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藻谷浩介『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)


エビデンスに基づいてものごとを考える、印象に流されないで考える、ということの大事さを教えてくれる本。(経済的な読み方してないかもね・笑)でも、とても勉強になりました。

ここでご紹介した小売販売額や課税対象所得額、あるいはこの先で使う国勢調査のような、確固たる全数調査の数字は、現場で見える真実と必ず一致しますし、お互いの傾向に矛盾が出ません。一致しないのは、得体のしれない世の空気だけです。こういう空気というのは、数字を読まない(SY)、現場を見ない(GM)、空気しか読まない(KY)人たちが、確認もしていない嘘をお互いに言い合って拡大再生産しているものです。(p.69)

そんな感じになっちゃっているから、ダメなのだ、ということを淡々と説明されます。

「生産年齢人口減少」と「高齢者激増」の同時進行を、「少子高齢化」というズレた言葉で表現する習慣が、全国に蔓延しています。ですが「少子高齢化」というのは、少子化=子供の減少と、高齢化=高齢者の激増という、全然独立の事象を一緒くたにしているとんでもない表現であり、「子供さえ増やせば高齢化は防げる」というまったくの誤解の元凶にもなっています。さらには最も重大な問題である「生産年齢人口減少」を隠してしまってもいますね。(p.96-97)

もっとも重大な問題を覆い隠すなんとhなしの世の空気。もちろん、それに大きく影響を与えるマスコミやメディアなど。それらに流されずにきちんと情報を読める、冷静に判断できる人を育てるカリキュラムを作らなくては。本筋の経済だけではなく、そんなことを考えさせられました。
以下、メモ。

p.48-49「
今の不景気を克服してもう一回アジアが伸びてきたときに、今の日本人並みに豊かな階層が大量に出現してきたときに、彼らがフランス、イタリア、スイスの製品を買うのか、日本製品を買うのか、日本の置かれている国際競争はそういう競争なのです。フランス、イタリア、スイスの製品に勝てるクオリティーとデザインとブランド力を獲得できるか、ここに日本経済の将来がかかっています。
車でいうと、中国のメーカーに勝つとか、インドのナノに対抗して安い車を出すとかそういう話ではない。海外市場ではBMWやベンツにも十分伍していますが、その先のフェラーリに勝てるかということです。不動産開発でいうと、ドバイの超高層開発に勝つのではなくて、パリの街並みよりも資産価値の高い中低層の街並みを東京や大阪につくれるかということが本当の勝負です。(略)100年後も200年後も文化的価値を放ち続け商業を引き寄せる都市インフラ、日本で言えば京都の東山周辺みたいなものをつくれるか、そこに世界中の金持ちの上品な投資を呼び込めるか、これが日本の課題です。」

p.69「
ここでご紹介した小売販売額や課税対象所得額、あるいはこの先で使う国勢調査のような、確固たる全数調査の数字は、現場で見える真実と必ず一致しますし、お互いの傾向に矛盾が出ません。一致しないのは、得体のしれない世の空気だけです。こういう空気というのは、数字を読まない(SY)、現場を見ない(GM)、空気しか読まない(KY)人たちが、確認もしていない嘘をお互いに言い合って拡大再生産しているものです。」

p.96-97「
「生産年齢人口減少」と「高齢者激増」の同時進行を、「少子高齢化」というズレた言葉で表現する習慣が、全国に蔓延しています。ですが「少子高齢化」というのは、少子化=子供の減少と、高齢化=高齢者の激増という、全然独立の事象を一緒くたにしているとんでもない表現であり、「子供さえ増やせば高齢化は防げる」というまったくの誤解の元凶にもなっています。さらには最も重大な問題である「生産年齢人口減少」を隠してしまってもいますね。」

p.124
80年代の住宅バブルについて
・顧客の中心がわずか3年間に出生の集中している団塊世代である以上、需要の盛り上がりは短期的であることは明らかだった。
・ところが、当時の住宅業界、不動産業界、建設業界は「景気がいいから住宅が売れている」と考える。

実際は逆で、「団塊世代が平均四人兄弟で、かつ親を故郷に置いて大都市に出てきている層が多いため、一時的ながら大都市周辺での住宅需要が極めて旺盛になり、おの波及効果で景気が良くなった」ということだった。

この団塊世代が住宅を買い終われば、日本史上二度と同じレベルの住宅需要は発生しない。

p.168-169「
「常に正しい」三面等価式を持ち出すとは、何やら神聖不可侵な雰囲気ではありますが、残念ながら日本経済の現場にはもっと俗っぽい現実があります。繰り返しお話ししてきた、生産年齢人口=消費者人口の減少→供給能力過剰→在庫積み上がりと価格競争激化→在庫の時価の低下(在庫が腐る)という現象です。その結果発生した消費者余剰は、高齢者が老後に備えて確保する極めて固定制の高い貯蓄(=将来の利用福祉負担の先買いという一種のデリバティブ購入)という形で「埋蔵金」化してしまい、経済社会に循環していません。腐った在庫は最終的には叩き売られて企業収益を下げています。こういう現実を、「常に正しい」三面等価式ではどう説明するのでしょうか。」

p.177-178「
では日本経済は何を目標にすべきなのでしょうか。「個人消費が生産年齢人口現象によって下ぶれしてしまい、企業業績が悪化してさらに勤労者の所得が減って個人消費が減るという悪循環を、何とか断ち切ろう」ということです。

1.生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう
2.生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やそう
3.(生産年齢人口+高齢者による)個人消費の総額を維持し増やそう

この123が目標になります。もちろんこれらが実現できれば結果として経済成長率も改善しますので、これら目標は経済成長率に関する日本の国際公約とも矛盾しないものです。ですが、逆が起きるとは限りません。経済成長率を何か別の方法で上げたとしても、123は達成できなのです。」

p.190-191
出生率上昇」では生産年齢人口減少は止まらない

出生率は出生者数を増減させる2つの要因の1つにすぎません。もう一つ、出産適齢期の女性の数の増減という絶対的な制約要因があるのです。そしてこれは20~40年前の出生者数がそのまま遅れて反映されるものであるために、後付けでいじることはできません。

出産適齢期の女性の数は、今後20年間で少なくとも三割程度、40年間には半数近くまで減少してしまう。

p.229「
それではお聞きしますが、日本で一番出生率が低い都道府県はどこでしょう。東京都ですね。それでは東京都は、女性は、女性の就労率が高い都道府県だと思いますか。低いと思いますか。高いと思いがちですよね。でも事実は違います。東京は通勤距離が長い上に金持ちが多いので、全国の中でも特に専業主婦の率が高い都道府県なのです。逆に日本屈指に出生率の高い福井県や島根県、山形県などでは、女性就労率も全国屈指に高いのですよ。」

p.230
相関関係というのは因果関係ではない。

p.233「
よく誤解されるのですが、「出生率を上げるために女性就労を促進しろ」と言っているのではないですよ。「内需を拡大するために女性就労を促進しましょう。少なくともその副作用で出生率が下がるということはないですよ」と言っているのです。」