小笹芳央『モチベーションカンパニー』


とっても勉強になりました。この本、ビジュアルがすごい上手だなあ、と思うページがたくさんある。もちろん、自分の会社での立ち位置を考えるきっかけにもなりましたけど、それ以上に教室での生徒たちのモチベーションを作り出すために、どんなことができるだろうか、と考えてみたりもした。

以下、メモ。

p.37

ルールがラフな状態から詳細な状態を横軸にとると、ある一定ラインまでは詳細さが増すごとに複雑性は低くなる。ところが、あるラインを超えたところで、再び上昇曲線を描く。不透明さを排除しようとあまりにルールを詳細化すると、この折り返し地点を越え、複雑になって運用に耐えないものになってしまうということだ。
つまり、この折り返し地点が、最も成果主義を単純にして運用しやすい最適値ということになる。複雑になると、つまり評価の項目が増えその判断基準も多様になると、人事や現場の管理者はその評価に時間がかかり、当然人員も増やさなければならないために人的コストも増す。


p.42

個人で上げた成果ばかりにスポットをあてた成果主義では、充分な評価が難しいというkとになる。その人を取り巻く環境や、数字ではみえにくい貢献、仕事のプロセスを考慮しない成果主義は、従業員の不満足感を招く。
(略)
「集団成果」と「個人貢献」のバランス、「環境要因」と「個人成果」のバランス、そして「短期成果」と「後輩指導などの中長期貢献」のバランス、あらゆる複雑なバランスの中で企業の短期および中長期発展が実現できる。


p.50
「報酬の魅力」x「獲得可能性」=モチベーションの大きさ


p.75
モチベーションエンジニアリング
・コミュニケーションに着目する
・金銭報酬や地位報酬とは別の「楽しく仕事がしたい」「自分お仕事を認めてもらいたい」「意味を感じられる仕事をしたい」などの根源的欲求を満たす
・「おまえよくやったな」「きみのおかげだと顧客から感謝されたよ」などの一言で使命感や貢献実感を刺激する


p.78

従業員のモチベーションを向上させ、成果を上げるには個人の目標を管理するだけでは充分ではない。「個人」というものにだけ着目し、個人のキャリアアップ支援や、個人の成果に応じた報酬体系を用意するだけでは、個人が「働きやすい」、「やりがいを持てる」会社であり続けるのは困難である。実際に、個人に着目したルール変更によって、セクショナリズムが横行したり、人間関係が無味乾燥な職場になってしまったり、そうしたことが原因で顧客からのクレームが増えてしまったり…という悪影響がでてきた企業も少なくない。


p.79

個人の力を最大化し、組織として有機的に機能させるためには、「人」個人ではなく、個人を結ぶ「間」(=関係性)に注目することが重要である。多くの組織上のトラブルや障害は誰か特定の「人」に問題があることよりも「間」に問題があることの方が圧倒的に多い。たとえば、「経営者と幹部の間」あるいは「本社と支社の間」、「営業部門と商品企画部門の間」(略)などなど、組織上のどこかの箇所に「コミュニケーションの閉塞」や「相互不信」という関係性の問題をはらんでいることがほとんどなのである。


p.80
10人の会社は「10人の集まり」ではなく、「45本の関係線がある組織」である。

10人の会社を強化するためには、
・個人力を高めること
・45本のチャネル間の連携強化や障害除去を行う
=関係性の視点による「モチベーションエンジニアリング」


p.102-103
ワークモチベーション

■BIRD'S VIEW
【会社基盤】将来の安心を担保したい
【理念戦略】理念に共感したい
【事業内容】事業に意義を求めたい
【仕事内容】仕事にやりがいや意味を持ちたい
【組織風土】自分の指向と風土を一致させたい
【人的魅力】魅力ある人と一緒に働きたい
【施設環境】仕事がしやすい環境がほしい
【制度待遇】納得感のある評価、待遇を求めたい

■INSECT'S VIEW
□マネジメント項目
【情報提供】社内外の情報をわかりやすく伝えてほしい
【情報収集】自分や、自分の仕事に関心を持ってほしい
【判断行動】基準を明確にし、公平に評価してほしい
【動機形成】動機づけに心を配ってほしい
□ワークステージ項目
【顧客接続】顧客の声を重視したい
【目標達成】目標を持ち、それに向かって頑張りたい
【意欲相乗】メンバー間で相互理解し、仕事の連携をよくしたい
【業務効果】効率性を重視して仕事を進めたい


p.126-129
モチベーションポートフォリオ
1)どんな判断基準に基づいて行動するのかを把握する「思考行動特性」
「ドライブ」と「ボランティア」、「アナライズ」と「クリエイト」の2軸
2)どんなタイプの仕事を指向するのかを把握する「職務指向特性」
「ハンター」と「ファーマー」、「ゼネラリスト」と「スペシャリスト」の2軸


p.154
拡大モードの症状
1)業務過多疲弊症
急激な業務拡大に伴い、業務を支え遂行するリソースが慢性的に不足する。また人員を増大しても即効性が期待できず、当分の間は、特定の社員に多くの業務が集中する。そのため、社内に疲弊感が蔓延する。

2)業務プロセス属人症
肥大化した業務量を処理する仕組みが未整備なため、すべての業務が属人的に行われている。ノウハウ、ナレッジの共有は叫ばれるものの、目先の業務対応で追われ一向に進まない。

3)マネジメント不全症
組織内の結節点を担うべきマネジャーがマネジメントに時間を割く余裕がなく、プレーヤー化してしまうマネジメントが機能せず、組織内での役割分担が不明確になる。業務範囲や管理範囲に関するストレス。

4)経営トップ依存症
従来のトップダウンによる事業成功が組織内に定着し、組織内にトップや経営幹部に対する依存心が醸成される。

5)判断基準喪失症
事業の立ち上げ期の「試行モード」を経験してきたメンバーと、組織としての体をなしてから入社したメンバー間で、共通体験が異なる。会社観・事業観・仕事観などの違いで、さまざまな物事の判断基準にズレが生じる。


p.192
シフトチェンジを成功させるための変革ステップ
1)解凍
2)変化
3)凍結


p.250

これからの企業経営は「働いている=利益に貢献している」し、「遊びのようでもある=夢中になっている」し、「そこから自らを成長させる=自己の価値向上を実感する」ような時間と空間を従業員に提供することが求められる。「モチベーションカンパニー」とは、「遊」「学」「働」の3つのモードがバランスよく生起し、たくさんの「無邪気」と「根気」と「本気」が存在している社会のことなのである。