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兼原信克『戦略外交原論』

戦略外交原論

戦略外交原論


日経新聞の読書欄で紹介されていて、そういえば「外交」っていうのも良いケーススタディになるだろうか、と思って読んでみた。

フランスのナポレオンは、当時、英国を除けば欧州最強であったフランスの国力と偉大な軍事的才能をもってフランス革命の理念の普及に努めたが、敗退した。しかし米国は、20世紀の後半、軍事力、経済力、政治力のいずれをとっても比類のない国力を手にし、自らの政治的理念をもとにして、国際社会の構築に乗り出した。国際連合の集団安全保障体制、国連による国際法の法典化、国際司法裁判所国際通貨基金、世界銀行、世界貿易機関など、多くの戦後の国際機関は、米国の生み出してきたものである。
人類が始まって以来、国際社会全体を包み込む規模で国際社会を構築しようとしたのは米国が最初である。建国後わずか200年の米国が、第2次世界大戦後、突出した国力を持っていただけではなく、地球社会を構想する力をも持っていたことは、特筆に値する。(p.26-27)

おお、たしかにそうだな、と納得し、やっぱり覇権を握る国の構想力って必要だなあ、と思うわけです。構想力がない国に覇権とか握られても困るし。

p.80「
外交の実務に携わる者が、最も高いプライオリティをもって常に心にとどめておかねばならないことは、地球的規模の、少なくとも域内の権力均衡が、自分に有利なかたちで安定するように計らうということである。逆に言えば、少なくとも自分に敵対する勢力が、自分に不利なかたちで権力関係を崩し、圧倒的な優位を確立しないようにするということである。」

p.110-111「
ちなみに日本政府は、敗戦から1964年の東京オリンピックまで、ほとんど借金をしていない。65年からバブル経済崩壊の95年までに200兆円の借金をした。それは、高度経済成長のインフラを整えるために必要な投資であった。しかし、バブル崩壊後の96年から今までに400兆円の借金をし、地方の借金を加えると総額で860兆円の額に上る。これはGNPの2倍に相当し、国民の金融資産の大部分に相当する。」

p.118「
民族の記憶を消し、その伝統や価値観を消すことも、やはりジェノサイドである。実際に、ジェノサイド条約にはそのような定義がある。例えば、特定民族の子供を隔離して他民族の中に放り込み、そこで思春期を過ごさせて民族の記憶を消すことも、ジェノサイドとされる。」

p.173「
戦間期の欧州における平和主義は、第2次世界大戦の勃発を防止することはできなかった。その理想を打ち砕いたのは、他ならぬナチス・ドイツと日本の軍国主義である。その日本が、方法論、制度論に裏打ちされない精神的な平和主義を唱えても、彼らにとっては何の説得力もないのである。」