Raph Koster『「おもしろい」のゲームデザイン 楽しいゲームを作る理論』

「おもしろい」のゲームデザイン ―楽しいゲームを作る理論

「おもしろい」のゲームデザイン ―楽しいゲームを作る理論


原題は「A Theory of Fun for Game Design」。別にゲームを作りたいわけじゃないんですけどね。でも、ゲームを作ることと教育カリキュラムを作ることって、似てると思うんですよ。どうしたら退屈でないか、必死で考えるところとか。
以下、メモ。
ここに出ている基準を教育カリキュラムにあてはめて、確認をしてみようかな、と思っています。

p.30-33
グロック(=grok):

  • ロバート・ハインライン(Robert Heinlein)が作り出した言葉
  • 「それと1つになり、それをアイスさえするほど、徹底的に何かを理解する」という意味
  • 理解にいたる途中で、それらの段階が必要になるとはいえ、直感や共感を超えた深遠なる理解のことを指す
  • 「習慣行動」と呼ばれるものを、繰り返し行い続けようとする。その後で、実行中の行動について考えなくてはならないことを減らしていく。

p.44
ゲームから得られるおもしろさは、達成感から得られるものです。そしてそれは会得したという事実からもたらされます。それは、ゲームをおもしろくするパズルを解く行為そのものなのです。言い換えると、ゲームを使った学習は麻薬なのです。

※「おもしろいと感じるのは学習に対して感情面における反応なのです」(Chris Crawford、2004年3月)


p.48
ゲームが「つまらない」となる要因
・最初の5分でゲームのやり方をプレイヤーがグロックしてしまったら、「簡単すぎ」
・ゲームに数え切れないほどの可能なやり方が用意されていることをプレイヤーがグロックしても、用意されたやり方のどれ1つ、プレイヤーが楽しみを求める基準に達してないと、「こんなの、僕には役立たないよ」
・パターンの変動が明かされていくペースがあまりにも遅いと、「最初が簡単だし、くどすぎるな」
・ゲームで変動を明かしていくのが早過ぎると、「展開が速すぎてついていけない」
・プレイヤーがパターンのすべてに習熟してしまったら、「俺は打ち負かした」

p.50
普通、あらゆるゲームが、楽しみながら学べる要素を含んでいる。


p.98
楽しさのさまざまな定義

マーク・ルブラン(Mark LeBlanc)/ゲームデザイナー
おもしろさを8つの形式に分けて定義

  • 感覚刺激(sense-plaesure)
  • 見かけ(make-believe)
  • 芝居(drama)
  • 妨害(obstacle)
  • 社会的な枠組み(social framework)
  • 発見(discovery)
  • 自己啓発と表現(self-discovery and expression)
  • 放棄(surrender)

二コール・ラザロ(Nicole Lazzaro)
ゲームのプレイヤーの表情で示される感情を4つにわける

  • 強烈なおもしろさ(hard fun)
  • 穏やかなおもしろさ(easy fun)
  • 変わり行く状態(altered state)
  • 人的要素(people factor)

Raph Kasterの分類

  • 「おもしろさ(Fun)」とは、課題を精神的に習得する行為を指します
  • 「美しい外観(Aesthetic appreciation)」とは、常におもしろいわけではないが、確かに楽しめるものを指します
  • 「本能的反応(Visceral reaction)」とは、課題が物理的な習得に関連していて、一般に肉体的なものを指します
  • いろいろな種類の「社会的地位の演習(Social status maneuver)」とは、自己像に対する本音であり、共同体内での立場のことです。

これらのことすべてが、どれも、それに成功すれば、良い気分にしてくれます。これを「おもしろさ」という1つの言葉だけで、それらすべてを一緒くたにしてしまうのは、言葉の意味を失わせてしまうだけです。

p.100
各人の間でおこなわれるやり取りには、それらを取り囲むようにして、積極的な感情がいくつも集まって存在しています。それらのほとんどすべてが、社会的な上下関係で、他の誰かを押し下げようとしたり、あるいは、自分自身を押し上げようとしたりした合図になっています。最も顕著なものをいくつか、以下にあげておきましょう。

  • 他人の不幸を見る喜び
  • 勇猛さ
  • 誇りに思う
  • 自慢だ
  • 身繕い
  • 他の人々を養う

これらの多くが気分を良くしてはくれますが、必ずしも「おもしろい」わけではありません。

p.124
プレイヤーがゲームでずるをするのは、ゲーム自身が持っているのよりもより広い状況で戦場を選ぼうとしているのです。
ずるができるのは、実際、そのプレイヤーがそのゲームをグロックしている証でもあるのです。


p.132
成功したゲームは以下の要素を含んでいる傾向がある。

・準備
 与えられた挑戦に成功する確率に影響を与えられる何らかの選択ができるようになっている
・空間の感覚
 チェス盤や戦争ゲームの背景
・中核となる堅牢な仕組み
 チェスにおける駒の動かし方、など
・挑戦の範囲
 内容、ゲーム内で出くわす敵など
・課題の解決に必要な能力の範囲
 無数に存在する中から戦略を自由に選び出せるようにしておく。1つしかできることがないなんてつまらない。
・能力を使いこなすのに必要な技術
 まずい戦略を選択したら失敗。資源の管理、時期選択の誤り、肉体的なスキルなど



p.136-138
ゲームの仕組みのチェックリスト

  • 挑戦する前に準備しなければならないですか?
  • 異なったやり方で準備しても、成功することができますか?
  • 挑戦が発生する環境は、その挑戦に影響を与えますか?
  • プレイヤーが受ける挑戦を定めた確固たる規則が存在しますか?
  • その規則一式は、何種類もの挑戦に対応できますか?
  • その挑戦に耐えるためにプレイヤーは複数の能力を持つことができますか?
  • 難しさが増した場合、その挑戦に耐えるのに、プレイヤーが複数の能力を持たなければならなくなりますか?
  • 能力の使用に関連した技術が存在しますか?
  • 挑戦を克服するのに必要となる、いくつもの成功を辿る道筋が存在しますか?(言い換えるならば、成功は唯一の結果だけをもたらすようにすべきではありません)
  • 熟達したプレイヤーが簡単な挑戦に取り組んでも何も利益を得られないですか?
  • 挑戦に失敗したら、最低限、プレイヤーは再びやり直さなければなりませんか?

p.138
ゲームデザイナーが果たさなければならないただ1つの責務は、そのゲームが関係している物事を知り、ゲームが間違いなくそれを教えられるように保証することなのです。そのゲームの主題であり、中核であり、命でもある、その唯一のものは、数多くの仕組みを必要とするかもしれませんし、数少ない仕組みで足りるかもしれません。しかし、その授業に貢献しない仕組みは、そのゲーム内にあるべきではありません。それがすべての要諦です。それが物語における倫理に相当するのです。それが要点なのです。