津田大介, 斎藤哲也, 柳瀬博一, 佐々木敦, 仲俣暁生, 森山裕之, 鈴木謙介『文化系トークラジオLife』

文化系トークラジオLife

文化系トークラジオLife


毎月楽しみに聴いている*1文化系トークラジオLifeの書籍、ようやく読めたぞ、と。charlieの熱い思いが溢れているところがあったりして、とっても良かったなあ。

鈴木 大前提として言いますが、経済問題も貧困問題も、確実に存在しています。その上であえて、今回の特集を含めた昨今の左派の主張に物申すとすれば、僕が非常に気に入らないのは、そこで用いられているロジックの構造なんです。つまり、「君たちはロストジェネレーションだ、被害者なんだ。どんなにそこそこうまくやっているように思えても、それもかりそめのもので、みんな搾取されてひどい目に遭うんだ」ってさんざん脅した上で、「それがイヤなら我々と連帯して現政権を打倒しよう!」という形で政治的動員を図ろうとしている。政治運動の必要性は認めますけど、それでもその“被害者として否定することによって、自分たちの陣営に巻き込んでいく”やり方には非常に腹が立つ。
…つうかさ、まずそれがおかしくてさ、なんでお前らに動員させられて戦わされなくちゃならないんだよ。それこそ戦後の運動の失敗の歴史そのものだし、戦前と何も変わらないだろうが!って僕は思うわけ。(徐々にワナワナしてきて)動員のために「君たちはロストジェネレーションなんだ」「自信が持てない人たちなんだ」「人生に迷ってるんだ」ってさんざん言っておいて、動員に乗ってこないと見ると、「最近の若い連中は右傾化してて、ほいほい小泉についていって騙された」?ふざけんなよ!俺らが欲しいのは闘争じゃなくて、単なる普通の幸せだよ!(p.193-194)

こういう、リアルな叫びがこの番組の魅力だよなあ、と。ときどきまったくわからん話になっていたりもするけれども(笑)これからも楽しみたいな、と思ってます。もう聴き始めて3年かな?1ヶ月に1回しかないのに、あっという間だなぁ。
以下、メモ。

p.115
小倉昌男ヤマト運輸創設者)「ぼくは武士だの武士道だのが好きじゃない。だって武士ってしょせん役人だからね。ぼくは町人です。二本差し(武士)が怖くっておでんが食えるか、ってね」。

p.193-194
鈴木 大前提として言いますが、経済問題も貧困問題も、確実に存在しています。その上であえて、今回の特集を含めた昨今の左派の主張に物申すとすれば、僕が非常に気に入らないのは、そこで用いられているロジックの構造なんです。つまり、「君たちはロストジェネレーションだ、被害者なんだ。どんなにそこそこうまくやっているように思えても、それもかりそめのもので、みんな搾取されてひどい目に遭うんだ」ってさんざん脅した上で、「それがイヤなら我々と連帯して現政権を打倒しよう!」という形で政治的動員を図ろうとしている。政治運動の必要性は認めますけど、それでもその“被害者として否定することによって、自分たちの陣営に巻き込んでいく”やり方には非常に腹が立つ。
…つうかさ、まずそれがおかしくてさ、なんでお前らに動員させられて戦わされなくちゃならないんだよ。それこそ戦後の運動の失敗の歴史そのものだし、戦前と何も変わらないだろうが!って僕は思うわけ。(徐々にワナワナしてきて)動員のために「君たちはロストジェネレーションなんだ」「自信が持てない人たちなんだ」「人生に迷ってるんだ」ってさんざん言っておいて、動員に乗ってこないと見ると、「最近の若い連中は右傾化してて、ほいほい小泉についていって騙された」?ふざけんなよ!俺らが欲しいのは闘争じゃなくて、単なる普通の幸せだよ!

p.228
本田由紀 就職活動の際に自己分析を求められて、これまで何をやってきたのか、自分のアピールポイントは何かを考えないといけなくなっている。その時に採用の基準が「人間力」の有無だと言われてしまったら、それは結局、自分の“全部”を売りに出しているのと同じことだと思うんです。それはとても辛いことで、自分が評価されなかった際に何も残らない。自分が全部否定されてしまうのは酷いだろうと。だから全体を売り渡すんじゃなく、どこか、自分の一部を切り売りするだけでいいのなら、もう少し楽じゃないか。それを可能にするのが、私の提唱している「専門性」教育なんです。まあこれもあちこちで評判が悪くて、なかなか浸透しない。

