田中敏隆『子供の認知はどう発達するのか』
- 作者: 田中敏隆
- 出版社/メーカー: 金子書房
- 発売日: 2002/09
- メディア: 単行本
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いま、2歳児向けの教材を作っているので、認知段階あたりを企画に取り入れたくて読んだのです。まずまず、おもしろい。
図形について、年齢ごとにどれくらいしっかり把握できるようになるのか、読み書きの学習を始めるレディネスの時期が6〜7歳くらいであること、鏡文字を書いてしまう原因の諸説などなど、紹介されています。
以下、メモ。
p.1-8
図形のとらえ方:
1.形
→形の弁別は、4歳児で72.0%、5歳児で94.0%、6歳児で95.0%と幼児期に急速な発達を示し、5〜6歳の年長組の年齢でほぼ完全に。
2.大小
→4歳児で95.3%、5歳児で99.5%、6歳児で100%の正確度を示す(二次元空間)
→立体で幼児の好物の食べ物であると、わずかな大小の差でも3歳児でも100%の正確度を示すようだ。
3.方向
→6歳児でも77.5%というように誤りもかなり認められる
→鏡映像、逆位の誤りが多く、角度の誤りは少ない
p.50
「
6〜7歳の小学1年生は、まさに基礎学力の一つである読み書きの正式な学習を開始するレディネスの年齢にある
」
p.56
書きの発達のすじみち:
殴り書きだが、読める文字形態は3歳3ヶ月頃に出現してくるようだ
4歳にかけて、一つひとつの文字の形態が著しく進歩し、4歳後半から文章表現ができるようになる
5歳代で文章の内容も進歩する
p.60
幼児はなぜ鏡文字を書くのか
- 誤りの4割が何らかの鏡文字
- 鏡文字は日本の子どもたちだけの問題ではなく、英語などでも同様。
- 誤りの3割が左右まったく反対な鏡文字。部分的に左右が逆になっているものまで含めると、誤り全体の4割が何らかの鏡文字になっている。
- 正しい手本を見せながら写させても、鏡文字を書く子どももいる。
p.65-69
鏡文字になる原因仮説:
- 大脳半球の働きがまだ左右対称になっていず、一方の像を正確にとらえられない認知的な問題
- 未発達な眼球の動かし方によるとする説。幼児の文字や図形を見る際の眼球運動が上から下への走査に限られているため。
- 幼児が、垂直市井の感覚でしか認知をしづらく、空間を上下という縦軸だけでとらえようとする特性が強い。
- 幼児から7〜8歳の頃までは、対象物を直感的、知覚的に認知する特性を持ち、見たまま思考抜きで捉えているから。
↓
鏡文字を書く子は、8歳くらいまでに急激に減っていく。
p.81
分類認知テストをすると、子どもが日常経験し、生活と密接な関係にある対象ほど、その概念形成は早期に発達する。
人間が最も早おく現れ、5〜6歳時で50%が分類可能。ついで、乗り物が40%、動物が30%、家具が最も難しく20%ほど。
生物と無生物の分類認知は、6〜7歳でもやっと10%が成功しているくらい。
↓
p.84
図形の概念形成にほぼ同様。