鴻上尚史『表現力のレッスン』
- 作者: 鴻上尚史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/10/21
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 78回
- この商品を含むブログ (16件) を見る
表現力を実際に磨くためのさまざまなレッスン方法が書かれています。劇団仕込み+大学での実践も踏まえてあって、非常におもしろい。表現力レッスンのネタとしてはいいかも。何年か前に、ホリプロの養成コースで受けさせてもらった研修の中にあったプログラムに近いものもありました。またこういうのもやりたいなぁ。
以下、いくつかメモ。ネタに困ったときには、再度見返すべし(図書館の本だけど)。
p.122-124
感情の再体験レッスン
- 今から7年前までにあなたが体験した「とても楽しかったこと」か「とても恥ずかしかったこと」を思い出してください
- その時の感情ではなく、状況を具体的に思い出す
- 見た風景、光、音、あなたの服装、相手の服装、地面の感触、具体的に思い出す
- 10分から20分くらい、ゆっくり時間をかける
- スタニスラフスキー(ロシアの演出家・俳優)の作ったレッスン
- 「7年前」にしているのは、簡単には思い出せなくなるだろう、といわれる時間。→7年前より前の感情を具体的に再体験できれば、いつの感情も引き出せるようになる
p.151
写真レッスン
- 人物が写っている1枚の写真を選ぶ
- 写真を、記念写真ではなく、写った人の一瞬の人生を切り取ったものだと考える
- 写真の人物の人生を作る。この人の事情を考える(名前、年齢、場所)
p.217-218
「
「表現力のレッスン」は、楽しくやることが大前提なのです。
楽しくなければ、やる意味はありません。
…という話を、この前、ワークショップのやり方を質問しに来られた教育関係者の人にしたら、
「でもね、鴻上さん、楽しいだけでいいんですか?ああ楽しかったで終わってそれでいいんですか?」
と質問されてしまいました。
僕はおもわず、
「『ああ楽しかった』じゃ、何かマズイんですか?」
と、少々ムッとしながら聞き返していました。
ムッとしたのは、「楽しければいいのか、教育目標はないのか?」という考え方が、日本人をどんどん表現下手にしたからです。
小学校や中学校の作文教育も音楽教育も図画工作教育も、すべて、「楽しければいいのか、教育目標はないのか?」という考え方から、作文嫌い、音楽嫌い、図画工作嫌いを作ってきたのです。
本来、音楽を嫌いになる、なんてことがあるはずがないのです。それが、音楽教育だから、評価しなければいけないだの、点数をつけなければいけないだの、クラスごとのコンクールのためには音痴はあまり活躍させない方がいいだの、いろんな“教育的措置”の結果、どんどん、音楽の時間が嫌いになる生徒が出現したのです。
表現とは、まず、本人が楽しむことが大前提です。楽しければ、放っておいても、本人はそのことを続けるのです。音楽が楽しければ、作文を書くのが楽しければ、放っておいても、音楽や作文を続けるのです。
」