ジョン・ウッド『マイクロソフトでは出会えなかった天職』

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった


マイクロソフトのエグゼグティブとして働いていた著者が、トレッキングで訪れたネパールで「学校に本がない!」という事実に出会ってしまい、そこから社会起業家としてRoom to Readを立ち上げるまでを描いた自伝。特に、「男の子を教育することは、その男の子を教育することにしかならない。女の子を教育することは、家族全体と、さらには次の世代をも教育することになる」、というのは本当だなあと思う。
ジョン・ウッドがすごいのは、NPOマイクロソフトの流儀を貫こうとしていること。マイクロソフトでの仕事に嫌気がさした、とかそういうのではなく、本当に「天職」に出会っちゃったんだよね。で、それまでマイクロソフトでやってきていた仕事の方法を、そのままNPOに持ち込んでいるのです。結果主義、数字で考える、CEOにも意義を申し立てられる文化の醸成などなど…。かっこいい人だ。
何か自分にできることはないか、考えてしまう。そして、「こういうことができますよ」ときちんと巻末に書いてある。こうした本の1冊ずつの売上が、どこかの国の図書館になったり、学校になったりするのだろうなぁ、と道が見える。この道を見せることが、ジョン・ウッドの何よりの力です。日本でもチャプターが立ち上がったみたいです。何かできることないかな。
ちょうど今月末にビル・ゲイツマイクロソフトを去ります。そして、Windowsという(良くも悪くも)お化けシステムを作ったビル・ゲイツは慈善事業へ。またジョン・ウッドと人生が交わるんだろうな。かっこいい大人たち。おいかけていきたい団体です。

p.36

世界中のたくさんの子供たちの悲しい現実を突きつけられた。
最初に驚いたのは、世界で推計8億5000万人が、基本的な読み書きもできないことだ。あまりに大きすぎる数字で、読みまちがいかと思って3回見直した。世界の人口は約60億人。つまり7人に1人が、簡単な文章を読んだり書いたりさえできないのだ。
8億5000万人のうち、3分の2が女性だという。その影響は悲惨なかたちで次世代に受け継がれる。家で子供に本を読み聞かせるのは、もっぱら女性だからだ。母親が教育を受けていれば、次の世代に受け継がれる確率がとても高い。僕自身、それを経験している。幼いころから母と祖母に本を読み聞かせてもらっていた。途上国ではあまりに多くの子供が、母親が教育を受けていないという不利益を背負って人生をはじめている。
(略)小学校に入学する年齢の子供のうち1億人以上が学校に行っていない。1億人だ。
これらの子供にチャンスは二度と来ない。1年後や10年後では遅すぎるのだ。だれかが何かをしなければ!行動を起こさないかぎり、問題は永遠につづくだけだ。


p.158-174
NPOマイクロソフトを目指す Building "the Microsoft of Nonprofits"

  • 結果を出すための集中力=結果最重視の姿勢、結果は寄付者にも分かる形で
  • 個人を攻撃してはいけないが、アイデアは攻撃していい=CEOにも異議を申し立てられる文化
  • 具体的な数字に基づくこと=すべては数字に置き換えることができ、すべての管理職は自分の仕事に関する数字をひとつももらさず精査する精神
  • 忠誠心=小さな行動の積み重ねでも忠誠心を双方向で示し合う


p.161

2001年に僕はある方法を思いつき、いまもつづけている。送信するすべてのメールの最後に、名前や所属と合わせて、ルーム・トゥ・リードの成果を記すのだ。ニュース番組で画面の下に株価のテロップが流れるようなもので、数字は適宜更新される。
(略)
<現在までの成果>
学校200校、2ヶ国語の図書館2500ヵ所以上、本の寄贈120万冊、少女への長期奨学金1800人以上。私たちと一緒に教育を広めましょう。


p.190
中国の格言
「それはできないと言う人は、それをしている人を批判するべきではない」


p.205

ネパールで女子教育プログラムの運営を手伝っているウシャがいつも言っている。「男の子を教育することは、その男の子を教育することにしかならない。女の子を教育することは、家族全体と、さらには次の世代をも教育することになる」


p.271
聖フランシスコ・サレジオ
「今の自分以外になろうと望まず、
 完璧な自分であるように努めなさい。」