読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

橋本武『灘校・伝説の国語授業 本物の思考力が身につくスロ-リ-ディング』

books

灘校・伝説の国語授業 本物の思考力が身につくスロ?リ?ディング

灘校・伝説の国語授業 本物の思考力が身につくスロ?リ?ディング


中勘助『銀の匙』を3年間かけて読み込みながら、あちこちに脱線していきつつ、でもそれを教養として厚みのある知識や知恵や伝統などを身につけさせたい、という感じの授業なのだろうな、と読んだ。こうして文献を使う授業って、何を選ぶかによって全然違うけれども、たしかに新聞連載だったものだから分量も適度だし、散文的で寄り道しやすい、というのはあるよなあ。
スローリーディングのポイントとして、1.寄り道する、2.追体験する、3.徹底的に調べる、4.自分で考える、というのが書かれているのですが、これは家庭の本の読み方とか読み聞かせとか、一緒に何かを調べる時にも使えるメソッドかな、と思ったり。あと、もともとついていない各文にタイトルをつけなさい、というのはいいね。
ちなみに、灘は中学高校の6年間、担任が持ち上がるので、橋本先生に国語を習うのは1/6ってこと。黒岩祐治・現神奈川県知事も教え子だそうですね。

p.17-18「
薄い文庫本を3年かけて読み解く。
こんな授業をやろうと思った背景には、「自分が中学生だったとき国語の授業で何を教わったのだろうか?」という自問がありました。
私は、この自問に対して何も応えられないことに、愕然としたのです。
生半可なことでは、生徒の心に何も残すことができない。何かひとつでもいいから、子どもたちの心に生涯残るような授業をしたい――。この想いの末にたどり着いたのが、この方法でした。」

中勘助『銀の匙』を選んだ理由:
1.主人公は十代の少年であり、生徒たちが自分を重ね合わせて読みやすい
2.夏目漱石が激賞したほど日本語が美しい
3.明治期の日本を緻密に描いており、時代や風俗考証の対象になりやすい
4.新聞連載であったため、ひとつの章が短く授業で取り扱いやすい
5.やや散文的に書かれているため寄り道しやすい

p.20
スローリーディングのポイント:
1.寄り道する
2.追体験する
3.徹底的に調べる
4.自分で考える

p.32-33「
このように自分で考えることを大事にしていたのですが、そんな力を大きく伸ばしたであろうもうひとつの作業が文章の要約です。
『銀の匙』の各章を200字でまとめるのですが、最後のマル(句点)を必ず最後のマス目に入れるという約束を決めていました。
要約というのは、文章の要旨を変えずに圧縮する作業なので、まず文意を正確に把握する訓練になる。また正確に200字で表現するためには、言葉一つひとつに敏感にならざるを得ません。一文字足りないから、この漢字を平仮名にしよう。こういった作業を繰り返すことは、語彙力の向上にも必然的に結びついていきます。
こうして『銀の匙』の授業を通して自分で考える機会を幾度となく持ってきた生徒たちは、最後に自分の『銀の匙』を書き上げます。
つまり自分史に取り組むわけですが、みんな個性豊かな『銀の匙』を立派に書いてくるのです。
これも、自分で考えるということを課してきた成果であると思っています。」

p.34-36
スローリーディングで身につく力
1.語彙が増える
 →ひとつの言葉にちゅうもくして、似た言葉を集めるというのが、よくある「寄り道」例。こうした経験が語彙を増やす。
2・自分で考える力がつく
 →各章にタイトルをつけるなど、随所に「自分で考える」課題がある。
3.文章力が向上する
 →各章の授業を終えるたびに200字に章の内容を要約する課題で、文章を綴る能力を高める訓練に最適。
4.記憶力がアップする
 →さまざまな記憶遊びなどもあり、記憶力を伸ばす。
5.調べる力がつく
 →楽しく徹底的に調べることをさせる。先生も、徹底的に調べる。
6.言葉に敏感になる
 →思いがけない言葉からの寄り道を何度も体験することで、言葉の重要性、意味に敏感になる。
7.読み解く力が強くなる
 →主人公の行動を追体験することは、子どもたちの感情移入度を高める。自然と物語の世界に没入できるようになる。
8.好奇心が刺激され、学ぶことが楽しくなる
 →「遊ぶ」ように「学ぶ」ことが、子どもたちにもたらす影響は計り知れない。