ジャン・ジグレール『世界の半分が飢えるのはなぜ?』
世界の半分が飢えるのはなぜ?―ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実
- 作者: ジャンジグレール,Jean Ziegler,勝俣誠,たかおまゆみ
- 出版社/メーカー: 合同出版
- 発売日: 2003/08
- メディア: 単行本
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ジグレール教授が息子カリムに、世界の飢えの状況を説明してくれている本。読みやすいんですけど、書かれている問題はとっても本質的。あまりにも救いようのない事態を提示されて、自分はどうすればいいんだろう?と思う。こんな豊かな日本に生まれて、ある程度豊かに不自由なく暮らしている僕は、いったい何ができるのか、何だか悲しい気分になりました。
最後にジグレール教授が書いている言葉は、ああ本当だなあ、と思わされます。
痛みに満ちた世界に幸福の飛び地はない
全体を変えていかなきゃ、やっぱりダメだと思うんです。「学校では飢えについて何も教えていない」とジグレール教授は言います。大きな宿題を突きつけられたなー、って感じ。
p.35
経済的飢餓:
突発的で急激な一過性の経済的危機によって発生する飢餓。台風や旱魃、戦争などのために発生する。
構造的飢餓:
長期にわたって食糧供給が滞っている場合。全体的な経済発展の遅れによる低い生産能力やインフラの未整備、極度の貧困が原因で発生する。
p.46
「
栄養不良の度合が深刻になっている子どもは、綿密な計画による治療が必要で、たとえば、飢えた子どもたち(大人であっても)にパン一個をなんの配慮もなしに与えると、命取りになることもある。支援センターにたどりつくまでのあいだ、ながいこと栄養不良にさらされていた体は衰弱しきっていて、消化機能が驚くほど衰えているからだ。
」
→経験を積んだ医師や看護師たちが作った計画的な治療プログラムが必要
「
治療プログラムをつくるためにはきちんとした診断が必要で、しかも治療には三週間から四週間はかかる。もちろんプログラムは、患者に合わせて個別に用意しなければいけない。患者が子どもの場合、砂糖、油脂、ビタミン、ミネラルなどが添加された粉ミルクを水に溶かしたものも段階的に与えられる。そうかといって、砂糖は衰弱した体に負担をかけ、水はバクテリアを繁殖させてしまうことがあるので、一般の人がおこなう場合には最新の注意が必要とされる。
」
p.63
国際的な穀物の商取引は、すべて「穀物メジャー」といわれる商社に握られている
アンドレS・A(スイス)
コンチネンタル・グレイン(アメリカ)
カーギル・インターナショナル(アメリカ)
ルイ・ドレフェス(フランス)
※穀物ビッグフォー(オランダのブンゲを加えるとビッグファイブ)
p.72
「
飢えという教科がある学校はまだ見たことがない。地球上の各地で繰り広げられている戦争の直接の犠牲者よりはるかに多くの人々が、毎日飢えのために死んでいくというのに。
世界の飢えはどんな状況か、何がたりないのか、どのくらいの人がどういう状態で死んでいくのか、飢えの原因はなんなのか、飢えを根絶するためにはどんな方法が考えられるのか−−−。そういうことを学びあうために飢えという教科があってしかるべきだ。
たとえば国連食料農業機関(FAO)の1998年の年次報告書には、「ある場所で、飢えている人びとへの援助にようやく成功したと思うと、別の場所で早くも希望が打ち砕かれる」と書かれている。この報告書を書いたのは専門家だけど、かれらは学校でなにを勉強してきたのだろうか。
いくら格調高い文体で報告書をつくっても、飢えに苦しむ人びとにはなんの役にも立たない。もっと具体的な方針を示さなければだめだ。
専門家と言われるかれらを見ていると、学校というのはしょせん富んだ国に住む子どもたちのぜいたくにしか過ぎないのだろうかと失望するときがある。
飢えがいったん暴れだすと、つぎからつぎへと症状があらわれる。その容赦ない惨状を解決するために必要なのは、詳細で正確な分析だ。そういうことをあにもしないで放置しているなんて、学校は大切な機能を果たしていないんじゃないだろうか。
飢えについての教育を受けてこなかったこのような青年たちは、「だいじょうぶ、なんとかなるさ」と楽観的な考え方を持っていたり、逆に現実離れした理想主義であることが多い。彼らには、飢えについての基礎知識と、それがひきおこす状況、そして将来にひきつづく混乱を見抜く力が決定的に欠けているんだ。
」
p.95
サルバトール・アジェンデ(チリの元大統領)
粉ミルクの無償配給を公約として大統領に当選。ネスレ(スイス)が協力を拒否、アメリカ政府は援助を打ち切り、アジェンデの政策実現は困難に。最終的にはアメリカが共謀した軍部極右勢力によるクーデターにより死亡。
p.125
「
国連のお偉方たちは、スラムに住むような住民のことを「非公式部門(インフォーマル・セクター)と呼んでいるが、実に害のない名前だと思わない会。ラテンアメリカの総人口のうち45パーセントがこの「非公式部門」だと報告されている。
(略)
(非公式部門の住民は)定職がない、生産手段がない、定住居がない、社会保障資格がない人びとを指すことばだ。
」
p.163
飢えを解決するために
1)人道的援助の効率化
2)援助よりも改革アクションを優先に
「スープを与える援助」から、「自分で考え立ち上がるためのアクション」へという考え方の転換
3)インフラの整備を
p.170
「
痛みに満ちた世界に幸福の飛び地はない
」