三中信宏『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』

系統樹思考の世界 (講談社現代新書)

系統樹思考の世界 (講談社現代新書)


実は、Decision Treeの勉強になるかな、と思って読んだのですが、そういった系とはまったく違う内容でした。ただ、系統樹を自分の興味のある分野について書いてみるっていうのは、授業アイデアとしておもしろいかな、と思いました。好きなサッカープレイヤーのスタイルを系統樹で並べてみたり。好きなバンドの影響関係を系統樹にまとめてみたり。うん、ちょっとおもしろいかも。
以下、メモ。

p.21

もっとも広く用いられている欧文書体(アルファベット)のひとつに「タイムズ」があります。これはスタンリー・モリスンによって造られ、1932年に公表された書体ですが、モリスンはタイムズ書体を鋳造するにあたって、過去の書体(18世紀のキャズロン書体、さらにさかのぼって16世紀のギャラモン書体など)を参考にしました。
しかし、活字の歴史はさらにさかのぼります。タイムズ、キャズロン、ギャラモンなどローマン体と総称される欧文書体のルーツは、いまはイタリアのとある広場に残されている紀元2世紀の「トラヤヌス帝の碑文」に求められます。そこに刻み込まれた書体こそ、現在にまで連綿と受け継がれてきた(「変化を伴う由来」という表現がぴったり)欧文書体群の「祖先」です。
活字製作者たちは、おしなべて過去に使用された書体の形状(エックスハイト、アセンダ、ディセンダ、アクシスなど活字書体にはさまざまな特有の解剖学的用語が用いられてきた)を綿密に観察し、取り入れるべき要素と新たに付加された要素を結合することによって独自の新書体を編み出してきました。トラヤヌス帝の碑文をルーツとするすべての欧文書体は、祖先書体にある変更を加えることにより作られた子孫書体とみなすことができます。


p.92-93
ベーコンは学問全体の包括的な階層分類を行った(『学問の進歩』1605年):
人間の持つ「知力」をよりどころにして、記憶に基づく「歴史」、想像力に基づく「詩」、理性に基づく「哲学」の3つの区分を作り、そのなかに個別の学問領域を細分化。

ディドロとダランベール『百科全書』(1751-80年):
悟性
 記憶-歴史
  神の歴史
  教会の歴史
  人間の歴史
  自然の歴史
 理性-哲学
  一般形而上学または存在論
  神の学
  人間の学
  自然の学
 想像-芸術


p.138
ロバート・J・オハラという鳥類学者が大学の学部学生に対して出題した問題:
あなたが知っているかぎりの生物名を挙げ、それらを結ぶ系統樹生命の樹)を描きなさい。正しい系統樹であるかどうかは問いません。

オハラの出題動機=
生命の歴史に関する社会一般の理解をあらかじめ知った上で、進化学のより効果的な教育方法を編み出す

p.140
ヒトが描く生命の樹の素朴イメージは、生命の歴史に関するメンタル・マップ(認知心理学的な意味での「認知地図」)