藤本徹『シリアスゲーム 教育・社会に役立つデジタルゲーム』
- 作者: 藤本徹
- 出版社/メーカー: 東京電機大学出版局
- 発売日: 2007/02
- メディア: 単行本
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大学の先輩でもあります、藤本さんによるシリアスゲームの紹介本です。「ゲームを教育に」という動きを知ったのは数年前。藤本さんがされていたSerious Games Japanの活動からでした。まさか、こうして一緒に話をしたりするようになるとは思っていませんでした。世の中、おもしろいなあ。
ゲームを教育に利用するメリット、ゲームを教育に導入したくない人たちのロジック、とてもまとまって説明されていて、僕の仕事に直結で役立ちそうです。活かしていくぞー。
以下、メモ。
p.6
ゲームを教育に利用するメリット
- モチベーションの喚起・維持:学習者のやる気を高める効果を高める新規性、インタラクティブ性
- 全体像の把握や活動プロセスの理解:ゲームが描写する世界のメカニズムや、動的な動きの再現によって得られる特長。全体を俯瞰した形で、プレイヤーの意思決定や行動の結果が視覚的に表現される。
- 安全な環境での学習体験:現実には直接影響しないコントロールされた環境が提供され、そのなかで学習活動を行える。
- 重要な学習項目を強調した学習体験:学習に関係する変数、項目を強調して、残りの複雑な部分は単純化してわかりやすくすることができる。
- 行為・失敗を通した学習:安全なところで好きなだけ試行錯誤できる環境のなかで学習活動が行える。
p.7
ゲームと学習の関係を阻害する3つの誤解
- 「学び」と「楽しさ」に関する誤解
- 「学び」と「遊び」に関する誤解
- 「学び」と「つらさ」の関係に関する誤解
p.10
ゲームが教育の場で受けない10の理由(ゲーム研究者 リサ・ガラヌー Lisa Galarneau)
- 「エデュテイメント」時代、多くのコストをかけたわりにささいな成果しか得られなかったため、多くの人はインチキな売り文句にだまされたと感じている
- 多くの「教育用」ゲームは「チョコレートで包んだブロッコリー」
- 利用する教師やスタッフの多くは、いまだIT機器に不慣れで使いこなせない
- 教師や親の多くは、マスメディアの影響でゲームの有害性への不安を持っている
- 多くのゲームは、慣れて何かができるようになるまでに時間を要し、授業での利用が困難
- 面白いゲームは、教育用途には正確さが不十分、正確なものは逆に退屈
- ゲームの有効性が理解される研究が十分でなく、ゲーム利用側のニーズとかみ合っていない
- シミュレーションやゲームでコストが抑えられるのは、教育・訓練コストの高い分野
- 本格的にゲームを利用した教育は、大きな教育システム変革が必要となるが、そのリーダーシップがとれる人材はほとんどいない
- 優れた教育用ゲームは、教育の主流として認識されていない
p.52
Social Impact Games: シリアスゲームのオンライン事例集
http://www.socialimpactgames.com/
p.57
「
米国ニューヨーク州にあるハンターカレッジ高校で、市販ゲームを利用した授業を実践しているビル・マッケンティ(Bill Mackenty)は、授業で利用する市販ゲームの評価ポイントとして、次のような点を挙げている。
- ゲームのコンテンツが教科内容と関連していること
- ゲームのプレイを通して触れるコンテンツが知識として正確なこと
- ゲームに知的な思考や判断が含まれていること
- 失敗から学んで再チャレンジできること
- プレイ方法のチュートリアルがわかりやすいこと
- 勝つ方法がひとつではなく、いくつもあること
- 行動結果のフィードバックが頻繁に与えられ、全体の状況が見えること
- 進むにつれてだんだんと難易度が上がること
さらにマッケンティは、ゲームを利用した授業での指導方法の例として次のような活動を挙げている。
- ゲームプレイと学習目標に関連した質問のリストを生徒に与えて、その答えを書きこみながらプレイさせる
- 生徒たちにゲームをプレイさせながら、授業内容に関連した質問を考えさせる
- 生徒たちにゲームと教科内容と教科内容に関連したプレゼンテーションをさせて、事前に作成した評価基準法に基づいて評価する
- ゲームで失敗をさせて、何で失敗したのかを議論させる
- 戦略やヒントをまとめた、ゲーム初心者向けのガイドを作らせる
- ゲームと教科内容に関連したFAQを作らせる
」
p.72
「
ゲーム利用の効果として、教育的な効果と費用対効果の改善の2つがあり、それぞれ次のような要素に整理される。この時、教育効果が高くなければ、費用対効果が高まることはありえない。
教育的効果
・モチベーションの向上
・学習と習得の向上
・訓練機会の増大
費用対効果
・学習効率の改善によるコスト低減
・低コストでの訓練機会の増大
・訓練機会の統合
」
p.86
できの悪いゲームの特徴
- 画面の構成や操作方法がわかりにくく、プレイ感を損なっている
- ゲームの操作方法の説明が冗長で、ゲームプレイと分離している
- 学習要素とゲームプレイが分離している
- 学習内容に関係のない設定や余計なギミックが多い
- 何度もプレイしたいと思わせる仕掛けがない
p.88
よくできたゲームの特徴
- 画面の構成や操作方法がわかりやすく、ストレスなくプレイできる
- ゲームの操作方法をプレイしながら理解できる
- 学習要素がゲームのなかにバランスよく配置されている
- 対象ユーザーと学習内容に合った設定や演出を施している
- 一度で飽きずに、何度もプレイしたくなる仕掛けがある
p.111
カーネギーメロン大学エンターテインメント・テクノロジー・センター(ETC)
Augmented Cognition(軍事訓練用バーチャルリアリティ開発)
Cybersecurity(子ども向けのネットワークセキュリティ教育ゲーム)
Hazmat:Hotzone(消防士訓練シミュレーション)
Peacemaker(中東和平問題教育シミュレーションゲーム)
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「Peacemaker」のプロジェクトメンバーが中心となってゲーム会社ImpactGamesを設立。