ラッセル・ロバーツ『インビジブルハート 恋に落ちた経済学者』

インビジブルハート―恋におちた経済学者

インビジブルハート―恋におちた経済学者


帯からしてすごい興味を惹かれる。曰く


規制は不要・有害、ビジネスでの成功は美徳だと信ずるサム。ワーズワースを愛し、資本主義は横暴だと考えるローラ。二人は違いを乗り越え、結ばれるか?

これは読まなきゃでしょ、ということで。
いくつか、子どもたちに伝えたいパートがあったのでメモ。

p.157

「一人の男が死んだ」とサムはいった。「気がつくと彼は、世界で最も美しい、マス釣りにはおあつらえ向きの川べりに座っていた。空は抜けるように青く、完璧なバランスのフライロッドが彼の手に握られていた。目の前には、急流と静かな淀みの混ざった、マス釣りに向いた渓流がある。人生を通じて彼は『もっと釣りをする時間があればいいのに』と願い続けてきた。彼は自分が天国にいるのだと悟った。(略)彼のキャスティングはまたも完璧だった。彼は再び魚を釣り上げた。やはり美しい魚だった。奇跡のようだった。彼はひざまずいて神に感謝を捧げた。だが、一日が過ぎていき、彼が釣ろうとするのに応じて次々に魚が水面を破って現れるうちに、彼の意識の端に、ちらちらとある考えが浮かぶようになった。彼はわざと、下手なキャスティングをやってみることにした。それでも魚は飛びつき、釣り上げられた。彼は魚を驚かせようと叫んだり水を跳ね散らかしたりしてみた。それでも問題なかった。針を投げ入れるたびに魚はかかった。そして彼は、そこが天国でもなんでもないことを悟ったんだ」

p.175

人に魚を与えれば一晩で食べてしまうが、魚のとり方を教えれば一生飢えることはない

p.247

経済学というものは、世界に対する一つの見方だ


経済学はいつも、無料のランチなど世の中には存在しないということを思い出させてくれる。一つの道を選ぶということは、常に、踏み込まなかった道が残ることを意味する。それは後悔につながるかもしれない。でも、選べるというのはいいことだ。僕は、無料のランチなど存在しない世界に生きていることを喜んでいる。結果もコストもない世界は、有意義な選択のない世界だ。責任の伴わない人生は、大人の生活ではない。それは動物や子ども、ロボットの生活だ