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リンダ・グラットン『ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる 働き方の未来図<2025>』

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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉


10年後にはどんな働き方をすることになるのか、を語る本。どんどん変わっていく世界だからこそ、固定観念を問い直さなければならない、というもの。
3つのシフトを!ということで挙げられているのは、

  1. ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
  2. 孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
  3. 大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

ということですね。まあでも、僕は働き始めて10年ちょっとだけど、その間でも働き方はまったく変わっているわけで、どんどん会社の枠を超えて、ソーシャルを使って新しい人とつながって、働いて、持っている知恵を与え合って…というのができるようになっていて、楽しいよなあ。
教育業界にいるということは、10年後や20年後に社会に出て夢を叶えたり家庭をもったりする子どもたちを相手にした仕事なわけで、2025年にはどんな社会になっているかを考えて、そこで役立つものを提供したいと思うよね。これは、SFCに入学してすぐに、「君たちは未来からの留学生なのだから、未来がどんな世界になっているかをきちんと理解し、そこで必要なことを学んで卒業しろ!」と言われたのと同じ。今でも仕事の中ではときどき引用する言葉です。
ものすごく「おお!」と思うことはないけれども、いろいろと考えるきっかけが多く、刺激的な本です。
以下、メモ。

p.26-27
未来に押しつぶされない職業生活を築くために、どのような固定観念を考える問い直すべきなのか?
3つの面での常識の<シフト>が必要:

  1. ゼネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直すべき
  2. 職業生活とキャリアを成功させる土台が個人主義と競争原理であるという常識を問い直すべき
  3. どういう職業人生が幸せかという常識を問い直すべき

p.68
変化に押しつぶされないためにすべき例として挙げられた<シフト>

  1. 広く浅い知識しかもたないゼネラリストから、高度な専門技能を備えたスペシャリストへの<シフト>
  2. 孤独に競い合う生き方から、ほかの人と関わり協力し合う生き方への<シフト>
  3. 大量消費を志向する

p.34-61
未来を形作る5つの要因

  1. テクノロジーの変化
    • テクノロジーが飛躍的に発展する
    • 世界の50億人はあインターネットで結ばれる
    • 地球上のいたるところで「クラウド」が利用できるようになる
    • 生産性が向上し続ける
    • 「ソーシャルな」参加が活発になる
    • 知識のデジタル化が進む
    • メガ企業とミニ起業家が台頭する
    • バーチャル空間で働き、「アバター」を利用することが当たり前になる
    • 人工知能アシスタント」が普及する
    • テクノロジーが人間の労働者に取って代わる
  2. グローバル化の進展
    • 24時間・週7日休まないグローバルな」世界が出現した
    • 新興国が台頭した
    • 中国とインドの経済が目覚ましく成長した
    • 倹約型イノベーションの道が開けた
    • 新たな人材輩出大国が登場しつつある
    • 世界中で都市化が進行する
    • バブルの形成と崩壊が繰り返される
    • 世界のさまざまな地域に貧困層が出現する
  3. 人口構成の変化と長寿化
    • Y世代の影響力が拡大する
    • 寿命が長くなる
    • ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える
    • 国境を越えた移住が活発になる
  4. 社会の変化
    • 家族のあり方が変わる
    • 自分を見つめ直す人が増える
    • 女性の力が強くなる
    • バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える
    • 大企業や政府に対する不信感が強まる
    • 幸福感が弱まる
    • 余暇時間が増える
  5. エネルギー・環境問題の深刻化
    • エネルギー価格が上昇する
    • 環境上の惨事が原因で住居を追われる人が現れる
    • 持続可能性を重んじる文化が形成されはじめる

p.78-85
時間の細切れ化が進み、時間に追われることの弊害

  1. 専門技能を磨きにくくなる。
    • ものごとに集中して取り組む時間が失われる。10000時間は修得にかかる(心理学者ダニエル・レヴィティン)
  2. 観察と学習の機会が失われる
    • 仕事の作業の手を休めて、自分より高度な技能の持ち主の振る舞いを観察する時間もなくなる。
    • 自分の技能を高めるためには、達人たちの仕事ぶりを観察し、自分との細かな違いを知ることが不可欠だ。
  3. 気まぐれと遊びの要素が排除される
    • 遊び心と遊びの要素が犠牲になってしまう。

p.93-94
時間に追われる未来を迎えないために、3つのシフトを成し遂げることが効果的だ:
<第一のシフト>

  • 専門技能の習熟に土台を置くキャリアを意識的に築くこと。一つのものごとに集中して本腰を入れることが出発点になる。

<第二のシフト>

  • せわしなく時間に追われる生活を脱却しても必ずしも孤独を味わうわけではないと理解することから始め、自分を中心に据えつつも、ほかの人たちとの強い関わりを保った働き方を見いだすこと。

