越田年彦『たとえと事実でつづる経済12話』

たとえと事実でつづる経済12話

たとえと事実でつづる経済12話


経済理論をわかりやす〜いケーススタディに落とし込みたいと思って読みました。まずまず、というところかな。買うほどではないと思う。

p.15
カネの儲け方
1)せっせと何かを作る
・労働力を売って金を得る
・作り出したものは売られ、消費されていく
・フロー商品=消えてなくなる種類の商品

2)買ったものの値段が高くなった売る
・株、骨董品、絵画、土地など
・価格の変動がある
・需要者と供給者との力関係で価格が決まる
・株のようなストック商品には、数に限りがある
→数に限りがあることが、ストック商品に対する人々の人気をあおる

p.17
フロー商品も、しなおすになることでストック商品にもなりうる。
絶えず生産されているものはフロー商品だが、
生産が追いつかない状態になるとストック商品となってしまう(ストック化)

p.42
アダム・スミス
→神の見えざる手

私たちは、利己心(自分の利益)のために生産したり、活動したりするのであるが、これが「見えざる手」に導かれて、社会全体の利益を高めることになるというのだ。



自由放任することをフランス語でレッセ=フェール(laissez-faire)というが、スミスはこれが望ましい社会・国家の基本的方針であるとする。ちなみに、レッセ=フェールにもとづく国家を夜警国家という。命名者は、ドイツの社会主義者ラッサールである。

%どうしてそれが「夜警国家」なのかの由来を書いてほしい。
%これだけじゃわからない。

p.51

価格が「ちょっと」下がったとしよう。普通ならばその商品の需要は「幾分」増加するはずである。では、この「ちょっと」と「幾分」の比率はどれくらいなのか、これを表したものが需要の弾力性である。

%このたとえ話はうまい。っていうかおもしろい。


需要の弾力性とは価格が1%上がった(下がった)ならば、需要は何%上がる(下がる)のかを示しているのである。

p.74-p76
資本主義経済の移り変わり

・産業資本主義経済
18世紀後半にイギリスで誕生。初期資本主義経済で、無数の小資本家が生産者として自由競争。業界を牛耳る巨大企業は登場していない。金融機関はまだ大きな力を持っていない。製造業を中心とする経済。

・独占資本主義経済
競争の結果、企業の合併などが増え、巨大化していく=資本の集中。これを通じて少数の巨大企業が市場を支配するという形が普通になる。ヨーロッパでは19世紀末にはこの段階に。
カルテルなどがおこるようになり、巨大企業が強調して利益を追い求めるようになる。

・修正資本主義経済
ルーズベルト米大統領のニューディール政策など、経済の安定や成長に不可欠なものとして政府が登場。国家が経済に介入して、不況からの脱出やインフレの抑制を図るようになる。ケインズが基礎付け。


p.131
景気循環をめぐる議論

1)キチンの波(3年4ヶ月周期)
在庫が原因となるとされている。突然の大量の注文、予想に反してヒットしない、などが原因で景気が悪くなっていく。

2)ジュグラーの波(10年周期)
耐用年数の関係で、設備投資を10年程度で行うようになる。いろいろな業界で設備投資が活発になる時期が来て、また10年後に一気に買い替えブームが来る。これが景気の波を作る

3)クズネッツの波(15〜25年周期)
アメリカの都市人口一人当たりの建築物の評価額をもとにして景気の波を発見。建築の耐用年数が約20年くらいとなっている。

4)コンドラチェフの波(50〜60年周期)
新しい技術の発明と普及(技術革新)、戦争、新しい金鉱の発見、植民地の拡大といった点がポイントになる。


p.139
・所得税=累進性を持つ
課税所得の伸び以上に所得税の伸びが増加していく

・消費税=逆進性を持つ
所得が増えれば増えるほど、税負担が軽くなる


p.141

税制とはこのくらいの所得や消費ではいくら取られるのか、といった単なる税額の計算を理解するだけではなくて、自由な社会がいいのか、平等な社会がいいのかというように、どのような社会を善しと考えるか、など哲学の問題でもある。


p.157
乗数効果/乗数理論
x円の公共投資や減税が、そのy倍の国民所得を実現する働きを乗数効果といい、公共投資や減税の乗数効果を明らかにした経済理論を乗数理論という。


p.161
貯蓄の逆説

0.8から0.6へと限界消費性向が下がるということは、何を意味しているのか。それは今までは(追加)所得に対して8割分を消費に回していたのだが、6割分しか消費に向けないということなのである。消費を削った分は、貯蓄にまわる。このことから、重大なことに気づく。
国民が貯蓄を増やそうとすると、国民所得の増加は削減され、それにより、景気の回復は悪くなるということである。この現象を、貯蓄の逆説という。


合成の誤謬

不況のときに、私たちは生活防衛に走りがちになって、消費を切りつめて、せっせと貯蓄に励もうとする。それはかえって、景気を悪化させるのだ。節約というミクロ(一人一人)の善は、景気悪化というマクロ(経済全体)の悪になる。このように、ミクロ(部分)を重ねていくと、その反対の性質を持つマクロ(全体)が生まれることを、合成の誤謬という。


p.194
公定歩合0.1%へ

1995年9月に0.5%に引き下げられて以来、公定歩合は長い間すえおかれた状態にあった。2001年2月と3月に日銀は2度にわたり公定歩合を0.35%、0.25%に引き下げた。さらには、アメリカ同時多発テロの起こった9月には0.1%とした。0.5%の超低金利に引き下げても、不況からの出口が見えないので、さらに引き下げる、このあたりに平成不況の深刻さがよくあらわれている。