マーク・ブキャナン『歴史の方程式 科学は大事件を予知できるか』

歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか

歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか


これはべき乗則についての本。それに関連して、6 degreesの話とかも出てくるのですが(それはこの辺りを参照)、そういったところよりはどちらかと言うと歴史がこのべき乗則に従う、という件がおもしろかった。ときどき、歴史は何らかの法則に操られているかのような感じも受けるじゃない!?こういうのは気持ち悪いと言うか、人間って何!とか思っちゃったりもするんだけど、すごく刺激的な学問分野だと思うんだよね。橋本さんのblog"Passion For the Future"でも取り上げられているので、リンクしておきます

p.184

ゾーバーマンの法則---経済が悪くなるほど、経済学者は儲かる。
アルフレッド・ゾーバーマン

p.184-185

経済学者たちが内輪で言っている冗談がある。「経済学者とは、経済について誤った推測をして金儲けをする専門家だ」また別の冗談としては、「経済学者は、ここ5回の不況のうち9回全部を予測した」どちらも真実ではないが、それでも愉快なものではないはずだ。

p.235

科学はどのように発展しているのだろうか?そして、科学者がお気に入りの学説を放棄しようとしないとき、科学はどのようにして進歩していくのだろうか?クーンは、歴史のなかに一般的事柄を見出そうとするカーの願望を共有する歴史学者として、これらの問題の答えを探しはじめ、そして1962年の名著『科学革命の構造』によってそれを成し遂げた。
クーンは、歴史的により現実味のある化学の描像においては、パラダイムという概念が重要な位置を占めるということを見出した。パラダイムとは、実際に機能すると証明されている科学的学説や実践方法に関する具体的前例のことである。クーンによれば、

パラダイムとは、法則、理論、応用、装置を含め、科学研究においてある特定の首尾一貫した伝統を生み出すモデルを提供する、実際の科学的実践モデルを提供する、実際の科学的実践方法において広く受け入れられた前例のことである

p.271
カーは、歴史において真に重要な力は社会的な動きの力であり、たとえそれが個人によって引き起こされたものであっても、それが大勢の人間を巻き込むからこそ重要なのだと考えていた。彼は、「歴史はかなりの程度、数の問題だ」と結論付けている。
もちろん、偉人と呼ばれる人々は確かに存在し、歴史の道筋に決定的な影響を持っている。実際あらゆる集団行動には、先導者がいる。しかし、集団行動の重要性を信じている歴史学者にとっては、このような先導者たちが歴史の展開を演出していると考えるのは間違いである。誰も空虚の中で生きたり考えたりすることはできない。すべての人間は、他の人間に大きく影響を受けている。

p.271-272

偉大な人物が大きな出来事の中心にいたとしても、その人物がその出来事を推進する力を与えるわけでない。そのような偉大な人物の置かれた立場こそが、その人物自体よりも重要なのである。彼らの役割は、大きな社会的力の衝突する接点となることであり、そのような中心的役割を果たすことが、その人物を偉大にさせるものだからである。