関口一郎『「学ぶ」から「使う」外国語へ』

「学ぶ」から「使う」外国語へ ―慶應義塾藤沢キャンパスの実践 (集英社新書)

「学ぶ」から「使う」外国語へ ―慶應義塾藤沢キャンパスの実践 (集英社新書)


仕事の方で英語のレッスン改訂をしようと思っているので、そのサンプルとして自分が育った大学の外国語教育手法をやってみようかな、と。
以下、メモ。

p.137
SFCの外国語インテンシブコース(ドイツ語)の1週間の例

火曜日:
1週間の始まり、前の週の学習成果をチェックする小テスト
今週のキーセンテンスのビデオによる聞き取り、発声練習
今週のポイントと文法

水曜日:
ビデオ教材を中心とした授業
ビデオスキットを理解し、ペアワークを行う
学生自身でペア/グループでビデオを参考に同じ流れのドラマを作り、演じる

金曜日:
日本人の先生による基礎練習
文法練習で復習し、あるテーマについて自由に意見を発信する練習が行われる
ドイツ語を用いたクイズやゲームなどで遊びながらの練習

月曜日
ネイティブスピーカーによる応用練習
習ったばかりの表現を実際に「使う」授業
実際の普通のドイツ人とのコミュニケーションをシミュレーションする環境で


p.142-143

外国語学習の原点は、再三指摘しているように「技能・道具」であり、その点で自動車の運転の練習と類似している。さらに外国語学習と車の運転が共通しているのは、何よりもまず「どこかに行きたい」という動機が共通していることだろう。「どこへ?」という質問は若者には無用である。免許を取得したばかりの若者に、「どこへ行きたくて免許を取りましたか」という質問は意味がない。ただはっきりしているのは、自分で車を運転して、どこかに行きたいということだけであり、動機としてそれ以上のものは必要ない。


p.144

レベルの差こそあれ、どこの大学、どこの外国語学校でも、初級文法が終わったら仮免許取得と考えてよい。仮免の定義は、車を運転するのに必要な基本的な操作方法とルールはすべて教えたということである。ただし、これは「教えた」というだけの話で、「完全に覚えた、身につけた」というのとは別である。(略)


p.156

本格的なコンピューターのほうで言葉を覚えるためには、「私はコーヒーが好きです」というような短い文でも、実際に本人がそう思って口に出すこと、また、相手が言ったことを理解して、それを刺激として何らかの反応をしたり、何かを思ったりということが必要である。


p.162

ポストイットを単語帳がわりにして、室内のいろいろなものに貼り付けてゆくのである。近づかないと見えないように、小さいほうがよい。テレビ、ラジカセ、コップ、窓、椅子、冷蔵庫、洗濯機などと書いたポストイットをいくつも作り、それぞれの現物に貼っておくのである。


定着したらポストイットをはがす


p.185

ラジカセを話し相手に見たてて、事件の顛末から、その政治的背景、世論や自分の見解などを一気にまくしたてる。手がかりは自作の表現ノートだけである。こういう練習では、書いた作文を読み上げてはいけない。実践現場では表現ノートさえ手にしていないのだから。
この練習の最大のポイントは、何とかやりとげても、途中で挫折しても、録音したカセットテープを必ず聞く、ということにある。


空白の時間がやたら目立つ、間つなぎの外国語表現を覚えることで、会話が流暢に。