ボードゲームを社員研修、大学でも活用

こういう教育の流れができてくるといいよね。

読売新聞(2008年1月18日・金)
大人もおもちゃ ボードゲーム 知的な交流

今月14日、東京・千駄ヶ谷のダイニングバーを訪ねると、30人ほどの男女がいくつかのテーブルに分かれてボードゲームを楽しんでいた。あるテーブルでは、チーズの獲得を競う「チーズの城」というドイツのゲームで盛り上がっていた。東京都内の会社員、松本典子さん(24)は「人間が相手なので、駆け引きがおもしろい」と話す。「初対面でも、ゲームを通して打ち解けられる」と言う女性会社員(33)も。
ここは月に1、2度開かれる「ボードゲームの夕べ」。インターネットなどで参加を呼びかけて集まった大人たちが“知的な趣味”として、約2年前から海外のボードゲームなどを楽しんでいる。
ボードゲームは、盤の上で、サイコロやカード、コマなどを使って楽しむゲーム。テレビゲームや携帯ゲームが全盛に見えるが、ボードゲームもここ4、5年、愛好家が増えているという。集まりの主催者で編集プロダクション「オフィス新大陸」の坂本犬之介さんは「日本のボードゲームはアニメのキャラクターと一緒になったものが多いので、子ども用と考える人がいるが、海外では大人が熱心に遊んでいます。特にドイツでは年に300本近い新作が発売されています」と話す。
無人島で資源を採取したり建物を建てたりして島を発展させるなど、現実さながらの経営手腕が問われるゲームもある。「コミュニケーション性が高く、大人が楽しめる奥深さがある」と坂本さん。
頭を使い、手先を動かし、参加者と会話をするボードゲームは、ビジネスや勉強の場でも注目されている。
新生銀行は昨年4月から、ボードゲームを社員研修に取り入れている。会社の事業戦略や歴史などを楽しみながら学ぶのが目的だ。これまで600人が体験した。
独自に作ったゲーム盤のマス目には、「消費者金融○○を買収」などの経営戦略が書かれているほか、「不祥事発覚」などの問題にも直面する。参加者は、その都度、最善の策を考えて対応し、収益を上げるようゲームを進める。終了後には参加メンバーが、どのような銀行を目指すべきかなどを話し合う。広報部の羽角慎二さんは「担当部署以外の仕事が理解できたという声が聞かれるほか、一体感にもつながっている」と言う。
名古屋大学(名古屋市)では、ドイツ製のボードゲームを授業に取り入れている。隔年で開講され、全学年が対象。学生はゲーム内容を分析し、勝つための戦略を発表するほか、実際に対戦したゲームの勝敗も成績になる。
担当する同大情報科学研究科教授の有田隆也さんは「人と人の間に思いもかけぬ展開がある。勉強への意欲を高め、考える喜びを知る教材としてボードゲームは適している」と指摘する。