ダン・キャリソン&ロッド・ウォルシュ『アメリカ海兵隊式 最強の組織』

アメリカ海兵隊式 最強の組織

アメリカ海兵隊式 最強の組織


海兵隊といえばついつい、アメリカ映画で出てくる「Sir, Yes, Sir!」と叫びまくる新規兵と鬼教官の絵が浮かぶのですが、実はすっごい強力な組織なのです。そりゃそうだ、人を死地に送る組織ですから。で、その海兵隊の組織力を、ビジネス界でもりようできないだろうか、という本です。すごく楽しかった。
以下、メモ。

p.30
海兵隊の募兵活動の成功理由=1)プール制度:
・事前にブーツキャンプのありのままの姿をビデオで見る
・過酷な訓練、訓練共感の恐ろしさを見て、これから何が起こるかを理解する

プール制度を受けた志願兵の方が、ブーツ・キャンプで訓練を受ける準備が整っている。退院減少率を見ても、プール制度を受けた志願兵の方が低い。


p.32
海兵隊の募兵活動の成功理由=2)二人組制度(buddy system):
一人ではとてもブーツ・キャンプで訓練を受ける気にならない二人の友人同士の場合に、基本訓練期間を通して2人が一緒に同じ小隊・同じ特技区分の訓練を受けられることを保証し、厳守している。


基本訓練の目的はすべて、見知らぬ他人同士の間に仲間意識をはぐくむことにある。海兵隊に入隊した時、すでに「仲間」になっているのだ。


p.51

リーダーシップ強化のための戦略
・成績優秀な社員を一定期間、採用担当者として勤務させる。
・社内から人材を抜擢し、誠意あふれる人事部を創設する。
・採用の基準を引き下げ、訓練によってリーダーを育成する。
・最も魅力的な仕事に挑戦するチャンスを全社員に与える。
・リーダーに成長する可能性がある人材をあらゆる部署に配置する。
・友人同士の2人を一緒に採用する「二人組制度」を導入する。
(以下、略)

p.58

海兵隊の方針はまったく逆で、「できる者が、人に教えよ(If you can do, teach.)」なのだ。


p.60

ほとんどの志願兵にとってブーツ・キャンプでの最初の数週間は、まさに人生最大の衝撃的な体験なのである。(略)
実際は隠れたところで、訓練教官は志願兵一人ひとりに心配りをしているのだ。しかし、さまざまな素質の若者たちを12週間で同じレベルまで鍛え上げるという、不可能とも言える事業に取り組む海兵隊としては、すべてを一つの共通項に押し込むしか方法がない。(略)
海兵隊が最もカルト集団の様相を呈するのは、ブーツ・キャンプの初期の段階である。志願兵はみな同じ格好で、同じことを言い、即座に服従する。質問されると聖書の一節のように暗記した一般規範の言葉を叫ぶ。しかし、海兵隊はカルト集団とはまったく違う。個人の尊厳は取り上げられるが、それは一時的でしかない。海兵隊はちゃんと返してくれる。
全員に海兵隊の流儀を学ぶ心構えができると、訓練教官たちは少し手綱を緩め始める。志願兵に自主的な問題解決と独創力の発揮を促す。ちょっとした励ましの言葉をかけることさえある。励まされた志願兵はその言葉を一日中かみしめるだろう。週を追うごとに訓練教官はますます良き指導者となる。


p.75

大企業の中で、社長の艱難辛苦をわずかでも知っている従業員はどれほどいるだろうか。海兵隊では、二等兵ですら「先輩」にまつわる逸話を聞かされ、それゆえにいっそう尊敬の念が増すのだ。


p.85
海兵隊士官候補生の最後の訓練は、特に過酷な2日半

志願兵たちが直面する試練はすべて巧妙に計算され、チームが一体とならなければ克服できないようになっている。制約時間内に目的を達成できない者が1人でもいたら、チーム全員が失敗したことになる。チームの団結が問われるのだ。教官は訓練の各段階で常にチームに付き添っているが、この訓練ではとりわけ「無干渉」で、志願兵たちだけで考えるように仕向ける。どの難問も決まった解決方法は存在しないため、志願兵たちが一団となって問題解決に取り組む際の独創力に教官はうれしい驚きを感じる。


p.88
リーダーシップ強化のための戦略

・「修羅場」の概念を取り入れ、研修生から社員へ変身する極限状態を体験させる。
・すべての社員を同じ出発点から訓練する。
・社員に特別な存在であることを常に自覚させる。
・徐々に難易度を高めらながら指導力を養成する。
・能力のない社員を切り捨てずに育成する。
・現在より上の役職を与える役割演習セミナーを実施して、責任能力を高める。
・現実的なシミュレーション訓練で「本物」の体験をさせる。
・社員教育に同僚の圧力を利用する。
・会社の過去の成功を象徴的に再現する。

など


p.121

ブーツ・キャンプはまさに競争の世界だ。トイレに行く以外はすべて競争といっても過言ではない。

すべてはグループで競い合い、掃除や木への水遣りなどですら真剣な競争になる。戦闘的な競争の勝者に与えられるのは名誉ある優勝旗である。

p.122

海兵隊のブーツ・キャンプではぐくまれる競争意識が、まったく異質なのはなぜだろうか。競争はすべて同志の間で行われる。志願兵はみな同じ目標--一人前の海兵隊員として卒業する--に向かって必死に努力し、やり遂げた者全員が勝者となる。毎年、栄冠を手にするのは1人ではなく四万人なのだ。すべての卒業生が同じ経験(ただし「類まれな」経験)を共有する。卒業の日、志願兵たちは互いに祝福し合う。ところが卒業以前は、優秀な小隊の中でさえ、お互いに「けなし」あっていたのだ。


p.135

企業の管理職は、陣頭に立つ海兵隊の将校のように自分に誇りを持たなければならない。将校と同じように、担当部署の仕事が失敗した場合には、矢面に立って経営者に報告する義務を負うのは管理職なのだ。仕事を家に持ち帰り、「最後に寝て、最初に起きる」のも将校と管理職だ。部下がたじろぐような責任を引き受ける勇気もある。そして、海兵隊の将校と同じように管理職は大志を抱いている。この素質を甘く見てはならない。大志を抱くには、勇気、自己犠牲、忍耐といった美徳が問われる。


p.137

「成功は部下のおかげで、失敗は私の責任だ」


p.196

海兵隊と同じようにカードの表側に会社の目標を記し、裏側には社員に期待する項目を記せばよい。社員全員がカードに署名し、自分が従う規範を承認するのだ。