迎山擁平『塾教師の仕事・完全マニュアル』

塾教師の仕事・完全マニュアル―塾の現場における知識・技術を基礎から応用まで

塾教師の仕事・完全マニュアル―塾の現場における知識・技術を基礎から応用まで


元の仕事である学習塾の教師(講師)の仕事マニュアル。著者はずっと現場でやってきた人です。仕事でマニュアルを書こうと思っていたので、その参考に読んでみました。「学習塾の教師は教育者ではない」と言い切ることで、目的がはっきりしていていいと思います。

以下、メモ。

p.53

「教師が喋れば喋るほど生徒の考える力=脳みそのしわは減ってくんだから。予習?そりゃ十分にするよ。でも教室じゃ喋らない。いざ聞かれたら的確に教えてあげるけどね。そのための予習だよ。十の授業のために百の予習。主役はあくまで生徒。ここは塾、力をつけさせたものが勝ち、力のついた生徒が勝ち。教師の力ってそこで問われるんだから」
筆者が尊敬できると思える教師はだいたいこれと同じことをみな口にする。


p.106

塾教師は「結果として真の教育者になり得る」場合もあるが、日常においては『サービス業従事者』であり、生徒に「真の学力・実力をつけさせる」よりは、生徒に『得点を取らせる』ことの方が重要なのである。
理念を高々と掲げてはいるが定期テストで点数も取らせられない者は、塾の教師としては残念ながら未熟なのである。


p.111

これら(注:出迎え、送り出し、電話賭け、掃除、営業活動など教務以外の業務)は会社運営、発展のためには必要な業務である。「自分は営業員ではなく教師だから」ときれい事を言って避けては通れないのである。しかし、筆者の見てきた限り、こうした業務を教務より優先させ数字の向上ばかりに神経を尖らせる塾(会社)は、決して生徒・保護者・社員からの評判は良くなかった。


p.139
生徒の叱り方
1)叱る対象となる生徒をはっきりさせる。
・全体に向かって「静かにしなさい」は無意味
・生徒個人に対してはっきりと伝える
2)授業以外のときに呼んで、きちんと話し合う
・集団の場で叱られることは卑屈感や屈辱感を感じてしまい、それがモチベーションを殺ぐ
3)叱った後は、生徒の帰宅前に家庭に連絡する
・家庭も巻き込んで効果を上げる
・状況と叱責の内容を正確に伝えておく


p.143

教師と生徒の間には年齢的上下関係及び機能的上下関係はあるが、精神的上下関係は存在しない


p.146

しっかりした文化の根付いた塾・校舎では、教師は忙しいながらもその仕事を楽しむことができるようになる。教師が楽しんで仕事ができれば、その空気は生徒たちにも伝わり波状効果をもたらすのである。


p.216

こうした場合(勉強の継続ができない、という相談が来た場合)、筆者は[脳みそも筋肉である論]を展開して説得する。
部活動をやっている生徒たちが多いので、その例を挙げてこう話す。
「ホームランを打ちたい・ナイスレシーブを決めたい・華麗なオーバーヘッドパスをしたい・ギターやサックスをうまく吹きたい(などなどどんなものでもいいのだが)と君も思うよね?そう考える時に、体育や音楽の教科書を読んで、たった一回練習するだけでできるか?できないだろ。何回も何回もやると体が自然に覚えるよな?脳みそも同じなんだよ、繰り返さないとできないんだよ」という(むちゃくちゃな)理論である。
しかしこれをこちらが自信満々に言うと、たいていの生徒は納得する。


p.248
塾教師の鉄則
1)二度目の授業が肝心
・一回目の授業では、生徒たちは誰でもこちらに興味を持って話を聞いてくれる。
2)三年目の壁に気をつけろ
・さしたる予習も不必要になるため、手抜き癖が出る
3)点数にこだわれ
・理屈や理想を振りかざすのは、生徒たちに点数を取らせてからでも遅くない
4)「知っている」と「教える」は違う
5)「授業がうまくいかない」と自分で判断するな
6)生徒が伸びる授業こそが正解である
7)メンタルな面も機能的に改善できる
・具体的な行動を伴ったアドバイスをする
8)やりもしないで不平を言うな
9)自分なりの業務計画表を作れ
10)校舎全体を見据えろ
・スクールメリットを常に考えながら毎日の業務をこなすべきである