<第三のシフト>

  • 消費をひたすら追求する人生を脱却し、情熱的になにかを生み出す人生に転換すること。

p.127
<第二のシフト>のために、3つのタイプの人的ネットワークを積極的に築いていく必要がある:

  1. ポッセ(同じ志をもつ仲間)をもつ。いざというときに頼りになり、長期にわたって互恵的な関係を築ける少人数のネットワークである。
  2. ビッグアイデア・クラウド。多様性に富んだ大人数のネットワーク。
  3. 自己再生のコミュニティ。頻繁に会い、一緒に笑い、食事をともにすることにより、リラックスし、リフレッシュできる人たち。

p.185
賢い群衆:
アメリカの物理学者フィリップ・アンダーソンの「量は質の変化を生み出す」ということ。世界の50億人が結びつき、能動的に活動すれば、過去の延長線上にない画期的なアイデアが誕生し、集積効果を通じて、新しいものごとの創造と共有が前例のないレベルまで進む。

p.232-235
仕事の世界で必要な三種類の資本:
第一の資本
知的資本=知識と知的思考力。学校教育で養うもの。
第二の資本
人間関係資本=人的ネットワークの強さと幅広さ。
第三の資本
情緒的資本=自分自身のいついて理解し、自分のおこなう選択について深く考える能力、そしてそれに加えて、勇気ある行動を取るために欠かせない強靭な精神をはぐくむ能力。

p.287-288「
ここで取り上げた家具職人やソフトウェアプログラマー、物理学者、映画制作スタッフに共通するのは、自分のつくり出した作品に自分の刻印を押していることだ。それにより、ほかの人たちに自分の業績を知らしめ、自分の評判を管理できる。評判づくりとナルシシズムは、似て非なるものだ。魅力的な個人ブランドを築きたいと思うことは、ナルシシズムの表れではない。評判管理はビジネスの世界で不可欠になるのだ。
ただし、未来の世界で個人ブランドを築くためには、「私って、こんなにすごいんです!」と大声で叫んで歩くだけでは十分でない。(略)魅力的な個人ブランドを築いて大勢の人たちとの差別化を図り、その個人ブランドに信憑性をもたせることが欠かせない。職人にせよ、プログラマーや物理学者にせよ、まずは質の高い仕事をし、そのうえで自分の高い異質を世界に向けてアピールする必要があるのである。」

p.305-306
ポッセに関して重要な点は3つだ:

  • ポッセは比較的少人数のグループで、声をかければすぐ力になってくれる面々の集まりでなくてはならない。また、メンバーの専門技能や知識がある程度重なり合っている必要がある。専門分野が近ければ、お互いの能力を十分に評価できるし、仲間の能力を生かしやすい。
  • ポッセのメンバーは以前一緒に活動したことがあり、あなたのことを信頼している人たちでなくてはならない。知り合ったばかりの人ではなく、あなたのことが好きで、あなたの力になりたいと思ってくれる人であることが重要だ。
  • 充実したポッセを築きたければ、ほかの人と協力する技能に磨きをかけなくてはならない。他人に上手にものを教え、多様性の強みを最大限生かし、たとえバーチャルな付き合いでもうまくコミュニケーションを取る技能が不可欠だ。

p.333「
未来の世界で自己再生のコミュニティの土台をなす要素の多くを、キケロがすでに指摘しているように、私には思える。友人関係は自然に生まれるものではなく、エネルギーと時間を意識的につぎ込まなければ成り立たないこと。活力源となる友人関係の核をなすのが関心と価値観の共有であること。キケロは、こうした点を2000年以上前に指摘していた。自分と似た人としか友達といなれないというのではない。友情が花開くためには、関心と経験を共有している必要があると、キケロは言いたいのだ。友情は、関心と経験の共有という土台の上に生まれて、相互の善意と愛情、対話の深まりを通じて強化されていく、というのである。」