岸本裕史・陰山英男『やっぱり『読み・書き・計算』で学力再生』


いまやすっかり有名、百ます計算を広めた陰山先生がまだ一教諭として授業をしていた頃の本。学習能力をコマの軸としてきっちり確立して、それから体験を積ませることで学びが進んでいく、というあたりは同感。計算力だけでなく、継続してやるなかでだんだんできるようになっていき、その経験が自信になるというのもその通りですね。先生とのトークの中で使えそうなネタが多かった。
以下、メモ。

p.23
学習能力の獲得が豊かな人間を作る

学習もコマと同じです。最初にぐんと学力をつけてしまえば、あとは、さまざまな体験から学びとっていくことができるのです。
学校教育をコマにたとえるなら、「学習能力」はコマの軸といえます。軸だけあっても、コマの形にはなりませんし、軸が弱々しいものだと、コマは倒れてしまいます。まず、しっかりとした軸があり、その周囲にふくらみがついてこそ、すばらしいコマとなるのです。では、そのふくらみとは何か。それは体験です。
夕日を見て美しいと感じるのは体験で、それ自体意味はあります。しかし、学力のついた子なら、その体験を詩や作文にするでしょう。絵に描く子もいるでしょう。夕日の赤さの理由を調べるかもしれません。これが、体験的学習です。そうやって学習されたことは、ほかの人たちと分かち合うことができます。(略)これが、学力の意味です。


p.70

計算力は算数のかなめです。そしてその計算力の土台の部分は、小学校2年生までに学習します。しかし、例えば、ある教科書では九九は2年生の2学期に学習しますが、3学期の教材に九九を使う物はまったくありません。つまり教科書通りの授業では、練習不足になってしまう危険性があるのです。


p.73

百ます計算の)タイムについて経験的に言いますと、中学年以上の場合、2分以内でできると、算数の学習が支障なくできますが、3分近くなると、計算のつまずきが目立つという統計があります。それで、2分以内を目標に4月から始めます。


p.75

[百ます計算は、次の点に気をつけて家庭でもやってみましょう]
・反復→記録→評価の繰り返しで計算力が伸びます。
・ご家庭でも、毎日やる→毎日記録する→毎日評価するようにしましょう。
・分数・小数などの計算も、実はこうしたやさしい計算の組み合わせでできています。
・計算力が上がると集中力が養われ、学習能力が高まり、他教科にも影響します。
・毎日記録することで自分の成長がわかり、その結果、自信がつき精神的にも安定します。


p.81

百ます計算で)できない部分を集中的に延ばすことで、全体的によくなることもあるのです。
あれもこれもやらなければならないというと、子どもはパニックになります。やるべきことを限定してあげて、それを徹底反復するやり方、一つのやり方をずっと通すのが、子どもたちにとっては受け入れやすく、合理的な学習法なのではないでしょうか。


p.163

イギリスの場合は、ブレア首相が内閣の3大政策として、「第一は国民の学力を伸ばし人格を育てる教育。第二は、未来を保障するための教育。そして第算も教育だ。」と、教育の最重要性を打ち出しました。


p.166
家庭教育10か条
1)すべての教育は家庭に始まる
2)父親の力を大いに活用すべし
3)勤勉・努力・向上心は、21世紀の家庭にこそ必要
4)学校との連携を保った家庭教育を
5)“教科書まかせ”の学習では不足
6)教材・教師・学校は、自分の目で見定め、見守ることが大切
7)勉強は“受験戦争”ではなく、“学習オリンピック”
8)個性は一日にしてならず
9)“ゆとり”は充分な基礎学力の上にこそ成り立つ
10)確かな学力が品格のある子に育てる