※専門性とは、特定の領域に対する高度な知識や経験のこと。本田由紀は、すべての普通高校を「専門性に特化した高校」に再編することを提案し、また企業にも専門性に基づいて雇用者を処遇する必要性を説いている。本田由紀『多元化する「能力」と日本社会』(2005年)に詳しい。

p.230
鈴木 この番組では初回から「バブル待ち」なんて話をしていますが、たまに妙な自信を持っている子がいるんですよね。確かに若者に関する本はこの十年、「子どもがモンスター化した」だの「社会に出ても搾取されるだけでろくなことはない」だの書いてあるので、そういうものに影響を受けて落ち込む子もいるんですけど、他方でそういうものをいっさい無視して、自分だけは絶対大丈夫だと思っている子もいる。でもそれって結局はコインの裏表ですよね。彼らに、根拠のある希望を示すことってできるんでしょうか。
柳瀬 もう僕は、一言でいうと、「とりあえず働け!」ですね。お前らの頭の中より、世界のほうがはるかに広いんだから、とりあえず働け。自分の人生は、それ自体は誰も助けてくれないんだから。

p.231
本田由紀 香川めいさんという若い研究者が面白い研究をしていて、「自己分析の内容が90年代に変化した」と指摘しているんです。最初はいわゆる自己アピールとして、売りになるようなポイントを自分の中に探していようっていう軽いノリだったのが、だんだん「自分は誰なんだ?」「将来何を目指すんだ?」と、より深みにはまっていく。そのプロセスを就職情報誌の変遷から描き出してるんです。

p.231-232
鈴木 あとは「人生設計」ですよね。『13歳のハローワーク』なんかまさにそうだけど、早い段階から決めなさい決めなさいっていう圧力が強くなっている。未来が不安定なのに、自己決定して責任をとれなんて言われても無理だと思うんだけど。先ほどの柳瀬さんの主張はそれとは逆で、「若い時分に自己決定なんかできるわけがない、だからとりあえず働いてみろ」って話だと思うんですけど、それがもしかしたら、「若い時に人生を決めてしまえ」っていう抑圧的な言い方として受け取られてしまう危険はありますよね。
本田由紀 「やってみないと分からない」って柳瀬さんはおっしゃるんだけどそれならやってみてダメだった時のこともちゃんとアドバイスしてあげないと、あまりにも無責任なんじゃないですか。やってみてダメだった時、そこでどうなるのかってことまで言ってあげるのが、年長者の責任じゃないですか。
柳瀬 でも、僕らの時もそんなことをまで言ってくれる大人はどこにもいなかったですよ。

p.237-238
本田由紀 ある場にいて降りかかってくる不条理なトラブルがあった時、それに飲み込まれないよう、幽体離脱した自分が上から見ていると、やりすごせることもあって楽かな。私の場合は、学問的な領域における専門性のおかげで幽体離脱できたんです。

p.263
モーリー・ロバートソン J-WAVE「EARLY MORLEY BIRD」という番組+「i-morley」というPodcast

p.265
永六輔 TBSラジオ「パックインミュージック」での「この会社は戦車を製造してベトナム戦争に加担している。そんな会社の提供する番組に出演することはできない」と交番宣言してスタジオから出ていった事件。
#そんなことあったのね…

p.278-279
鈴木 確か、渋谷区で起きた妹バラバラ事件の時。「夢がないね」っていう言葉をきかっけにかっとなって殺してしまったという話が報道されたと思うんですけど、その時に「夢がないね」って言葉にふたり(注:プロデューサーの黒幕氏と)で反応しちゃって。夢に向かって頑張るためにだって、いろんな条件が必要になる。俺たちはたまたまそのコースに乗れたけど、もしかしたら自分があっち側にいたかもしれないって思った。だから、自分とは違うところにいる人たちの意見を聞いて、それを世の中にちゃんとリリースできればいいなと思うんです。自分の言いたいことだけを言おう言おうとすると、どうしても空回るんだけど、そうじゃなくて、誰かの言いたいことを僕が受け取って、世の中に投げ返す。それがラジオでできたらいいなっていうのが、番組やってて自分の心境としていちばん変わったところかな。
(略)
鈴木 ほんとにリスナーとか自分とか、ひとりひとりの人生っていうものが、ラジオという交差点に集まってくる時に、交通事故みたいに何かが「起きる」瞬間がある。「社会が…」みたいに大上段で語るよりもそっちの方が絶対面白いはずだし、そういう意味では、僕あ社会を上から評論する番組じゃなくて、やっぱり「Life」をやりたいんだなあと。

#憧れの人(2007年2月11日)、働くということ(2007年1月28日)、先生、「糸井重里さんを迎えて」(2006年11月18日)の3回は聴きたいな。
#佐々木敦『ソフトアンドハード』は読んでみたい。

*1:といってもPodcastですけど