司馬遼太郎『街道をゆく (22) 南蛮のみち?』

街道をゆく〈22〉南蛮のみち 1 (朝日文庫)

街道をゆく〈22〉南蛮のみち 1 (朝日文庫)


出張で行くポルトガルのことをちょっといろいろ知りたいな、と思って。司馬遼太郎が「街道をゆく」で行っているところでもあるので、それで読もうか、と。「南蛮のみち」になっているけど、この本ではバスク地方/バスク人のことが中心。司馬さん、ずいぶんバスクがお気に入り。
でもその中に、いくらかポルトガルについての記述もあります。以下、メモ。

p.329「
ポルトガルには、もはやかつての栄華はない。褐色の大地に横たわって、かつて働きすぎた時代をときにおもいだしつつ、老優がしずかに休養しているような国である。

p.401「
「多分、大丈夫だとおもうけど」
と、コンチータ嬢が、横で貝料理の皿にフォークをつっこんでいた黒ひげの運転手アンヘル氏に賛否をもとめた。アンヘル氏は顔をあげ、むかいの席の長谷氏にむかって、
――よろこんで。
というふうに、濃い微笑を伴ったうなずきを送ってみせた。アンヘル氏のように、沁みとおるようなうなずき方を、われわれは映画のなかでもしばしば見る。しぐさと表情が文化の基本的な種類に属するとすれば、われわれのしぐさ・表情の文化より上質であることはたしかである。