中島聡『おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由』

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)


経営学における「おもてなし」って何?と前提となる知識がないままに読んだのですが、非常におもしろかったです。User Experienceを「おもてなし」と訳していたのか。思い切った意訳は本当に難しいけれど、これは非常に適切だと思います。User InterfaceとUser Experienceの違いを、ただの遊園地とディズニーランドになぞらえているのも、とてもわかりやすい。
教育カリキュラムも、同じことが言えるなぁ、と思いながら読んだ。自分でカリキュラムを書くときには、「何を教えるか」ということだけでなく、それを学んで「どんなふうになるか」「どういう感想を持つか」「どんなふうに生活が変わる(はず)か」までを考えて書く。これって「おもてなし」なんだなぁ。うちの社長がよく僕のカリキュラムを読んで「愛がない」と言っていたのは、まさにこのことだよな、と思った。そんな考えのきっかけをくれた本。
以下、メモ。

p.18

私が、User Experienceという言葉を多くの人たちがするように「ユーザー・エクスペリエンス」というカタカナ英語にせず、あえて「おもてなし」という日本語に訳しているのには理由がある。それは、ユーザー・エクスペリエンスとユーザー・インターフェイスが同義語だと勘違いしている人たちが業界内部にたくさんいるからだ。


p.20
ユーザー・インターフェイス:
・ディスプレイサイズ、アイコンデザイン、メニューの配置、タッチスクリーン、遊園地におけるジェットコースターなど、人間が触れる個別の部品。

ユーザー・エクスペリエンス:
「デジカメで写真を撮影するのが楽しくなった」「持っているCDを全部リッピングしてポケットに入れて持ち運べるようになった」「ブログを通して新しい友達ができた」など、その人のライフスタイ不がどう変わったか、というレベルを含めた総合的な話。


p.26

YouTubeもグーグルビデオも、「ユーザーがビデオを共有する」という機能面で見れば本質的に同じサービスである。唯一の違いは、そのサービスを使う人たちに対する「おもてなし」。グーグルがフォーマット変換などの機能面での充実に力を入れていたのに対し、YouTubeが力を入れたのは「共有のしやすさ」だ。


p.46
任天堂・岩田氏による東京ゲームショウにおける基調講演(2005年):
ユーザー層を増やそう、ユーザーに新鮮な驚きを与えようという基本に戻った姿勢。


p.136

ウィンドウズもインターネット・エクスプローラーも、開発中は1日単位で仕上がったもの(デイリービルド)をその都度使って試すんだけど、そのブラッド(・シルバーバーグ)自身がデイリービルドを毎日チェックしていた。それでバグを見つけると怒鳴ったりして。自分たちが作っているものを副社長クラスまで含めて毎日使うから、バグがどんなふうに隠れていても見つかってしまう。下にいる連中にしてみればすごいプレッシャーだよね。