大津由紀雄編『小学校での英語教育は必要ない! 』
- 作者: 大津由紀雄
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2005/05/28
- メディア: 単行本
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日本では中学校から大学まで10年間英語を勉強するけど、まあ英語を話せる、という人は少ない。だから小学校からやりましょうということになって、今は5年生と6年生で義務化されたわけですけど、ただやりゃいいってもんじゃないだろう…と思わずにいられないのですよね。英語はただのツールであって、語るべき中身がなければいくらペラペラでも意味なんてないわけで。
いろいろな側面から「小学校での英語って、必要なくない?」ということを考えてみる本。目次を見るだけでも十分おもしろい。認知学習論の今井むつみ先生の、言語学習の臨界期とか言うならば小学校じゃ遅すぎるし、そもそも「世界の人が耳を傾けるに足る内容の技能・知見を持つ人間を教育する」ことが目標じゃないの?という言葉に同意。
あとは、多言語共生社会における言語教育について述べられていた、山川智子先生の「ヨーロッパにおける言語教育政策の検討結果を、安易に日本社会の問題に平行移動させることに警鐘を鳴らしながら、他者を理解する目を養うために、言語の多様性に気づかせる必要があると論じる。それが問題解決能力の育成につながり、その能力こそ中学校期以降の英語学習の動機付けになると主張」されている点も、勉強になる。
その他にも読んでおくべきポイント多数でした。非常に勉強になりました。
- 今井むつみ「認知学習論から考える英語教育」
- 言語学習の臨界期説をさまざまな角度から検討。そのうえで、真の国際人を育成するための英語教育の目標は、「世界の人が耳を傾けるに足る内容の技能・知見を持つ人間を教育する」ことにあると論じる。
- 内田伸子「小学校一年からの英語教育はいらない 幼稚園~児童期の「ことばの教育」のカリキュラム」
- 大津由紀雄「小学校での言語教育 「英語教育」を廃したあとに」
- 英語教育と「国語」教育の連携という視点だけでは捉えきれない「メタ言語能力」という概念を導入し、それを育むための言語教育を提言する。
- 山川智子「多言語共生社会における言語教育 多様な言語への気づきをきっかけに」
- ヨーロッパにおける言語教育政策の検討結果を、安易に日本社会の問題に平行移動させることに警鐘を鳴らしながら、他者を理解する目を養うために、言語の多様性に気づかせる必要があると論じる。それが問題解決能力の育成につながり、その能力こそ中学校期以降の英語学習の動機付けになると主張する。