古賀茂明『日本中枢の崩壊』

日本中枢の崩壊

日本中枢の崩壊


まあ、賛否両論、いろいろあるのでしょうが…。それにしてもこういう意見を持つ官僚が、きちんと仕事をさせてもらえない、っていうのは悲しい国だよなあ。巻末に東京電力の処理策が内緒で転載されているのだけど、こんなにしっかりしたのが官僚の中からあがっているのに、なんでこんな後手にまわった対応になるのか…。システムが悪いとしか思えないじゃないか…。
いわゆるキャリア官僚の人には、何人か会ったことがあるのだけど、みんなとっても国のことをしっかり考えている人たち。「国を変えたい」と本気で思ってるし、できることをいろいろと実際に考え、忙しい中でベストを尽くしている人たち。それがどうして正当に評価されなくて、ちゃんとやろうと思うとできなくて、国民の得になってない…。しかも官僚バッシング。
もう、民間でも優秀なチームを作って、政権が変わるときにはブレーンをがっつり連れて官邸に入るようにしようよ、アメリカみたいに。小泉政権のときにあった、竹中・飯島両氏がブレーン体制を、しっかり作れるように、民間からも優秀な人をどんどん送り込もう。そのために、国に希望が持てるように、教育をやろう。僕がやりたいのは、僕が役に立てるのは、たぶんあるとすれば、そこだ。
以下、メモ。

p.314-315「
仮に菅総理が、
「これからはビジネス、ビジネスで行こう。国民みんなで金儲けしようではないか。そこらじゅうにチャンスは転がっている。日本にはこんなに高い先端技術がある。優秀な人材もいる。使い切れていないカネもまだまだある。みんなが思い切り活躍できるように、政府は聖域なき改革に邁進する。だから、自信を持ってみなさん一人ひとりがチャレンジしてもらいたい。そして、企業はたくさん稼いで、働く人は給料をたくさんもらおう。株にも投資して、さらに資産を増やそう!もし、挑戦してそれで倒れたときは政府が責任を持って助ける」
と力説し、「最大幸福社会」の構築を目指すとぶちあげれば、国民の意識が変わっていただけではなく、世界も日本を見直していただろう。政治が内向きで、しかも混乱し、世界を見ていないのでは、国民の意識も変わりようがない。
(略)
東日本大震災が日本人の心理に与える影響について、ロンドンの『エコノミスト』誌は次のようにいっている――日本人はこの震災を機に、自らの対応能力と世界から寄せられる畏敬の念によって自信を取り戻すかもしれない、と。われわれはこの期待に応えられるような社会を作らなければならない。」

p.334-335「
以下は、ある中国人経営者が私にいった言葉である。
「日本人は中国人には勝てない。なぜなら、日本では管理職や経営者までが汗を流すこと、会社に拘束されることが美徳だと思っているからだ」
「いかに頭を使うか。いかに人と違うやり方を考えるか。いかに効率的に答えを見つけるか。いかにスピーディに決断し行動するか。それが経営者の競争だ」
「労働者に生きがいを与えて一生懸命働かせるために、『汗水たらして働くことが尊い』と教えるのは当然だが、経営者が同じことをしていたら競争に負ける。労働者の生活も結局は良くならない。中国人と同じ給料で働けということになる」
「日本人は何をするにもみんなで寄り集まって夜まで議論して結局決まらない。中国の経営者は即断即決。いかに効率的に儲けるかを考えている。これでは日本は勝負にならない。経営が悪いから、日本の労働者は、一生懸命働いてもどんどん生活を切り下げるしかなくなるのだ。ただ働くことが尊いという考えからいつ抜け出せるかが日本復活の鍵だ」
中国は、いまは先進国モデルを追いかければ良い時代。ただモノマネをして働けば成長できる段階にある。しかし、その中国人に、日本人は頭を使うことより手足を動かすこと、拘束されることを優先しているといわれている。」

p.353「
東日本大震災ではユニクロの柳井正氏が10億円、楽天の三木谷浩史氏も10億円、そしてソフトバンクの孫正義氏が100億円という巨額の義援金を寄付した。しかし、既存の大富豪といわれる人たちが、そうした巨額の寄付をしたという話を聞かない。若手のベンチャー経営者のなかには、現地に入って支援活動を行った人もいると聞く。
「売名行為」などという人もいるが、そう批判する人たちは、自分ではいったい何をしたというのか。たくさん稼いでたくさん使う。それだけでも十分、所得税や消費税で貢献している。さらに個人で社会貢献をしてもらえれば、これほどすばらしいことはない。
もう金持ちを妬んだり敵視したりするのを止めて、日本経済を引っ張ってくれる新たな産業の担い手たちに一切足かせをはめず、自由に活躍してもらおうではないか。妬みの文化では、国民全員がジリ貧の方向に行くしかなくなる。」

p.353-354「
これからの政治に一番重要なのはリーダーシップだとよくいわれる。私も総理のリーダーシップこそがこの国を変えると思っている。
菅総理は「最小不幸社会」といった。「最小」と「不幸」。ネガティブな言葉を重ねたメッセージが若者にどう響いたか。「元気を出してがんばろう」とはならない。「なんとか不幸になるのを避けよう」「安全な道を選ぼう」となるだろう。「『できる人は損する』という感じかな」とある若者は私につぶやいた。
オバマ大統領が「Yes」と「Can」という肯定の言葉を重ねて「Yes We Can」といったとき、若者は「よし、挑戦しよう」と呼応したのではないか。
リーダーシップと一口にいっても、様々な要素があるが、とくに今後、国のトップに求められるのは、国民を説得する力だ。」

p.360
東京電力の処理策
#こんなにしっかりしたのが官僚の中からあがっているのに、なんでこんな後手にまわった対応になるのか…。システムが悪いとしか思えないじゃないか…。