ダレル・ハモンド『カブーム!100万人が熱狂したコミュニティ再生プロジェクト』

カブーム!――100万人が熱狂したコミュニティ再生プロジェクト

カブーム!――100万人が熱狂したコミュニティ再生プロジェクト


以前からずっと気になっていた、カブーム!の本を読了。コミュニティに遊び場、講演を作っていくという活動をしています。「遊び」「プレイフル」というところのキーワードを探っていけば、必ず出てくる存在ですね。
以下、メモ。

p.164-165
このところ、多くの科学者たちが遊びが子どもの発達にどう役立つのかを調べている。

遊びといってもその意味がさまざまにある。
「あきらかに意味のない行為」
「基本的な必要性が満たされたあとに残ったエネルギーの産物」
目的がないときにする行為

特徴を書き連ねることが、いちばんの定義になるだろう:
・きまった枠組みのないもの
・子どもが自由に選ぶ行為
・自ら主導し、自分がその気になって行うこと
・活動的に没頭でき、切り拓いていくもの

科学者たちは、しだいに研究を進めてきた
例)
精神病理学者 スチュアート・ブラウンは、カリフォルニア州カーメルバレーに「全米遊び研究所(National Institute For Play)」という組織を設立し、さまざまな学術研究の点と点を結んで体系的な証拠を集め、遊びの大切さを解き明かそうと試みています。
そのほかにも、「子ども同盟」と「遊び研究協会」という2つの組織が同じ目的を追いかけている。

p.166-167「
ひとつの仮説は、子供たちは遊びを通して世界について学び、その中に自分の役割を見つける準備をする、というものです。19世紀のドイツ人教育者、フレデリック・フローベルは、現在もこの分野でもっとも影響力のある思想家ですが、彼はこう表現しています。「遊びは子供の仕事だ」と。そうやって、子供たちは大人になる準備をするのです。」
人類がこの地球上に存在してきた年月の大半は、学校も、標準テストも、組織的な教育も、教室も、大学受験の予備校もありませんでした。印刷された書籍でさえ、比較的最近になって発明されたもので、およそ600年しか存在しておらず、20万年という人類の歴史には及ぶべくもありません。その歴史のほとんどの間、子供たちは遊びを通して社会の働きを学んできました。
男の子が棒切れを拾ってやりに見立てるのは、ハンターへの第一歩でした。今の子供たちは、積み木を耳に当てて携帯電話のふりをしますが、それも同じです。子供たちは、世界の中でどう生きるかを学ぶために、大人のやることを真似ているのです。
あらゆる遊びについて同じことが言えます――子供の遊びは、失敗してもそれほど害のない、人生の予行演習なのです。若い動物の遊びが、成長後の行動と関係しているように、子供にとって、遊びは現実を試してみること、つまりセーフティーネットに守られながら世界を探求する方法です。それが、広い意味で、男の子と女の子の遊び方が違う理由ともいえるでしょう。もちろん例外はたくさんありますが、一般的に男の子は転げまわったり取っ組みあったり、ボールやほかの道具で遊んだりします――祖先が狩猟に使った技術を練習しているのです。反対に、女の子は言語や儀式を通して人と関わる、より社会的な遊びをします。」

p.169-170「
遊び方を通して、子供たちは危険を経験し、身体動作の及ぼす影響を知ります。遊びの中で身体的な限界を試しながら(ブランコをもっと高く!メリーゴーランドをもっと速く!)、危険を知り、行動が招く結果を自覚するのです。大人になれば、さまざまな種類のリスクが存在します――健康、お金、感情。私たちは、当然ながら、子供たちをこうしたリスクから守ろうとしますが、必要以上に危険を和らげたり、取り除いたりしている場合もあるようです。ですが、危険な状況にうまくたいしょすることによって、子供たちは学びます。経験から、どういうときに怪我をするのか覚えるのです。「雲梯の次の棒に手が届けば安全だけど、届かなければ落ちてしまう。」
実際、落ちることが発達過程の一部だとも言えます。傷ついてはじめて、回復力が生まれ、気持ちを立て直してまた挑戦することを学ぶのです(二度とやらないというのではなく)。過度に用心深い親なら、子供が膝をすりむかないように、またちょっとした怪我や不自由がないように、目を配るかもしれません。ですが、その子供は大人になったとき壁にぶつかるはずです。大人になれば、もっと大きなものに立ち向かわなければならず、粘り強さがなにより大切になるからです。」

