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遠藤克弥・田部井潤 編著『道徳教育をまなぶ』

道徳教育をまなぶ―21世紀を生きる子どもたちのために

道徳教育をまなぶ―21世紀を生きる子どもたちのために


仕事で道徳教育のカリキュラムを開発しようという企画があり、そのためのリサーチの一環として読了。「道徳」って授業としては何をやっていたかあまり覚えていない教科。学校ごとに任されていたりしたしね。指導要領とか読んでみると、「こんなことしてねー」とツッコミを入れたくなること間違いなし(笑)
いろいろと参考文献も出ていたり、実践事例集なども出ているようなので、1回時間をしっかりとってあたりたいところです。
以下、詳細。

p.45

わが国の学校教育には、「道徳」の時間が特設されている。しかし、大学生に「道徳」の時間のイメージを尋ねてみると、「話し合いの時間」「“いい事”を言う時間」「教育テレビの時間」といった授業活動にかかわるもの以外に、「得にすることなしの時間」「(勉強と違うから)楽な時間」「何の時間かわからない時間」等の教育目的のアイマイさを示す回答が出てくる。多くの人の記憶には、なんとなく説教がましくて徳目主義的な時間・・・くらいの位置づけでしか残っていないというのが実情ではないだろうか。


p.76-79
国際化時代に求められる資質:
・対人関係能力
 直接的なコミュニケーション能力、自己表現能力、人間関係づくりと維持能力
・異質なものの承認、受け入れ、尊重
 異なったもの相互が、相違を理解し受け入れ、尊重しあうことが求められる
・問題解決能力
 昨今の若者が問題状況の発生を避ける傾向にあるため、問題解決能力が低いといわれる
・平等と公平の問題
・寛容さ、正しい妥協の仕方
 他との摩擦を寛容に受け止め、話し合いでトラブルを解決する
・人道主義的見解と対応
 生命に対する畏敬の念、人と視点の道を優先し、互いにいたわり、助け合う精神
・自立性、自主性


p.81
平和教育
学習指導要領には、「国際的な視野に立って、世界の平和と人類の幸福に貢献する」という項目がある。が、そう取り組みが進んでいるわけではない。

1999年5月 ハーグ平和会議:「平和教育なくして平和なし」
2001年から10年間が、国連の「世界の子どもたちのための平和と非暴力の文化国際10年」となった。


p.108
人間が道徳的に教育されるための前提条件(ウィルソン):
1.子どもが家や学校で情緒的に安定していること
2.一定の習慣、「道徳的訓練」を教え込むこと、そして安定感を増し不安を少なくするために規則やしつけの明確な枠組みを提示すること
3.言語的スキルや概念の理解を発達させること、つまり、話したり、コミュニケーションの能力を発達させること
4.他の人びとへ情緒的関わりをもてるような子どもの能力
5.ゲームのような規則が支配する活動に参加する子どもの能力-規則の要点を把握する能力


p.109-110
学校教育の中で道徳の育成に際して行われている活動の事例に関する項目(ウィルソン):
1.学校の社会的構造や子どもと先生との関係
2.道徳教育という概念が学校関係者によって適切に理解されること、そしてその課題は責任をもって引き受けられることを確認すること
3.教育者と生徒が親密なコミュニケーションをはかれるように、どんなものであれ、必要とされる基本的な手はずを整えること
4.拘束を定め、生徒にできるだけ規則の要点を明確にすること
5.混乱なく、確実に規則を実施すること
6.生徒にある程度自治を与え、規則の制定や実施に当たって何でも話せるコミュニケーションを確立させること
7.心の拠り所となるグループを作るために学校組織を分権化すること(たとえば、家庭のようなシステムを作る)
8.攻撃性や反権力の感情のはけ口を用意すること
9.できるだけみんなが何かの達成感を感じることができ、そしてそのことによって周囲からの尊重や自信を得ることができるように、学校内で成功の評価基準をつくること
10.子どもが先生やグループの指導者と身近な人間関係をつくれるように基本的教育単位を小グループにすること
11.年下の生徒を助けるために年上の生徒を使い、より遅れている生徒を手伝うために学業の進んでいる生徒を使うこと
12.教室外の(キャンプ、舟遊び、スキー、合宿など)活動場面を使うこと
13.さまざまな社会階層、人種、肌の色、性などの人びとからなる混合グループをつくること
14.競争するだけでなく、協力するグループを基本にすること
15.概念形成や言語的スキルを教えること
16.やさしい形で哲学、心理、社会学を教えること
17.例えば、法律、専門職の倫理、政治、経済などに関して道徳的決定を迫るような難しい事実を教えること
18.認識を高めるため、歴史、文学、その他の科目を使うこと
19.道徳的、心理学的問題を対象化するように作られた活動(たとえば、映画、演劇、パントマイム、いろいろな役割を「演じること」、統制された集団治療など)を使うこと
20.洞察を得させる一つの手段として宗教教育を行うこと
21.規則や契約要点を明確にするため、いろいろな種類のゲームや統制された社会状況を使うこと
22.実際の生活に関連したこと(たとえば、性、結婚、育児、職業選択など)を教えること
23.自分が必要とされている(たとえば、老人や貧しい人びとなどを助けることによって)と感じる機会をあたえること


p.117-118
心のノート
・2002年春に、全国の小中学生全員に一斉配布。道徳教育の補助教材として活用することを文部科学省が求める。
・「児童生徒が身につける道徳の内容をわかりやすく表し、道徳的価値について自ら考えるきっかけになるもの」であるため、絵や写真がふんだんに使われ、児童生徒が体験や感想、意見などを書き込む形式。
・学校現場では、ほとんど使用されなかったり、期待されたようには活用されていない側面がある。
・使い方の方針や方法がはっきりせず、使い方がわからないという批判もある。
・児童生徒がノートの指示にそって書き込みをしていくと、道徳性が自然と身につくような気持ちになってしまう構成への批判もある。


複雑な現代社会の中で、これしかないといった結論を導くような徳目主義では、「生きる力」を養うための道徳教育が充実したものにはなり得ない。


p.121
文部科学省は、2003年10〜12月、道徳教育の状況を把握し、今後の推進に資するため、全国すべての国公私立の小中学校を対象とした調査を実施:
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/11/04110503.htm