鈴木克明『教材設計マニュアル 独学を支援するために』

教材設計マニュアル―独学を支援するために

教材設計マニュアル―独学を支援するために


教材を作るのに、何らかのノウハウというかシステムがあるのならば、参考にしようと思って読了。ずーっと前に読んだもので、付箋がたくさん挟んでありました。なかなか勉強になった。こういうふうに明文化するのって、とても大事だよね。
以下、メモ。

p.3
独学を支援するための教材の4条件

1. 自分がよく知っている内容/よくできることか?
· 自分がよく知っていることであれば、教えるための工夫に専念できる
· 自分はどうやってそれをマスターしたのか、自分の学習体験を振り返ってみることで、人に教えるためのヒントがつかめるかもしれない

2. 教材作りの協力者が得られるか?
· 教材が完成したときにそれを使って実際に学ぶ必要のある人がいるかどうか?=形成的評価
· 教材作りを一緒にする人は、教えたいことを理解している「点検者」であり、協力者とは違うことに注意

3. 短時間で学習できるか?
· 教材の中身に一通り目を通す時間だけでなく、内容を理解したり、覚えたり、練習したりする時間も含めて1時間程度で学習できるようにする

4. 個別学習教材で、教材が「独り立ち」できるか?
· 「ここではこんなふうに励ますのに」「この程度できたら次に進ませてあげよう」などの思いを教材に託す必要がある
· 言いたいこと、やってあげたいこと、見ていたいことはすべて教材に入れ込んで、教材を使う人が自分自身で「先生役」をしながら学習を進められるように工夫することが求められる


p.16
システム的な教材設計・開発の手順

出入口を決める(学習目標の明確化とテストの作成)
・学習者に何かをやらせて推測するときに「何をやらせるのか」を目標行動として採用する
・目標行動を採用することで、教材の責任範囲はより限定され、明確なものになる
・評価条件を設定する
・合格基準を明らかにしておく

中の構造を見極める(課題分析図の作成)

教え方を考える(指導方略表の作成)

教材を作る(教材の開発と形成的評価の準備)

教材を改善する(形成的評価の実施と教材の改善)


p.46-48
態度とそのテスト
情意領域の課題=「心」にまつわる学習目標は「態度」の学習(ロバート・M・ガニェ)
・「からだ」や「あたま」の場合以上に、目標を達成したかどうかを確かめるのが難しい
・確認するために、以下の3つの方法がある

1)作文を書いてもらい、そこに心が表れているかをチェックする方法(論文式のペーパーテスト)
→建前と本音が区別しにくい

2)チェック項目を用意して観察し、本人に気づかれないようにテストする
→時間がかかる、本人に気づかれることが多い

3)きれい-汚いなどの形容詞対を使って「印象」を聞くことで「心」に迫るSD法(Semantic Differential; 意味微分法)


p.48

ガニェの推奨する方法は、行動の意図を問うことです。「どう思うか」を質問するのではなく、「あなただったらこんなときどうするか」を問うのです。


p.63

「覚える」ことを効果的に行うためには、一つひとつの項目を別々に「丸暗記」しようとせずに、関連のあるものどうしを結びつけたり、互いにまぎらわしいものどうしを区別したりするとよいと言われています。学習目標に含まれている項目を洗い出し、それを相互の関連性によってかたまりに分ける分析方法を「クラスター分析」といいます。
(略)覚えてもらいたい単語が30個あったとしても、それを一度に説明して「さあ覚えてください」と要求しても荷が重過ぎます。人が一度に覚えられるのは7つ前後であるという説(ミラーのマジックナンバー7±2)もあります。お互いに関連のある単語をまとめて覚えてもらったり、まぎらわしい単語を対比しながら覚えられるようにまとめたりすると、少しは楽に覚えられるようになるでしょう。


p.101
形成的評価(教材の出来具合を確かめる評価)の7つ道具:
1)教材そのもの
2)前提テスト
3)事前テスト
4)事後テスト
5)アンケート用紙または質問項目
6)観察プラン
7)経過時間記録用紙


p.120
1対1評価実施の留意点
・思ったことを気軽に言える雰囲気を作る
・評価の趣旨が「教材の改良」にあることを理解してもらう
・限界まで手や口を出さない
・手や口を出したら、それを必ず記録にとどめる
・一通り終わったところで、もう一度教材を振り返る
・もし直すとしたらどうするといいかを教えてもらう
・最後に、協力者への感謝の気持ちを表す


p.176
アメリカの教育工学者ジョン・M・ケラー(John M. Keller)
「ARCS動機づけモデル」
=授業や教材を魅力あるものにするためのアイディアを整理する仕組み

学習意欲を高める手立てを4つの側面に分けて考える
1)注意 Attention「おもしろそうだな」
2)関連性 Relevance「やりがいがありそうだな」
3)自身 Confidence「やればできそうだな」
4)満足感 Satisfaction「やってよかったな」
→なぜやる気が出ないのか、を4つの側面からチェックする