ステファン・エセル『怒れ!憤れ!』

怒れ!憤れ!

怒れ!憤れ!


Occupy Wall Streetのきっかけにもなった、とどこかで読んだ気がする本。著者はレジスタンス運動の活動家で、ナチスに抵抗し続けた自由フランス軍の兵士だった男で、現在94歳。強制収容所に送られて処刑される寸前に脱走し、後に外交官となった人だって。壮絶な人生…。だからこそ言えることがあるのかな、とも思える言葉がたくさん。

たしかに今日の世界では、怒る理由が昔ほどはっきりしなくなっている。言い換えれば、世界はあまりに複雑になった。命じたのは誰なのか、決定を下したのは誰なのか、支配の系統をたどるのは必ずしも容易ではない。もはや相手は、明らかに悪行を働いている一握りの権力者ではないのだ。いまの相手は広い世界である。密接に結びつき関連し合う世界に私たちは生きているが、これは人類史上初めてのことだろう。だがこの世界にあっても、許し難いことは存在する。それを見つけるためには、目をよく見開き、探さなければならない。若者よ、探しなさい。そうすれば、きっと見つかる。いちばんよくないのは、無関心だ。「どうせ自分には何もできない。自分の手には負えない」という態度だ。そのような姿勢でいたら、人間を人間たらしめている大切なものを失う。その一つが怒りであり、怒りの対象に自ら挑む意志である。(p.43-46)

そうそう、無関心がいちばんよくないよね。ウォール・ストリートを占拠するまで行かないにしても、せめて怒りをもって選挙には行こうぜ、と若者を見てて思うわけです。「社会を変えられる」という気持ちを持って、学校を卒業してほしい、と本当に思います。

p.31-34「
なるほど、私のような年寄りが経験してきたことは、今日の若者とはひどくちがう。だから私は大学の先生たちに、学生と話す機会をつくってほしいと頼んでいる。なぜなら若い世代は、私たちが身を投じたような明白な理由を持ち合わせていないからだ。私たちにとって抵抗するとは、ドイツの占領を受け入れないこと、敗北を拒否することだった。これは、わかりやすい。その次の理由も明快だった――植民地の解放である。それから、アルジェリア戦争だ。アルジェリアが独立すべきであることは明白だった。そして、スターリンである。」

p.43-46「
たしかに今日の世界では、怒る理由が昔ほどはっきりしなくなっている。言い換えれば、世界はあまりに複雑になった。命じたのは誰なのか、決定を下したのは誰なのか、支配の系統をたどるのは必ずしも容易ではない。もはや相手は、明らかに悪行を働いている一握りの権力者ではないのだ。いまの相手は広い世界である。密接に結びつき関連し合う世界に私たちは生きているが、これは人類史上初めてのことだろう。だがこの世界にあっても、許し難いことは存在する。それを見つけるためには、目をよく見開き、探さなければならない。若者よ、探しなさい。そうすれば、きっと見つかる。いちばんよくないのは、無関心だ。「どうせ自分には何もできない。自分の手には負えない」という態度だ。そのような姿勢でいたら、人間を人間たらしめている大切なものを失う。その一つが怒りであり、怒りの対象に自ら挑む意志である。」

p.81-82「
「暴力は無益だ」と知ってほしい。暴力は罪かどうかよりも、この方がよほど重要である。テロは無益な行為、役に立たない行為なのだ。では、何なら役に立つのか。それは、非暴力の希望である。希望が暴力的になるのは、たぶん詩の中だけだ。」

p.88-90「
ヨルダン川西岸地区にある小さな村ビリンでは、毎週金曜日が来ると、村人が隔離壁まで抗議の行進をする。石を投げもせず、暴力も振るわず、ひたすら壁まで歩く。これに対するイスラエル政府の反応に私は注目している。いや、私だけではない。世界が注目している。イスラエル政府は、この行進を「非暴力のテロ」と認定した。すばらしい。非暴力のテロを認めるのは、ぜひともイスラエル人であるべきだ。そして何より、抑圧に反対する世界のすべての人々の支持と理解と支援を求めた非暴力行動の効果を知って、驚きあわててもらいたい。」

p.97-101「
さてこの檄文をどのように締めくくろうか。やはり再び過去に思いを馳せることにしよう。全国抵抗評議会いが採択したプログラムの60周年を記念して、レジスタンス運動の活動家であり自由フランス軍の兵士であった私たちは、2004年3月8日に次のように宣言した。「全体主義と戦ったレジスタンスと連合軍によって、われわれの兄弟姉妹の犠牲によって、ナチズムは打ち倒された。だが脅威が完全になくなったわけではない。不正に対するわれわれの怒りの炎はけっして消えることはない」
そう、あの脅威は完全になくなったわけではない。だから私たちは声を上げ続ける。マスメディアに平和な反乱を起こせ。彼らが若者に示すのは、大量消費、弱者の切り捨て、文化の軽視、快楽く、そして行き過ぎた競争だけだ。

21世紀を担う若者たちに、愛を込めて言おうーー
創造は抵抗であり、
抵抗は創造である。」