トム・ケリー&ジョナサン・リットマン『イノベーションの達人! 発想する会社をつくる10の人材』

イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材

イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材

イノベーションはチームプレー。
必要なのは1人の天才ではなく、あなたのまわりのこんな10人。

情報収集をするキャラクター
人類学者:観察する人
実験者:プロトタイプを作成し改善点を見つける人
花粉の運び手:異なる分野の要素を導入する人

土台をつくるキャラクター
ハードル選手:障害物を乗り越える人
コラボレーター:横断的な解決法を生み出す人
監督:人材を集め、調整する人

イノベーションを実現するキャラクター
経験デザイナー:説得力のある顧客体験を提供する人
舞台装置家:最高の環境を整える人
介護人:理想的なサービスを提供する人
語り部:ブランドを培う人

本当にそうだなあ、と思う。チーム、イノベーションという2つのテーマは最近追いかけているものだったので勉強のために読みました。おもしろかった。いくつかの役割を持つ人がチームに必要だ、という話。自分はどれだろう?と考えながら読む。経験デザイナー、というのが仕事としてはやりたいことだけど、多分、今、会社で求められているのはこれじゃないかもしれないなあ。語り部、かな?
以下、メモ。

p.24-26◆人類学者

人類学者のどこにそれほどの価値があるのか。IDEOでこの役割をになっている人びとは、まず基本的に、おおむね社会科学のきわめて確固たる基礎学力をもち、認知心理学言語学や人類学といた分野の高度な学位を身につけて会社に入った人だ。しかし、これらの人びとと仕事をして明らかにわかるのは、彼らの学術的な知識というよりも、知識にもとづいた直観的な感覚というか、ハーバード・ビジネススクールのドロシー・レナード教授が「ディープ・スマート(暗黙知)」と称したようなものだ。


その「人類学者」の役割での明らかな特徴は6つ
1)禅の原則「初心」を実践している。
自分の「知っている」ことを脇に置き、既存の定説にも、自分の先入観にもとらわれないようにする。
2)人間の行動を新鮮な驚きをもって受け入れる。
判断せずに、観察する。さらに感情移入する。
3)人類学者は自分の直観に耳を傾けることによって推論を導き出す。
観察された人間行動の情緒的な基盤についての仮説を組み立てるとき、自分の直観に依存することを恐れない。
4)「ヴァジュデ」を通じてひらめきを求める。
「デジャヴュ」の反対。前に実際に見たことが何度もあるものを、いま初めて見ているような感覚でいる。
5)常に「バグ・リスト」や「アイデアの財布」を身につけている
自分の日々の経験をまたとない素材として利用する。
6)手がかりを求めてゴミ箱さえもあさる。
新しい発見を求めて、それが最もありそうにないところを探す。


p.36-38◆人類学者
子どもに関するケイトの7つの秘訣
1)子どもの観点を聞いてみる
2)自分についての情報を提供する
3)子どもの親友を会話に誘う
4)このプロジェクトが『トップシークレット』であることを(それが事実なら)子どもに思い出させる。
5)家のなかを案内してもらう。
6)10ドルあったら、100ドルあったら何を買うかを子どもに尋ねる。
7)子どもを笑わせる。


p.46◆実験者

ある日ちょっとした偶然で(注:IDEOの「ゼロ20」グループの玩具開発部)創設者のブレンダン・ボイルが発見したことがある。プロトタイプで遊ぶに当たって最低限の時間決め料金を設定すると、時間に遅れずにやってくる子どもを増やせるのである。母親は喜んで料金を払ったし(何しろベビーシッターを雇うよりも安価だったから)、課金はどうやら子どもたちの心理に訴えたらしく、貴重な時間を一瞬でも逃すまいとして彼らは早く到着するようになったのだ。


p.53◆実験者

大事なのはツールではなく、アイデアをできるだけ早く目に見える具体的なものにすることだ。そこで私が推奨したいのは、磨き上げられていないプロトタイプを提出してもかまわない、と思わせる雰囲気をかもし出すことである。経営者やクライアントの前にローファイのプロトタイプを出すにはある種の自信が必要だ。生硬なプロトタイプは、磨かれたプロトタイプよりも勇気を必要とする。


p.82-84◆花粉の運び手
IDEOの他家受粉のためのレシピ
1)発表会をしよう
2)さまざまな背景を持った人をたくさん雇おう
3)議論が巻き起こるような空間をつくろう
4)さまざまな地域のさまざまな文化を取り入れよう
5)週に1度の「ノウハウ」講演会を主催しよう
6)客人から学ぼう
7)多様なプロジェクトを進めよう


p.89

新しいものを創造するためには、何かを取り去らなければならないのかもしれない。たとえば、MTVは「剥奪研究」ということをやっている。中毒者の依存習慣をきっぱりと断ち切らせるときと同様、MTVを長時間にわたって見ている視聴者に30日間いっさい番組を見させないようにして、彼らがどんな賢い代替策を思いつくかを調べるのである。


p.152-154◆コラボレーター

サッカー選手に求められるのは、アメフトのように特定のポジションに特化された技能を磨くことよりも、複数のポジションをカバーして、技術と責任をチーム全体として共有することである。IDEOも同じような考え方を取り入れている。ある人が工学の学位を持っているからといって、その人が新しいサービスに関するクリエイティブなブレイン・ストーミングに貢献できないわけではないことを、私たちはとみに実感するようになっている。逆に、工学的なソリューションが必要になりそうな難問に関して、デザイナーの見解を求めることもできるのだ。いいチームはメンバーに専門以外の分野をカバーすることを求める。そうやって、空いたスペースを埋めていくのだ。


