情報デザインアソシエイツ『情報デザイン 分かりやすさの設計』

情報デザイン―分かりやすさの設計

情報デザイン―分かりやすさの設計


「体験のデザイン(Experience Design)」っていう考え方はとてもおもしろいと思いました。いろいろと参考にできそう。

以下、メモ。

p.22

情報デザイナーに求められる仕事は、単に「良い」デザインではなく、その場で何が必要とされているかを知ることだ。間違った問題が誤った方法で問われている時、美しいレイアウトや魅力的な色を使った印刷が一体何の意味を持つだろうか。


p.23

我々情報デザイナーは、「徹底した」事実を示すことと、エンターテインメントのために観客を楽しませること、言い換えればデザインのためにデザインすることの間の際どい線上を歩いている。笑わせることだけを狙って努力することはないが、ちょっとしたユーモアはいつも役に立つ。記入するのが楽しくなるような書式、微笑ませてくれるようなサイン、寝る前に読むのにベッドに持っていきたくなるようなマニュアルを見せてほしい。それが「情報不安症」の特効薬だ。


p.38-39
リチャード・ソール・ワーマン
・自らを「情報アーキテクト」と位置づけ
・TEDという国際会議を主宰。Technology, Education , Designの重なり合う領域。


p.75
デザイナーとユーザーの共創空間 リズ・サンダース

「体験のデザイン(Experience Design)」という新しい領域が誕生した。
「体験のデザイン」とは、ネットワーク社会において意味を伝える際のコミュニケーションの方法をデザインすることだ。ネットワーク社会の中では、単純な始点や終点はどこにもなく、あらゆる部分が意味を持っていなければならない。
体験をデザインする道具には、ソフトウェア、ハードウェア、そして人の心の中にある「ウェットウェア」がある。体験のデザイナーに求められるのは、エンジニアの厳密さとアーティストの発想の両方だ。従来のデザイン技法に精通するだけでなく、社会学、経済学、建築、演劇、文学といった諸分野の識者と協力し、議論を交わすことも必要だ。


p.76

インターフェース、環境、シナリオといった、体験に結びつく提案はデザインできる。しかし体験そのものをデザインするのは不可能だ。体験の専門家、識者は、インターフェースなり環境なりシナリオなりを実際に体験するユーザーの方だからだ。


p.81
体験をするためには「足場」が必要だ。


「足場」をつくるデザイナーは、相手の思考を活性化させ想像力を喚起するために、ユーザーが参加できるツールを提供しなくてはならない。そのツールボックスに入っている要素の数は限られていても、組み合わせや組換えによってバリエーションが展開でき、無限の意味を作り出せるものが必要だ。クリエーティビティーは形態、文章、時間など、さまざまな方法で表現される。ツールキットには何種類もの異なるタイプを用意する。


p.177
宣言文:公共情報デザインのための12ヶ条(ヨアヒム・ミュラー・ランセィ)

ごくあたりまえのこと
誰でもみな、情報をデザインした経験があるはずだ。情報のデザイナーはスペシャリストではなく、ゼネラリストである。

先入観を持たないこと
仕事の前に予備知識は少ないほどよい。あれこれ質問をして、受け手と同じようにふるまうことが、情報の内容を一般の人に分かりやすくする上で役立つ。

調査について
この仕事は、造形や製作よりも、調査や研究の方に多大な労力をかけねばならない。

理性について
一般常識は必要不可欠である。ビジョンや想像力は、仕事をしていれば後から付いて来る。

変化について
社会とは成長し、流動し、変化するものである。公共の情報に完成はない。変化を見込んでデザインすること。成長の余地を残すこと。

奥行きについて
単純にしてはいけない。ただ明確にすること。深みや詳細さに複数のレベルを設けること。そうすれば、どの深さまで読み込むかを受け手が自分で選べる。

幅広さについて
すっきり簡潔に。異物を混ぜたりあいまいにしてはいけない。コミュニケーションであれば情報であるとは限らないのだから。その違いを認識し、明確に区別すること。

クライアントについて
あらゆる立場の関係者を巻き込むべきだが、どのように関与してもらうかは分けること。タイミング、立場と役割、影響をおよぼすレベル、決定権などをきちんと使い分けること。

プロセスについて
最も難しい部分から着手すること。最悪のシナリオが解決できれば、後は大体自然にうまくいくものだ。

人々について
受け手に対して、自分がしてもらいたいと思うような扱いをしているかどうか考えること。情報は他人から一方的に押し付けられるものではなく、提供されるべきものである。

予算について
雀の涙を大きくふくらます手腕を身に付けること。しかしそれができることを他人に悟られてはならない。

最後に
ところで、ユーザーはあなたの心も求めていることをお忘れなく。