な知識や技術を習得し、それを自己のなかで整理し、体系化しておく。
- 個性の開発と育成:創造は、新しいものを作り出すということで、その内容は個性的である。創造活動では、独創性が尊重されるので、個性の開発と育成が基本となる。