竹中平蔵『闘う経済学 未来をつくる[公共政策論]入門』
- 作者: 竹中平蔵
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2008/05/26
- メディア: 単行本
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経済学者が実際に政局を運営する、という役割を担ったときに、学問の世界とは当然違うこともたくさんあるわけですが、そのあたりの経験がたくさん語られている本。小泉首相がどれだけリーダーシップを取り、現場での竹中先生の奮闘を助けていたか、ということが伺える。ヒョーロンカではなく、実務で地べたを這いつくばって頭を下げ声を張り上げて結果を出した学者は、信頼ができると思うのです。これから、若い世代に竹中先生は政治を実際にやることと、学問としての経済学を学ぶこととのギャップを伝えられるわけですから。
p.88
ダボス会議でのスピーチ(2002年)
「
日本が取り組まなければならない改革には、大きく分けて二通りあります。一つは受け身(リアクティブ)の改革、もう一つは攻め(プロアクティブ)の改革です。受け身の改革とは、否応なく引き継いでしまった、いわば“負の遺産”をなくすためのもの。銀行の不良債権処理がその典型です。これに対し攻めの改革とは、新しい時代に適応するために行う前向きの改革で、小泉総理の主張する郵政民営化はその象徴です。
」
p.120-p.123
不良債権処理の経験のなかからの3つのインプリケーション
1.政策を変更する際に求められる困難な点、具体的に「無謬性」との決別:
現状を変えるということは現状否定を行なうこと=自己否定であり、大きな困難を伴う。そのために、完了組織への否定を、大臣直属のチーム(竹中チーム)で行なった。
2.チームへ専門家以外を招き入れる:
あるべき政策を原理原則に基づいて厳格に議論するだけでなく、複雑な政治環境や行政実務のなかで、いかにして実現していくかの政策決定プロセスを踏まえられるのは、専門家ではなく、志を持って真摯な勉強を続けている実務家だった。
3.政策実現手法として、一種のショック療法が役立った:
非日常的な政策を行なうにあたって、非日常的なショック療法が効果を発揮する。
p.278-282
改革を実現するための5つの戦術
1.逆転の発想を持つ
2.重要なことについてはトップ直轄方式をとる
3.会議を「決める場」にする
4.いつでも辞める覚悟を持つ
5.批判のパターンを知ること
p.282
批判のパターンは3種類:
1.コントラリアン的批判:常に逆のことを言う
2.永遠の真理を言う批判:誰も否定できないが、具体的には何を言っているかわからない。
3.「ラベル」を貼って決め付ける批判:一方的に決め付けるが証明はできない。ただ、ラベルを貼ればそれが一人歩きする。
p.289
「
ある電気機械メーカーの工場に行ったときに見つけた素晴らしい兵庫がある。
「夢見ながら耕す人になれ」
「夢を見る」というのは理想を追いかけることであり、より良い社会や会社にしようという夢を持つことである。「耕す」というのは目の前のことをきちんと行なうことであり、時と場合によってはしたたかな行動も辞さないということである。
」
p.290-293
小泉元総理の仕事ぶりから見るリーダーであるための4つの条件:
1.王道を行く
細かい部分をいじり始めると、政策がだんだんわかりにくくなる。王道を行くと同時にシンプルであることが重要。
2.瞬時の判断力
瞬時の判断を養うためには、日々のイメージトレーニングが必要となり、日々の問題意識の継続が重要になる。
3.直接対話の力
ステークホルダーに対して直接に語りかける、直接説得する力を持っていることが重要。説得力の背景にあるのはパッションであり、自分がどのくらい強い思いを持っているかということと、日ごろ考えていることの積み重ね。
4.愛嬌の力
組織を引っ張っていくリーダーになるためには、その人に魅力がなければならない。
p.293-p.294
「
私がハーバード大学で教えていた当時、文理学部長だったヘンリー・ロソフスキー教授から聞いた話を紹介することで、リーダー論のまとめとし、かつ若い読者へ贈る言葉としたい。
「ジョン・F・ケネディは、高校の成績でいうと真ん中ぐらいの人だった。だから、偏差値的な意味での学業が特別優秀だったわけではなかった。しかしハーバード大学は、ジョン・F・ケネディの入学を許可した。なぜか。それは、ジョン・F・ケネディが高校で常にクラスの中心にいたからだ。食事をするときも中心にいた。ディベートのときも中心にいた。けんかのときも中心にいた。ハーバード大学は、アメリカの、世界のリーダーを育てるための大学だ。だからジョン・F・ケネディを入学させた」
」