p.172「
実のところ、遊びの学習効果の一番に挙げられるのは、社交性です。こんなフレーズのついたTシャツを見たことがありませんか?「お友達と仲良く遊びましょう」。皮肉はさておき、これは大人になると、とても重要なことです。人間は、社会的な生き物です。子供たちがこれをはじめて自覚するのが、遊び場です。ここで、協力することや競争することを学び、共有し、順番に従い、間違った振る舞いをしたらどうなるのかを学びます。身を持って衝突を経験し、紛争を解決するのです。順番を守り、公平に遊ぶことを練習し、そうしないときの結果に直面するのです。
こうしたことの大半は、もしかすると、両親や先生やほかの大人が教えてくれることなのかもしれません。ですが、子供が自分でそれを見つけた方が、教訓が長く残りますし、遊び場の掟は、こうした人付き合いの教訓を繰り返し自覚させてくれます。」

p.200「
キールでの仕事(ブッシュ夫人が参加した、あのプロジェクト)のあと、校長先生から手紙をいただきました。「この地域の心理学者が、私たちの学区の子供たちを調査したところ、大人にしか見られないようなこと、たとえば自殺や殺人やその他の暴力といった悲惨な状態が見られると報告していました。ですが一方で、このノースセントラル小学校の子供たちにそれが見られないこと、しかもその主な理由が遊び場のおかげであること――安全に遊ぶ場所があること、なんらかの新しい楽しみがあること、そしてただ子供になれる機会があること――が報告されていました」」

p.210-211「
「コンクリートミキサーを使えばいいのに」とよく言われます。家庭用のコンクリートミキサーがあれば、スイッチを入れ、原料を加えるだけで、完璧な混ざり具合のコンクリートが出てきます。ですが、コンクリートミキサーを使わないのは、それでは同じ経験が得られないからです。単に遊び場を作ることが目的ではなく、地域を良くするために知らない人同士が手を取り合って懸命に働き、形のあるプロジェクトをやり遂げることが大切なのです。なにも問題がなく、汚れ仕事もせず、仲間と肩寄せあって汗をかくこともなく、少しばかり苦労することもなければ、この経験が単なる「取引」になってしまいます。カブームの遊び場作りは、機械に頼らず人間が力を合わせてできることを体験できるからこそ、特別なのです。」

p.212-213
カブームの基本哲学:
1.共通の目標を掲げて人々を集わせる
2.成功体験を重ねる
3.勇気を連鎖させていく

これがカブーム流の変化の法則

p.266
imagination playground set
(カブームが、「スポンジ部品」のコンセプトを実現するために、デビッド・ロックウェルの設計事務所と協力をして商品化)
http://kaboom.org/about_kaboom/programs/imagination_playground
http://www.imaginationplayground.com/

p.302-303
カブームでの採用の5つの基準:

  • 「できる」…その人はその仕事ができますか?つまり、能力とスキルをもっていますか?
  • 「やる」…必要なことを、必要なときにやる人間でしょうか?
  • 「チームとの相性」…とことん楽しむカブームの文化に合うでしょうか?カブームは多様な人々の集まりです。結果を出すために、全員が集中して頭を低くして働き、また顔を上げて楽しみます。
  • 「超賢い」…その人には知恵とやる気がありますか?自分が善いことをしているかどうかがわかる能力と、自分を鞭打って行動に駆り立てる能力がありますか?
  • 「超速い」…その人は、選挙戦のような環境の中で働く心構えと原動力がありますか?カブームのスタッフは、明確な目標に向けて必死に努力し、フィードバックをすぐに集めて成功かどうかを判断し、次にどこを変えたらいいかを探し出し、それを記録に残し、次に移ります。

p.373
YouTubeでカブームのプロジェクトは見られる。
#要チェック!

p.380-383
ブーマリズム:ブーマー(カブームのスタッフ)の仕事の基礎となる哲学

  • 結果と同じくらい、プロセスが重要
  • 後悔しない
  • 周囲を責めず、自分を高める
  • 多くを約束せず、言った以上のことを成し遂げる
  • 最高のものが求められるとき、平均点で満足しない
  • 名前を挙げて、褒めるべき人を褒める
  • いつもの仕事を、いつもとは違うやり方で行う
  • 良いアイデアも実行しなければ意味がない
  • 火を起こすには、火花が一度散ればいい
  • 練習は完璧を生まない。完璧な練習が完璧を生む
  • 自分の能力を出し切らないとき、それを失敗という。だれかが自分よあり成果をあげたとき、競争に敗れたことになる。
  • 論理と事実を使って相手を説得し、ストーリーを語ってやる気にさせる

p.349-379
カブームが遊び場を建てるまで:

  1. 資金提供パートナーを募る(6ヶ月前)
  2. コミュニティ・パートナーを募る(4ヶ月前)
  3. デザインの日(3ヶ月前)
  4. 現場の準備(2日前)
  5. 建設の日!(当日)