テリー・ウィノグラード『ソフトウェアの達人たち 認知科学からのアプローチ』

ソフトウェア開発がメインテーマだったけど、プロダクトデザインやカリキュラムデザインなどでも応用できるかと思って読んだ。デザインのコンポーネントやプロセスなどが書かれているので参考にメモ。

ソフトウェアの達人たち―認知科学からのアプローチ

ソフトウェアの達人たち―認知科学からのアプローチ

p.46
インタラクション・デザインのコンポーネント
どんなデザイン開発にも必要な作業があるが、次の5つは革新的デザインのための核となる。

1.「理解」
これは何か?解決されるべき課題とは何か?情報や課題を観察し、分析する。他人、クライアントやユーザと話をすることで、情報を共有する。

2.「抽象化」
主要素は何か?どんな情報が発信されているのか?これを使って人は何をしたいと思っているのか?何が重要か?何が不必要か?リスト、スケッチ、ダイアグラムがこうした作業に役立つ。

3.「構造化」
各要素の関係はどうなっているのか?ユーザに役立つためには、その要素の組み合わせをどう変えればいいのか?ユーザが関心を持っていることは?ユーザはどの程度まで許容できる?

4.「表現」
この構造は、視覚的、あるいは音としてどのように表現できるか?そろった素材はどんな表現を求めているか?表現は具体的になるか、抽象的になるか?

5.「ディテール」
各要素はどんな色にすればいいか?どんなスタイルを用いるのか?


p.59

キッドピックスのデザイナー、クレッグ・ヒックマンは、このプログラムにとって最も重要な機能は、絵が仕上がるということではなく、その仕上がっていく過程で子供が経験することにあるのだ、と認識を改めた時、根本的な方向転換を行った。キッドピックスで楽しいのは、スクリーンでできあがっていく絵を見ることにもあるが、それより絵を描くことに伴う行動である。数字や色がスクリーンの中でねじれたりダンスする。


p.60
キッドピックスが満たしている点:
ソフトウェア・デザインとインターフェース構造の効果は、ユーザがそれをどう解釈するかに依っている。
・ユーザーの解釈は、コンテクストから乖離したものではない。文化的コード、共有感覚、感情的な反応、慣習的な偏見など、ユーザーがそこに持ち込むものに依っている。
・ディスプレー技術の進化によって、ヒューマン・コンピュータ・インターフェースにおいて、より豊かで表情に富んだコミュニケーションが可能になった。
・したがって、ソフトウェアの機能は外見とは別のものであるとか、外見よりまさっているという考えは無意味である。


p.61
ゼロックス社のコピー機のリ・デザインプロジェクトの2つのガイドライン
1.実際の現場で人々がどう機械を使うのかを理解すること。
2.デザイナーがユーザーとコミュニケートするメディアとして機械をとらえること。つまり、機械を単にメカニカルな機能を備えたモノとしてとらえるのではなく、デザイン言語を表現するものとしてとらえること。


p.66
デザイン言語コンポーネント
・要素の集合
かたち、手触り、色、行為、メタファーなど、デザイナーとユーザーがコミュニケートする積み木のようなもの。
・構成のためのルール一式
意味あるモノをつくるために、どう要素が組み合わせられるかを説明するもの。
・確信のもてる状況の集合
コンテクストによって、構成の要素やルールがどう変わるかを示す例。


p.71
デザイン言語のアプローチ
1.性格づけ
仮説と前例を創り出したデザイン言語を検討する。

2.再登録
新しい仮説のセットとデザインの枠組みを打ち立てる。

3.開発とデモンストレーション
デモンストレーションとプロトタイプの具体性によって共同に作り上げられていく。

4.評価
デモンストレーションの後、または同時に評価段階に入れば、そのデザイン言語がユーザーと共鳴するかどうかがすぐにわかる。

5.発展
どんなによくできたデザインでも、使用され始めると言語に追加や変化が加えられる。