より良いチームを作るためのいくつかの鍵:
・指導はたっぷり、指示は少なく(スタッフが自信と技能を伸ばすように支援する)
・パスを重視する(チームを3つから6つ程度の小グループに分け、アイデアや責任を渡しあえるようにする)
・全員がボールに触れる(チームの全員に少なくとも1つは重要な責任をになわせる)
・複数のポジションを守れる技能を教える(従来と異なる役割を引き受け、自主的に邁進させる)
・ドリブルを控えて、ゴールを目指す(チーム内でアイデアを伝え合い、誰もがイニシアチブをとれるようにする)


p.184◆経験デザイナー

経験デザイナーとは、すばらしい顧客経験を創造しようとひたむきに努力する人びとであり、彼らの作品は、多くの感覚に働きかけるデザインがいかに奥深いものであるかを実感させる。もちろん、ここでいう「デザイナー」とは、広い意味での考案者や創造者全般を指している。彼らが創造する経験は小さいものもあれば大きいものもあり、原子でできているものもあればデジタル世界のビットでできているものもあるからだ。
優秀な経験デザイナーは、製品、サービス、デジタル・インタラクション、空間、イベントなどを通じて、あなたの組織とのすてきな出会いを演出するための舞台を用意する。それは顧客に対してのみならず、従業員に対しても同じだ。彼らがつくる経験は、他と比較にならないほど飛び抜けている。


p.187◆経験デザイナー

経験デザイナーは平凡なものを見つけるそばから、それを払いのける。


p.210◆経験デザイナー

あなたは顧客にどんな経験を提供できるだろうか?顧客にあなたの売る経験を収集させられるだろうか?顧客があなたの提供する場所をすべて訪れ、商品をすべて試すようにもっていけるだろうか?


%日本の駅にあるスタンプはこの様な経験コレクターのための仕組みだと例示されている。


p.212◆経験デザイナー

非凡な存在になるための第一歩は、平凡なものを捨てることである。それをあなたの組織に思い出させてくれるのが、経験デザイナーである。競争に勝ち、市場の流れの上を行って規範を打ち破るには、顧客やパートナーや従業員のために驚くべき経験を創造してやらなければならない。


p.263-264◆介護人

面白いことに、専門技術で溢れかえった世界において不可欠なものは何かをローテクのサービスが教えてくれるときがある。(略)スターバックスが客の名前を尋ねるのは、純粋に作業場の理由からではない。それによって経験に人間的な要素を加味できるからなのだ。
自動化がどれほど進んだとしても、人間による操作や人間同士の交流を維持しておくことには大切な価値がある。自動化された新しいサービスを利用する人にも、実体のある文字通りの触れあいをさせるようにするべきだ。人はそれによって初めて、その経験や製品を自分のものと呼べるようになるからだ。
すべてを自動化できるからといって、そうするのが望ましいとはかぎらない。私たちのロンドン・オフィスを率いる才能に恵まれたインタラクション・デザイナー、マット・ハンターはシンプルな表現に多くを語らせる。「あいだに入れ、自動化するな」。「サービス機械にやってほしくないことを見極めるのは最も重要な一歩かもしれない」と彼は言う。言い換えれば、人がやるのが最善なことは、そのまま人にやらせろということだ。


p.281-284◆語り部
組織がなぜよい語り部になるべきなのか、7つの理由

1)ストーリーテリングは信頼性を築く
最新の実地調査と観察から得た緊迫した一人称の語りには信憑性がある。情熱や新鮮な視点には、敬意が払われる。興味をそそる一人称で語れるストーリーテラーは、自分自身の経験に関して誰にも負けない専門家なのである。

2)ストーリーテリングは強い感情を解き放ち、チームの絆を深める
誰もが笑ったりうなずいたりするようになったころ、チームはより強くなり、より真剣になっている。その変化は驚くほどだ。

3)物語は物議をかもす問題や厄介なテーマについても探索する「許可」を与える
「感覚的」なコンセプトを抽象的に話し合うために、物語として語ることはゆうこうだ。疑惑や懐疑から来る最初の拒絶反応をすり抜けられる。

4)ストーリーテリングはグループの視点に感化をおよぼす
説得力ある物語はグループの視点を形成する寓話として役立つ。

5)ストーリーテリングは主人公を作る
既存の製品やサービスでは叶えられない要望をもった顧客や将来の顧客を、架空のキャラクターとして仕立ててイノベーションを考える。

6)ストーリーテリングは変革にかかわる新しい語彙を提供する
物語の言葉はコンセプトを増強し、イノベーションの広まりを加速させる。言語は思考の結晶であり、だから物語りは重要である。

7)よい物語は混沌に秩序をもたらす
よい物語はがらくたの山を突き抜ける。多くの情報の中、物語は覚えてもいてもらえるものだ。


p.290-292
イノベーションで勝者となるには
1)新しい長所を得る
2)遠くを目指す
3)決して降参しない
4)心理ゲームを制する
5)コーチを称える