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上田信行×中原淳『プレイフル・ラーニング』

books work

プレイフル・ラーニング

プレイフル・ラーニング


「プレイフル」という言葉にまつわるいろんな勉強を今年はしようと思っています。とても勉強になりました。以下、メモ。

p.12
「学び」や「教育」の言説空間において、ここ数十年で起こった変化を3つのワードで:
「オルタナティブ」「インタラクティブ」「アマチュア」

教育の非専門家(アマチュア)が、自分の専門性や経験をもとに、既存の(学校)教育ではない、“オルタナティブな学びの場”を組織するようになってきた。そこに志や興味関心を同じくする人々が集い、双方向(インタラクティブ)のコミュニケーションを取りつつ、学ぶようになってきた、ということ

p.32
授業のLWPモデル:
「授業のデザインの仕方も、最先端でした。まず、ゲストとして招かれた一流の先生から午前中にレクチャーを受けるという要素があります。そして、そのレクチャーをベースにして、自分たちで何かつくり上げるワークショップが午後(真ん中)にあります。真ん中にワークショップがあるっていうのは良くできていて、レクチャーを聞く時も、その後のワークショップのネタとして聞くので、聞いたことをすぐにその日の作業に入れ込めるのです。そして、夜のパーティでは、ゲストの方達と個人的に話ができます。日本の一般的な講演会では、著名な先生の話を聞いたあとに、なかなか気軽に話しかけることはできませんが、夜のパーティでは話ができるだけでなく、友達にだってなれるのです。そして、そのパーティこそが、リフレクションになっていたわけです。レクチャーで講師の話を聞いて、ワークショップで自分たちの手を動かしてやってみて、最後はパーティで講師や仲間と対話しながら1日を振り返る。」

p.36「
イリノイ大学のロバート・ステイクは、シェフが厨房でスープの味見をすることが形成的評価(formative evaluation)で、お客さんが実際にスープを飲んで評価するのが総括的評価(summative evaluation)だと書いているのですが、まさにそんな感じです。シェフは味見をしたあと、塩を足したりして、お客さんに出す前に味を改善します。それが形成的評価なのだと言っていますが、まさにそんな感じです。
特に、セサミストリートの番組制作を行う「チルドレンズ・テレビジョン・ワークショップ(CTW)」では、研究者が番組制作チームに入り込むことで、常に番組の内容の形成的評価を行い、現場で改善を加えながら開発していくことができたことが、成功を導いた大きな要因となっています。」

p.50
ADDIEモデル
A: Analysis(分析)
D: Design(設計)
D: Develoment(開発)
I: Implementation(実施)
E: Evaluation(評価)
※教え方のPDCAのようなもの。

p.59-60「
パパートは数学と人工知能のアカデミックバックグランドをもつ研究者です。彼は、「子どもが知識を構成する、つまり、理解したり意味を解釈したりするのは、どんな時か」と考えました。パパートは「知識の構成」と「具体物の構成(construction)」を重ね合わせて考え、「子どもは具体的なものづくりを通して、知識を構成する」という論を発展させました。「アイデアは獲得するものではない、つくるものである(Children don't get ideas; they make ideas.)」というパパートの言葉がありますが、知識(idea)というのは得る(get)ものではなく、つくる(make)ものだと考えたのです。例えば、子どもは円について教えられるのではなく、円を描くことで、円とは何かについて学ぶことができる。円を描きながら円というものの定義や解釈をつくっていく、というわけです。」

構築主義 constructionism
=つくって学ぶ learning by making

p.64「
パパートの思想には大きく影響を受けました。彼の「環境をつくる」という考え方に感銘を受けたのです。僕の記憶では「学習環境」という言葉を初めて聞いたのはパパートからだったように思います。彼はMITで「学習環境(learning environment)」という講義を始めました。僕は、その言葉を目にした時、ガーンと雷に打たれたようになり、「学習環境、これこそ僕がやりたかったことだ!」と感じました。今まで日本でやってきたような授業デザイン(instructional design)の研究から学習環境デザイン(designing earning environments, learning design または constructional design)に僕の関心がシフトした瞬間です。」

p.68-69「
ドゥエックは子どもの無力感もこれと同じメカニズムなのではないかと考えました。やる気のない子どもは、「回避しようとしない犬」と同様、「努力しても、この状況は変わらない。自分には無理だ、どうせやっても無駄だ」と最初から諦めてしまっているのではないかと。
では、子どもがそんな風に考えてしまう原因は何でしょうか。ドゥエックはその背景に「頭の良さというものは固定的なもので変わることがない=固定的知能観(entity theory of intelligence)」というセオリー(考え方)があるのではないかと考えました。「たとえ新しい知識は獲得できても、頭の良さ(知能)そのものは変わらない、賢さは生来決まっているものだ」と。」

こうした子どもは、成績が良い時はいいが、成績が落ちると、たちまち無力感に陥ってしまう。

一方、「知能というものは、勉強すればするほど伸びる。成長する。賢さは獲得できるものだ=成長的知能観(incremental theory of intelligence)」というセオリーを持っている子どもは、「自分はもっと賢くなりたい」と考え、他人からどう見られるかを気にすることはあまりありません。だから、失敗を恐れず、知らないことは恥ずかしがらずに尋ねることができます。大切なのは自分がより賢くなることであり、学ぶことそのものが目的になる(learning goal)というわけです。

p.77
キャロル・ドゥエック:
「動機論」と「認知論」を結びつけ、認知的動機づけ理論を唱えた。やる気は、自分が持っている事故イメージや知能観、つまりセルフセオリーが大きく影響する、と考えた。

p.82-83「
ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」というのは、その人が持っているポテンシャル(知的発達の可能性)であり、そのことを自分で意識しながら他者と協働すれば、自分の可能性はどんどん広がっていくのではないでしょうか。そこで僕はヴィゴツキーのアイデアを発展させて「憧れの再近接領域」という考え方をつくりました。「あなたがいるから頑張れる」「君と一緒だからもっと上を目指せる」。他者の存在が自分の可能性を広げていく、そうした希望を込めて、僕はこう呼んだのです。」

p.98
ヴィゴツキーの理論「発達の最近説領域」:
「1人でできるようになること」と、「誰かの助けによってできるようになること」という、発達における2つの段階の差、距離のことを「発達の最近接領域」と呼び、そこは他者との相互作用によって発達しうるセンシティブなゾーン(領域)なのだ、という考え方。

p.119
プレイフル・ラーニングのコンセプト:
L: Learning 学び
LL: Learning Learning 学びについて学ぶ=リフレクション(省察)
LLL: Learning (Learning Learning) 学びについて学んだことをもう一度学ぶ=意味づけ

p.158
神戸芸術工科大学 大学院 芸術工学研究科 准教授 曽和具之

p.183 上田先生「
「学ぶこと」は、「変わること」であり、「変えること」です。「読むことは、あなたの世界を広げる。でももし、あなたが書くことができれば世界を変えられる」というような意味のことを言ったパウロ・フレイレ(Paulo Freire 1921-1997)は、すごいと思います。アウトプットしてはじめて世界が変わる。インプットでは世界は変わらない。自分の中だけは変わるかもしれないけれど世界は変わらないですよ。でも、何かしゃべれば、発信すれば世の中は変わっていくかもしれない、風向きが変わる。世の中に影響を与えることができるんです。これは民博の梅棹先生がおっしゃったことなのですが、学校の教育はchargeだ、だけど文化創造の実践はdischargeなんだと。」