ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン『小さなチーム、大きな仕事』

小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)

小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)


本当に小さなチーム(というか会社)で仕事をしている身からすると、とっても勇気づけられる本。特に、人を雇う、というところの2つのポイント。「まずは自分でやってみる」「限界で人を雇う」というところは、昨期のプロジェクトで痛感…。結局変に増やしたところでクオリティは上がらないし、もうちょっと上手なやり方があったなあと反省しきりだったもので…。
小さなチームだからと言って諦める必要は全然ない。できるよ!というメッセージがひしひしと伝わる。そして、この本を読んで37シグナルズのファンが増えていくのだろうね。
以下、メモ。

p.12

新しい現実とは、今や誰でもビジネスができるということだ。かつて手の届かなかったツールは容易に手に入る。何千ドルもした技術はほんの数ドルか無料にすらなっている。ひとりで二つ三つの仕事、ときには部署全体の仕事ができる。数年前まで不可能だったことが今日では簡単だ。
週に六十、八十、一○○時間もみじめに働く必要はない。週に一○時間から四○時間も働けば十分だ。貯金を使い切る必要も、めいっぱいの危険をおかす必要もない。いつもの仕事をしながらビジネスを始めることで、必要なキャッシュフローを得ることができる。オフィスすら必要ない。自宅でも働けるし、何千マイルも離れたところに住む、一度も会ったことのない人たちとコラボレートすることもできる。
さあ、いまこそ仕事の本質を見つめなおすときだ。


p.38-41
外部の資金は最終手段:
どんなビジネスに乗り出すにせよ、外部の資金はできるだけ少なくする。そこには罠があるから:
コントロールを失う
 →資金を外部に頼れば、彼らに応える義務がある。
売却は良質のビジネスの構築を妨げる
 →投資家は資金の改修を期待する。売却を期待されれば、長期の持続性は考えられなくなる。
他人の金を使うのは癖になる
 →簡単だが、しかしやがて金は使い果たされる。
基本的に不利な取引になる
 →スタートしたばかりならば、立場は弱い。
顧客が後回しになる
 →顧客がほしいものではなく、投資家の思い通りになってしまう。
資金調達に注意をそらされる
 →投資家を探すことに時間がかかる。すごいものを作ることに集中スべきスタートのときに、大変なノイズになる。

割に合わない、のだ。


p.49
制約を受け入れる:

「私には十分な時間も、お金も、人脈も、経験もない」と嘆くのはやめよう。少なければ少ないほどよい。制約は見方を変えれば武器である。資源が制約されると、それでなんとかしなければならなくなる。そこには無駄の余地はなく、創造性が求められるのだ。


p.118-119
プロモーション - 無名であることを受け入れる:
無名である時こそ、世間にあれこれ言われずミスができる。欠点を見つけ、思い立ったアイディアを試してみる。誰もあなたのことを知らないのだから、失敗しても大きな問題ではない。


はじめて何かをするときに世界中に見守ってほしいだろうか?今までスピーチをしたことがないとしたら、一万人の前で話をするのと一○人の前で話をするのと、どちらがいいだろうか?ビジネスを始めるときも皆に見てもらいたいとは思わないはずだ。もし皆にまだ見てもらえるような準備が出来上がってないのなら、皆に見てもらうのは得策ではない。
そして、心に留めてほしいのは、一度規模が大きくなって人気が出てきたのなら、必然的にリスクは小さくしなければならないということだ。成功すれば、先を見据えて一貫した行動を続けなければならなくなる。


p.126-127
プロモーション - 舞台裏を公開する

人は、ビジネスがどういうふうに動いているかについて興味津々だ。だから、工場見学や、映画の舞台裏のドキュメンタリーが好きなのだ。セットの組みかた、アニメーションの作りかた、監督のキャスティングのしかたまで、いろいろ見たいと思っている。彼らは、他の人がどのように、そしてなぜそうしたのか知りたいのだ。
人々を舞台裏に導くと新しい関係が生まれる。彼らはつながりを感じ、顔の見えない企業ではなく、あなたを人間として見てくれるようになる。彼らは、製品やサービスに捧げられた汗と努力を見るだろう。そして、彼らはさらに深い理解や評価をしてくれるだろう。


p.137
人を雇う - まずは自分自身から

まず自分自身でやってみるまで、誰かを雇ってはいけない。まず自分で、仕事の本質を理解しよう。うまくいく仕事はどういうものか。どんな事業計画書を書くか、また面接でどんな質問をすべきかもわかるだろう。人をフルタイムで雇うか、パートタイムで雇うか、外注としてお願いするか、それともやはり自分でやってしまうのか(できればこれが望ましいが)がわかるだろう。


p.139
人を雇う - 限界で人を雇う

喜びを得るために雇うのではない。苦しみを消すために雇うのだ。もし誰かを雇わなければどうなるか、と自問してみることだ。負担になっている時間外の仕事は本当に必要なのだろうか。ソフトウェアを一つ導入することで、またはやり方を変えることでその問題を解決できないだろうか。単にしなくていいことなのではないか。
同様に、誰かが抜けることになってもすぐに代役を立てないことだ。その人、そのポストがいなくて、どれくらいやっていけるのか試してみるのだ。あなたが思っているほどの人は必要ないと気づく場合もある。
人を雇うのによいタイミングは、定められた期間内であなたの限界を超えた仕事があるときだ。もはや自身では手がつけられないものもある。品質の低下が目立ち始める。それが限界の時だ。その時こそ人を雇うのであって、その前の段階ではない。


p.160

チーム全員が顧客とかかわりをもたなければならない。もちろんいつもではなく、年に二、三回でもいい。これこそ、チームが顧客の気持ちを理解する唯一の方法だ。顧客の不満を共有すれば問題を解決する気になるし、顧客のうれしさが伝わってくれば、大きな刺激になる。
(略)
顧客と接する暇などない、と思っているなら、その暇を作らなければいけないのだ。クレイグリストのクレイグ・ニューマークは、いまだにサポートのメールに(数分以内に)対応している。


p.175
ひらめきには賞味期限がある

もし金曜日にひらめいたら、土日を返上してプロジェクトに専念するのだ。インスパイアされている間は24時間で2週間分の仕事ができるものだ。そういう意味ではひらめきはタイムマシンだ。
ひらめきとは不思議なものだ。生産性を高め、やる気をあおる。だが、待っていてはくれない。ひらめきとは「今」のものだ。もし、虜にされたなら、逆に仕事に専念することだ。