読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ダニエル・ギルバート『幸せはいつもちょっと先にある 期待と妄想の心理学』

幸せはいつもちょっと先にある―期待と妄想の心理学

幸せはいつもちょっと先にある―期待と妄想の心理学


心理学的な描写が専門的で、さまざまな学説や実験結果を紹介してある。「期待と妄想」っていうのは、行動経済学との関連するところだし、「悪い状況からは撤退しにくく、良い状況からは早めに撤退する」というような心理(株やギャンブルの損切りの難しさ)とかとも繋がる部分。専門的な部分については、そう大きく知らずともよいので、授業でネタとして使えそうな考え方の錯覚というか騙しのゲームをいくつかメモ。

p.31

前頭葉損傷の患者は知能検査や記憶検査などでは標準的な成績を収めるが、計画性がかかわる検査ではどんなに単純なものでも重度の障害を示した。たとえば、最初の行動を起こす前に全体の動きを見とおしておかなければ解けない迷路やパズルを課されると、ほかの点では知的な人たちが途方にくれた。計画性の障害は、実験室の中だけの問題ではない。患者たちは、こぼさずにお茶を飲んだりカーテンについておしゃべりしたりするような日常場面なら支障なくこなせたが、午後にこのあと何をする予定かきかれると、まずまちがいなく答えられなかった。


p.32

「不安」と「計画」を結びつける概念は何か。そう、どちらも未来について考えることと密接に関係している。われわれは、何か悪いことが起こりそうだと予期して不安になり、自分の行動をこれからどう展開するか想像して計画をたてる。計画するには未来を読まなければならず、不安感はそれに対する反応の一つだ。前頭葉の損傷によって計画性と不安感がまさに狙ったように低下することから、前頭葉は、正常な現生人類の大人が未来に自分を投影するのに、不可欠な脳の装置だと考えられる。


p.113-114
出来事のあとで得た情報が出来事の記憶を改変する:
1.記憶行為には、保存されなかった細部の「穴埋め」が必要である。
2.穴埋めは苦もなく瞬時におこなわれるため、われわれはたいてい、その穴埋め作業に気づかない。穴埋め現象はとても強力で、阻止できない。

・試しに、次の単語リストを読んで、すぐにリストを手で隠す:
ベッド 起きる いびき 休息 いねむり 昼寝
目覚め 毛布 平安 疲れ うたた寝 あくび
夢 まどろみ 睡魔

・次の単語のうち、リストにないのはどれか?
ベッド うたた寝 眠る ガソリン

・正解は、
「ガソリン」だけでない。「眠る」も。
たいていの人は、リストに「ガソリン」がないことはわかっても、「眠る」はあったと誤って記憶している。
リストの単語がどれも密接に関連しているため、脳は読んだ単語を一つ一つ保存するかわりに、要点だけ(「眠りに関係する単語の集まりだな」)を保存したのだ。


p.139-140

欠如しているものや「○○でないもの」について考えられないせいで、われわれはかなり奇妙な判断をすることがある。30年ほど前におこなわれたある研究では、アメリカ人に、セイロンとネパール、西ドイツと東ドイツという2つの組み合わせのうち、互いの国がより似ているのはどちらか尋ねた。ほとんどの人が東西ドイツのほうを選んだ。ところが、似ていない国の組み合わせがどちらか尋ねても、ほとんどのアメリカ人は同じく東西ドイツを選んだ。一方の組み合わせのほうがもう一方の組み合わせより似ていて、同時に似ていないことがありうるだろうか。もちろんありえない。しかし、二国が似ているかどうかを判断するよう求められると、人は類似点(国名をはじめ、東西ドイツにはたくさんある)を探そうとし、類似点でないものを無視する。二国がちがっているかどうかを判断するよう求められると、相違点(政治体制をはじめ、東西ドイツにはたくさんある)を探そうとし、相違点でないものを無視する。