井上修『私立中高一貫校しかない! 教育階層化時代の勝ちぬき方』

私立中高一貫校しかない!―教育階層化時代の勝ちぬき方 (宝島社新書)

私立中高一貫校しかない!―教育階層化時代の勝ちぬき方 (宝島社新書)


教育業界で仕事をして、あちこちの学校に営業に行ったり、実際に中で働いたりしてみる機会を得た。学校って本当に全然違う。普通の人は、自分が卒業した学校しか見ることができないわけだから、それに比べるといろいろと見られてよかったな、と思う。
この本は、基本的には公立だめー!私立でしょ!みたいな感じの書き方。確かに、「ああ、私立中高一貫校っていいよな…」と思うことも多いので、納得いくところも多い。
公立出身者としては、どの学校にも「これが校風だ!」というのを持ってもらって、ぜひがんばってもらいたいと思っているのですが。
そんななか、うちの母校*1も、独自入試問題を作るらしいよ、次年度から。名門復活は別に望んでない。でも、自分たちがあそこですごく楽しかったから、自分の子どもにだって(できたら)行かせたいと思う。それまでに、ボロボロになっちゃってはほしくないなぁ。見守って生きたいところ。
この本、読み終わると、「公立校がほんとにそんなにだめなの?」と心配になる。それと、「私立、すげぇなあ」って感じかな。

以下、メモ。

p.71
■私立中高一貫校のいいところ
生徒1人ひとりにチューターがつき、進路面でのアドバイスをする
八雲学園(女子高)
http://www.yakumo.ac.jp/jhs/index.html


p.74
■私立中高一貫校のいいところ

多くの私立中高一貫校で試用されている英語のテキストに、「プログレス」がある(正式名称『ニュー・プログレス・イン・イングリッシュ』)。(略)
特徴としては、まずはボキャブラリー数の豊富さがあげられる。公立の標準的なテキストの倍以上の量が含まれている。具体的には、中学までで3500語、高校までで6000語程度が扱われる。「新学習指導要領」施行後に使用される公立中学のテキストでは、指導単語900語程度、必修単語が100語だから、その差は歴然である。


p.77

私立中高一貫校を大きく特徴づけるのが「理念」である。私学には、各校それぞれに創立理念が謳われているが、その理念のもと、生徒たちに「進路の考え方」「生き方」などを提唱する。


p.78

「自分の好きな学校に入れない」学校群制度は、それまでかろうじて保たれていた公立高校の校風を破壊した。
校風なり、理念は、それに憧れる生徒と、それを守ろうとする学校の両者が存在してこそ、成り立つものである。教師の異動が頻繁に起こり、学校群制度のために希望した学校へ入学できない生徒が出てくれば、理念は薄まってしまう。案の定、結果として生じたのは、各公立高校が、個性のないのっぺらぼうのような学校になったことである。
一方、私立中高一貫校は、公立校が陥った「ゆとりカリキュラム」や「学校群制度」などの付け焼刃的な流れと対峙するかたちで、確固たる理念を守りつづけてきた。実は、合格実績意外に、この理念の継承こそが公立と私立の明暗を分けたのである。


p.81
麻布文庫:
1冊300円の低廉な文庫を独自に発行。
麻布に関係した人物や、麻布出身者が記す科学の面白さなどが読める。
「マンガより安い値段で、生徒たちに麻布の面白さをしってほしい」というのがコンセプトらしい


p.166-175
教育階層化社会
A.最上位
・ハイソ
・コネクションなどもある、教育資金も潤沢
・国内名門校だけでなく、国際的なスクール(インターなど)も視野に

B.中上位
・ホワイトカラー
・中学校以降なら私立に入れられる
・教育に対する態度は真剣
・子どもたちに「自己決定」の能力を養成しなくてはならないという意識

C.中下位
・かつての中流。
・自分もそうだったから子どもも公立でいいと思う
・「教育の変化」について深く考えたことがない人が多い?
・まったりとしている。受動的。
・階層を移動することができない

D.下位
・教育意識が欠如している
・ネオプアゾーン
・親の生活パターン、人生の行動様式が壊滅しているケースが多い
・親たちのおかしなライフスタイルに合わせて、深夜まで子どもを活動させる
・学校での学びが機能しない

*1:この本の中にも何度か名前が登場しますが…