江下雅之『レポートの作り方 情報収集からプレゼンテーションまで』

レポートの作り方 (中公新書)

レポートの作り方 (中公新書)


学校の調べ学習が機能していないことにはいくつか理由があると思っているのですが、その大半は学校が「レポートの作り方」を教えないからだと思っています。調べ学習で物を調べた後に書くレポートは、作文とはまったく違って、きちんと構成を考えてから書かなければ意味なんてないのに、そうしたところを全部吹っ飛ばして、ただPowerPointの使い方講座になっている。これではきちんと発表なんてできるはずがないのですよ。たくさんの情報を集め、書きたいことのためにとリ得る選択肢を全部出して、その中からベストのものを選んで書く、という作業を教えていないもの。これは、型として教えなければいけないものだと思っています。
そんなカリキュラムが書けないか…と思い、まずはどんな方法論があるのかを勉強中。
例えば、情報収拾のときに「誤り」をしてしまう可能性があり、その可能性としては2つあるのだ、ということは恥ずかしながら知らなかった。

「第一種の誤り」:何らかの仮説を統計的に検定するとき、設定した仮説(帰無仮説)が正しいにもかかわらず棄却してしまう誤り。正しい仮説をボツにしてしまう誤り。
「第二種の誤り」:対立仮説が正しいのに帰無仮説を受け入れてしまう誤り。ボツにするべき仮説を採用してしまう誤り。

こういうこととかを、うまくパラフレーズして授業の中に入れられないか、と画策中。
以下、メモ。

p.3
調査研究の構想の具体化フロー:
1.結論の枠組み(着地点)を決める

2.作業項目を決める←→作業手順を決める

3.作業項目から着地点までの流れを点検する(再検討の場合は2.へ)

4.作業フローを作成する

5.レポートの章立て(目次案)を作成する

6.調査研究作業を実施する(方向修正の場合は2.へ)


p.7
調査研究のレポートや論文を書く作業は、プラモデル作りと似ている。
=決められたパーツを、決められた手順に従って、決められた形に組み合わせる

レポートや論文のパーツに相当するのはパラグラフ。枚数が数百枚、千数百枚におよぶ大論文であっても、小さなパラグラフに分解できる。

p.9
「論文の構造はESPRITである」
・導入(Entree en matiere)
・現状分析(Situation)
・問題提起(Problematique)
・解析の概略(Resolution de principe)
・詳細な情報(Informations completes)
・おわりに(Terminaison)


p.14-15
高橋誠『問題解決手法の知識』より
問題解決の技法
・発散技法・・・アイデアを出す技法
・収束技法・・・アイデアをまとめる技法
・統合技法・・・発散思考と収束思考の両思考が入った技法
・態度技法・・・創造的な態度を養成するための技法


p.18

アイデアの具体化は、発散的に生み出された数々のアイデアの分類・体系化によっておこなわれる。発散してえられたものを収束してはじめて、量から質を導き出せるのである。別ないいかたをすれば、アイデアを収束する技法は、次々とアイデアを出す発散技法のあとに不可欠な作業ステップなのだ。


p.37

官公庁のレポート、研究機関の実験データからマニアのコラムにいたるまで、インターネットで流通する情報量は膨大だ。このような状況になると、情報を集めることよりも、情報を捨てることのほうが重要である。多数の情報を短期間で収集できることが常識になったからこそ、「捨てる」ことの意味が重くなったのである。そしてインターネットで入手できる情報は玉石混交である。だからこそ、検索の技術をやしなう必要があるし、収集した情報を整理する訓練が不可欠なのだ。


p.56
統計学の用語
「第一種の誤り」:何らかの仮説を統計的に検定するとき、設定した仮説(帰無仮説)が正しいにもかかわらず棄却してしまう誤り。正しい仮説をボツにしてしまう誤り。
「第二種の誤り」:対立仮説が正しいのに帰無仮説を受け入れてしまう誤り。ボツにするべき仮説を採用してしまう誤り。


p.57

データベース検索をおこなうときのわたしの方針は、「大雑把に検索して徐々に絞り込む」ことである。第二種の誤りを許容したうえで、余分なものを捨てていくのである。実際の検索操作では、条件をゆるめるよりも、厳しくしていくほうが簡単なのだ。


p.183-184
レポートの執筆方法には2パターンがある。
1.最初に手近な資料と自分なりの考えにもとづいて、短い「プロトタイプ」を書き上げる。これを全体の雛形にし、構成の細分化を進め、裏づけデータで事実関係を補強したり、分析を精緻化する。
2.レポート本体の執筆はギリギリまで我慢し、細部に至るまでの構成(「スケルトン」)を詳細に練り上げる。詳細な構成まで決めて作業を進める。


p.185

パラグラフという原子のいわば原子核に相当する中核の文が題目文(トピック・センテンス)である。澤田(昭夫)はまた、「段内のすべての文章はこの題目文の思想とつながりをもっていなければなりません」(『論文のレトリック』)とも述べている。


p.186

推敲は「惜しまず削って、とことん補足」


p.190-191

内容を正確に記述するためには、ある事象の観察者(すなわちレポートの執筆者)の立場を明確にする必要がある。具体的には、記述する事柄が「事実(fact)」なのか、「分析(analysis)」なのか、それとも執筆者の「意見(opinion)」なのかを区別して表現することだ。


p.193-194
読みやすさの原則=ジョージ・オーウェルの六原則
1.長い単語は(できるだけ)使わない
2.削除できる単語は(できるだけ)削除する
3.紋切り型の文を書かない、漠然とした想像を表現しない
4.能動態を適用できるなら受動態は使わない
5.平易な言葉で表現できるのならば、外来語、専門用語、業界用語は使わない
6.常識を破って読者の意表をつけ