藤川大祐『ケータイ世界の子どもたち』

ケータイ世界の子どもたち (講談社現代新書 1944)

ケータイ世界の子どもたち (講談社現代新書 1944)


ケータイ小説って、どういうわけか認めたくないというか…理由が分からないんだけど、いやなんだよね。でも、これって新しい表現スタイルだから気に入らないだけなのかもしれない。確かに、ケータイを通じてならば、苦手だったコミュニケーションが取れたり、学びの場に参加できたり、という人もいるだろうから、うまい使い方ができればいいのかな、と。子を持つ親として、怖いけれど、上手に使ってほしいな、と思う。これはネットも同様。
以下、メモ。

p.35
ケータイ小説:

  • 魔法のiらんど」など小説投稿機能のあるサイトに少しずつ連載される。
  • ケータイの小さい画面で読めるように、一文が短かったり、改行による空白が多かったりするのが特徴。
  • 書き手は20歳前後かそれより若い人が多く、ケータイ画面で読むことを意識し、書くのもケータイで、というのが多いようだ。
  • ケータイ小説は、読者からのフィードバックをもらいながら書き続けている。
  • 読者は、自分たちの言葉に応えて続きが書かれることで、ますます作品が好きになる。


p.36

批判がある一方で、ケータイ小説やその感想が、子どもたちの重要な表現の場となっているということにも注意する必要があります。大人からみたら稚拙に思える文章でも、子どもの心に響く表現である場合があります。家庭や学校で満たされない思いをもった子どもがケータイ小説サイトで救われるということは十分に考えられるのです。


p.55
フット・イン・ザ・ドア・テクニック:
人は、小さな要求を1つ受け入れると、少し大きい要求を断りにくくなる。自分の行動に一貫性を持たせたくなってしまうから。そのため、要求が少しずつ厳しくなっても、途中で断ることがしづらくなる。このように、少しずつ要求を上げて厳しくしていく手法。


p.81
スルー力
物事をやりすごす力。インターネットの掲示板で自分のことが悪く書かれていても、事態が深刻でなければ気にしないことにする。気にする態度を見られないと、いじめようとする側は自分たちの行為の反応が得られず、飽きてしまう可能性がある。
有名人たちの態度を見ていると、スルーすることの意義がよくわかる。


p.106

いじめには、集団の中で子どもたちが同じであることを確認する手段という面があります。このように考えれば、同調圧力を弱め、異なる者どうしが認めあえるようにすることが、根本的な解決にはひつようということになります。しかし、ケータイを持つようになった子どもたちには、むしろ同調圧力が強く機能するようになってしまっています。

→ケータイが同調圧力を強め、強くなった同調圧力がいじめの要因となり、始まったいじめでケータイが使われて深刻化していく。


p.117

承認欲求が十分に満たされない子どもが、ケータイやパソコンを使うようになると、たいへん危険です。満たされない自分の欲求を、ネットの向こうの人に満たしてもらおうとしてしまうのです。


p.185
警察庁「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」最終報告書(2006年12月)
家庭で定めるべきルール項目

  • 自宅内では居間で使うこと
  • 食事中や懇談中、深夜には使用しないこと
  • 一定の金額以上は使わないこと
  • 学校での使用については学校のルールに従うこと
  • 他人を傷つけるような使い方をしないこと
  • 送信者不明のメールや知らない者からのメールが来た場合は速やかに親に報告すること
  • ルール違反や携帯電話の使用によって生活に支障が生じている場合には携帯電話の利用を停止すること

ケータイを買い与えるなら、家庭内で話し合い、こうしたルールを決めることが必要