野村進『調べる技術・書く技術』

調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940)

調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940)


インタビューのテクニックを、作文力育成講座に入れ込めないかな、と思って読んだ。即効性はないかも…。ルポとか描くには、って感じのものなので。
おもしろかったのは、ペン・シャープナーを持て、という主張。ペン・シャープナーとは、「文章のカンを鈍らせないために読む本や、原稿を書く前に読むお気に入りの文章」のこと。なるほどね。書くためのシャープナーと考えるためのシャープナーと、いろいろ持っているといいかもな、と思った。
以下、メモ。

p.72
インタビューで訊く基本的項目
1.家族構成、家族とりわけ両親や兄弟姉妹との関わり
2.生い立ち、どんな子供だったか、生活環境
3.子供のころの思い出、忘れられない出来事
4.子供時代と青年時代の夢
5.影響を受けた人物や本など
6.青年期以降、現在に至る個人史
7.友人関係、ニックネーム
8.現在の仕事に就くまでの経緯とその後の変遷
9.仕事の内容と楽しさ、むずかしさ、やりがい
10.職場での人間関係
11.これまでで最も辛かったこと、涙を流したこと
12.長所と短所
13.尊敬する人物
14.典型的な一日のスケジュール
15.趣味と娯楽
16.好物、嗜好品、もしいたらペットについて
17.金銭観
18.異性との付き合い、セックス観
19.何を信じているか?
20.あなたを突き動かしている原動力は何か?


私の場合、20のその人物を「突き動かしている原動力」を自分なりにつかめたと実感したなら、インタビューはおおむねうまくいったとみなしている。


p.89

読売新聞の名物記者だった黒田清は、「インタビューのコツ」として「相手と同じ大きさの声で話す」ことをあげている。相手が大声の持ち主ならこちらも大声で応じ、逆に声を落として語る相手ならこちらも声を落とす。つまり、相手に「同化する」ことだというのである(『新聞記者の現場』)。


p.128
ペン・シャープナー:文章のカンを鈍らせないために読む本や、原稿を書く前に読むお気に入りの文章


私のペン・シャープナーは長らく山本周五郎大西巨人だったが、自分なりの“ペン・シャープナー手帳”も作ってある。文章を読んでいて心を動かされたり、その表現に感心した文章に出会ったら、必ず専用のメモ帳に書き記すことにしてきたのである。これは20代半ばからの習慣で、いまの手帳は7冊目である。
執筆の前には、この手帳を好きなところから広げて読みはじめる。すると、気持ちが徐々に書こうという方向に高まっていく。その瞬間を逃さず書きはじめるのが、コツだ。気持ちが高まってきたのに、ペン・シャープナーのほうを読みつづけていると、意欲は再びしぼんでしまうもので、絶対にタイミングを逸してはならない。