ドナルド・A・ノーマン『エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために』

エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために

エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために


プロダクトデザインだけの話でなく、もっと広く一般的に参考になると思う。僕は教育のカリキュラムの面からどうしても読んでしまう。実際、後半には授業をどう変えればいいのか、という提言もある。自分にとても近い部分もあり、「ああ、この道であっているなあ」と恐れ多くも思ってしまったりもします。

以下、メモ。

p.23
・進化的により発達した動物の方が原始的な動物よりもより情動的である。
・人が全動物の中で最も情動豊かである。
・ポジティブな情動は、学習や好奇心、創造的な思考に重要。
・幸せな気分であることは思考のプロセスを拡大し、創造的な思考を促進する(アリス・アイセン)
・難しい問題を解くように求められたときなど、いつもと違う「枠組みに捕われない」考え方をする必要がある問題に取り組むとき、大したものでなくても気分をよくするような贈り物をもらうと、よりよく解決する。
・気分の良いときには、ブレーンストーミングや複数の選択肢の吟味がよりうまくいく。


p.33

ポジティブな感情は好奇心をかきたて、創造性を働かせ、脳を効果的な学習器官へと変える。ポジティブな感情の下では、木よりも森を見て、細部にこだわらず全体像を好むようになる。逆に、悲しいときや心配なとき、ネガティブな感情の下では、森よりもまず木を見て、全体像より細部の方を見がちである。


p.49-50
3つのレベルでデザインする

3つのレベルは、次のように、製品の特性に対応づけることができる。
本能的デザイン >> 外観
行動的デザイン >> 使うことの喜びと効用
内省的デザイン >> 自己イメージ、個人的満足感、想い出


p.78-79
情動的デザインの基本ツールについてまとめ
・魅力的なモノはよりうまく働く
・その魅力が心のプロセスをより創造的にし、ちょっとした困難により耐えるようにして、ポジティブな情動を生み出す
・3つのレベルの処理は対応する3つの形のデザインにつながる。本能的、行動的、内省的デザインである。それぞれが人の行動に重要な役割を果たし、デザイン、販売、および製品の使い勝手に均しく重要である。


p.91
良い行動的デザインの原理
・機能
=その製品がどんなもので、どんな機能を果たすのか

・わかりやすさ
=製品を理解する、「いったん学んだら、ずっと忘れない」ようにすること。

・使いやすさ
=デザイナーの頭の中のイメージとユーザーのイメージを近づける。

・物理的な感触
・感覚
=ツマミは動かすときに無抵抗よりも、少し手応えがあるほうがいい。


p.204
常時接続、常時散漫
%これって、IMとかやっているとすごいわかる気がする(笑)


p.257

我々は知的に見えるインタラクションはどれも人間か、少なくとも知的存在によるものだと信じやすい


p.276-277

ロボット教師は教育の方法を変える大きな可能性がある。今日よく見かける典型的な例は、教壇に立って行なう杓子定規の講義である。学生は日常生活には関係がないとしか思えない、自分たちには興味もないことを聞かされる。講義や教科書での教育は、教師の側から見れば最も教えやすい方法だが、学習者にとっては最も効果が薄い。最も強力な学習は、学びたいという動機にあふれた学生がテーマに夢中になり、その概念と格闘して、関心のあることがらにその概念をどのように適用すればよいかを学ぶことだ。そう、格闘することである。学習は、意欲的で動的なプロセスであり、格闘することが欠かせない。いったん関心をもてば、その格闘は楽しいものになる。優れた教育はこのようにして行なわれる。講義によってではなく、徒弟方式、コーチング方式、メンター方式によってである。運動選手はこのようにして学ぶ。ビデオゲームの魅力の本質もここにある。もっともゲームで学生が学ぶことにはほとんど実用的な価値がない。これらの方法は学習理論ではよく知られていて、問題志向学習、探求型学習、構成主義的学習法などと呼ばれている。
ここでは情動が役目を果たしている。学生は、動機付けられているとき、何かに関心があるときに最もよく学ぶ。情動的に関わり、そのテーマに興奮して引き込まれることが必要だ。これが、例や、図やイラスト、ビデオやアニメが威力を発揮する理由である。普通退屈でうんざりするようなトピックだと思われるものでも、学習が退屈でうんざりする演習である必要はない。どんなトピックもわくわくするものにできるし、どんなトピックも誰かの情動を呼び起こすのであるから、みなもわくわくさせない手はない。いまや、授業を生き生きとしたものにし、歴史を人間の格闘として見なし、学生たちには美術、音楽、科学、数学の構造を理解させ、良さを味わわせるようにすべきときだ。こういう話題をわくわくしたものにするには、どうすればよいか。それらを学生一人ひとりの生活に関係あるものにする。学生が身につけた技能をすぐにおうようできるようにすることが最も効果的であることが多い。わくわくさせ、情動的に引き込み、知的に効果的にするような、学習経験を発達させることこそ、世界で最も優秀な人材が取り組むべき真のデザインの課題である。


p.303

インターネット上の個人のウェブサイトは、その人自身を表現し、世界中の人とインタラクションし、その投稿に意義を認めるコミュニティを見つける強力なツールだ。ニュースレターやメーリングリスト、チャットルームなどのインターネット技術により、人々は集まり、アイデアや意見、経験を共有することができる。個人のウェブサイトやウェブログは、美術、音楽、写真、日々の出来事への想いなど、どんなものでも個人の表現ができる。強い情動表現を作り出す強力で個人的な経験なのである。