山田真一『エル・システマ 音楽で貧困を救う南米ベネズエラの社会政策』

エル・システマ―音楽で貧困を救う南米ベネズエラの社会政策

エル・システマ―音楽で貧困を救う南米ベネズエラの社会政策


音楽で貧困を救う、という施策をとっているベネズエラの「エル・システマ」という仕組みを紹介。おもしろい。貧困層に「楽器を使う」勉強をさせることが、どれだけ大変かというのは容易に想像できる。「楽器の練習よりも働けよ」ってなったり、そもそも楽器の練習をさせるということのノウハウもない。そんな状態でオーケストラを頂点とするシステムを作り上げるのは、いろいろな設計が背後にあったから。出口として、オーケストラを自前で持ち、そこで活躍することで身を立てることができるようにする。楽器の練習方法についても方法論としてスズキ・メソードを日本から導入。
音楽であろうと映画であろうと、なんでもかまわない。貧困を救うためのひとつのアプローチとしてこういうのが出てきて、成功を収めているというのは、明るいニュースだと思ってます。
以下、メモ。

p.11-13
エル・システマの挑戦:
1.芸術は社会に本当に役立つのか
2.反ネオ・リベラリズム反グローバリズムの社会政策
3.途上国で本物の芸術が可能か

p.138-139「
スマトラで生まれたことや、戦争中の困難な環境でヴァイオリンを勉強したことから、小林(武史)は、途上国の「助けになることをやってみたい」という信念を持った。特に、「戦争中、日本がアジアでやってきたことを考えると、日本人として何かする義務がある」というのが小林の考えだった。

p.142
スズキ・メソードの原理:
外国人には難しいある国の言語が、なぜその国の幼児には習得できるのか。母国語習得のステップは、楽器技術の習得にも当てはめられるのではないか?
#ワールド・ファミリーの英語とかも同じこと言ってますな。

鈴木鎮一「人の能力というものは、どこへでも育て方に応じて伸びてゆくものであり、子どもの場合、その能力がまず言葉の部門においてその発育成長を示したにすぎない」。したがって「人の能力は、かくすれば立派に育つものであるという道」を明らかにできる。

スズキ・メソードの基本指導方法
1.平易なことを立派にできるようになるまで育てる。
2.難しくなってゆくことを、少しも子どもに感じさせぬよう、自然に程度を進めていく。

スズキ・メソードの学習原理:
1.真似=最初は詩歌を覚えるように復誦。
2.認識=その意味を理解させる。
3.能力の発揮=自分でその内容を伝達したり、応用して使えるようにする。

p.164「
エル・システマの場合も、音楽という協同作業、協調性を育てるという点で、いきなりオーケストラに入らずとも、合唱に参加することで、十分その目的の代替となることが、スズキ・メソードのおかげで、理解されていった。