佐伯啓思『人間は進歩してきたのか 「西欧近代」再考』


アメリカ独立戦争フランス革命から、「自由」について考えるくだりがとてもおもしろかった。なるほどね。学校の歴史でもこういう視点とか提供してほしいよなー。
ただ事項を覚えるなんて、つまらないもん。歴史は特定の誰かが語ったもの=his story→historyなんだ、ということをわかってもらわないと、いつまでも歴史認識はかわらないし、歴史が関わる問題については一歩も進まないんじゃないか。そういう多面的な歴史認識を持ってもらうためにも、歴史教育は変わるべきだと思うけどな。
歴史教育カリキュラムも企画してみようかな。

以下、メモ。

p.151-158
アメリカ独立戦争は「権力を創出すること」
→アメリカでは政治に参加することは「自由」
フランス革命は「権力を破壊すること」
→行き着いたところは恐怖政治。民主主義→全体主義

p.154

市民の代表として権力を創出していくこと、もっと具体的にいうと政府を構成すること、そういう活動こそがきわめて重要だとされる。市民の代表として政治に参加し、そこで大きな働きをすること、そのことが人間の活動のなかでも最大級の名誉を与えられることになります。政治的活動に参与して人々の賞賛を受けることこそが大きな名誉だというこの一種の政治的風土は、今日のアメリカにおいても引き継がれていますね。これは日本の政治風土とは大きく違っている点ですね。
アレントの議論に従えば、権力の創出に関わること、それから政府の創出に関わること、そこにこそ人間の自由がある。だから、自由とは、アメリカにおいては何よりまず「公的な自由」なのです。公的な世界で、私利に囚われず、公的な事項に積極的にかかわっていくこと、そこで人々の賞賛を得ること、ここに自由の意味があるというのです。ですから、ジョン・アダムズ、ワシントン、ハミルトン---こういった人たちは、政府をつくり運営するという、いわば「政府の建設」活動にかかわること自体に強い喜びを覚え、そこで人々の尊敬を得ることこそが幸福だと考えたというのです。