澤泉重一『偶然からモノを見つけだす能力-「セレンディピティ」の活かし方』

偶然からモノを見つけだす能力―「セレンディピティ」の活かし方 (角川oneテーマ21)

偶然からモノを見つけだす能力―「セレンディピティ」の活かし方 (角川oneテーマ21)


Passion For The Future: 偶然からモノを見つけだす能力―「セレンディピティ」の活かし方 で記事を読んで、「ああ、本当だ。そういうことってあるよなー」と不思議に納得をしてしまい、読んでみた。偶然で何かを掴み取るっていうのは、心無い人たちに「運がいいよねー」と片付けられてしまうこともあるけど、その裏側には血のにじむような努力があるはずだと思っている。でないと、偶然から何かを掴み取れないと思うから。人知を超えた何かを活かすために、地味な努力や仮説立案、検証などが絶えずされていないとだめなんだろうな。

p.126 「
トーマス・クーンが『科学革命の構造』で、「答えのあるジグソー・パズルをひねくりまわしてはめこむだけでは、パラダイム・シフトを見いだす考えができなくなる」と述べているのも、思考力を停止させる習慣を与えることを示唆していると思われる。

人間の思考力は奥が深いが、これ以上は考えなくてもよいという習慣を子ども時代から植え付けると、だんだん考えなくなってしまう。考える習慣があれば興味も湧いてくるし、興味があれば考える習慣もつくという良い循環が回り出す。子どもの個性発見と並んで、子どもたちに「偶然に発見する楽しみ」を、ぜひ教えていきたいものである。

選択肢の枠を取り払って考えさせる訓練が必要だという部分は激しく同意。クーンもそういうことを言っているのだね。それは知らなかったな。ちょっとチェック入れてみようっと。それとは別に、理解を促進するために選択肢を作って子どもたちを導くことも必要。両方のバランスだよねー。

以下、メモ。

p.68

「計画していた研究」の途上で“偶然に見つかるテーマ”や“偶然に見つかる手法”が「改革的で良い研究」となる可能性が高いのは、しかるべき理由がある。
この理由とは“偶然”が作用することによって計画者の従来の常識を超えてしまうことにある。一般論として言えば、常識的なところまでは計画に織り込まれるが、その範囲を超えると“常識”が規制力として働いて、結果としては従来の改善の積み上げはできても、改革的なレベルまでは到達しにくくなるのである。
一方、間違いや誤解があっても、“偶然の作用”が働くと常識的な範囲を超越しやすくなり、そこには希少だが改革的な成果へのチャンスがある。
希少と断るのは、多くの場合はそこには失敗が待っているからである。そしてたいていの場合は失敗を確認する前に、多くの人は賢くも引き返してしまうことになる。
やはり、ほとんどの場合は常識が正しいのである。
ただ、希少的にその常識を超えることがある。しかも、時には失敗によってこの常識を超えることすらある。
“偶然”が作用して失敗になったときにも、そこに常識を超える何かを見つけ出し「改革的で良い結果」につながることがある。
この常識を超えて何かを見つけ出すときに“察知力”がものを言う。


p.71
ノーベル賞受賞者白川英樹教授 筑波大学フレッシュマン・セミナー(1997)
「偶然を認識し、思索を深めて発見や発明につなげるためには、その偶然に出会った人が旺盛な好奇心や深い認知力と洞察力に富んでいることが不可欠です」


p.85
世界的に革新をもたらした発見に共通していることが見出される
・意図して進めた目的とは異なったところがある
・学識、見識、集中力、経験などのレベルが高い
・途中で見捨てられても不思議でない状況を通過している
・異なった分野の人のアドバイスを有効に活かしている
・偶然の機会をうまくつかんでいる
・成果は従来の常識をうち破る意外性を有している


p.126

“複数の答え”について日頃思っていることは、三択問題の類は広く考える習慣をなくすことにつながり、子ども時代には好ましくないことである。採点が容易な三択問題の場はなくならないであろうが、この類の試験に良い点を取る方法だけを教えるようなことは、考える力をつける学生時代には極力避けていきたいものである。現実社会では二つ目以降の答えが面白くなることも多いのである。


p.126

トーマス・クーンが『科学革命の構造』で、「答えのあるジグソー・パズルをひねくりまわしてはめこむだけでは、パラダイム・シフトを見いだす考えができなくなる」と述べているのも、思考力を停止させる習慣を与えることを示唆していると思われる。
人間の思考力は奥が深いが、これ以上は考えなくてもよいという習慣を子ども時代から植え付けると、だんだん考えなくなってしまう。考える習慣があれば興味も湧いてくるし、興味があれば考える習慣もつくという良い循環が回り出す。子どもの個性発見と並んで、子どもたちに「偶然に発見する楽しみ」を、ぜひ教えていきたいものである。


p.145
まずネーミングすることが大事!

ネーミングされるとその善し悪しにかかわらず情報交換がしやすくなるし、話題に取り上げられやすくなる。名前をつけることは、研究分野においても多くの面でプラスとなる。

相対性理論とかビッグバンなども名前がつくことで一気にメジャーに。


p.163
セレンディピティ活用の基本ステップの一例
※順序が変わったりもありうる

1)感動
2)観察
3)記録
4)ネーミング
5)課題の認識
6)連想
7)ファイリング
8)行動範囲の拡大
9)仮説
10)検証
11)発見
12)創造


p.164-p.165

★“偶然”の理論
1.常識の規制力を“偶然”が取り除く
常識はいつも超越を規制している
2.“偶然”の掴み方が大切
“偶然”に出会えないとは、気づかぬこと
3.神の贈り物
人知のおよばぬ素晴らしさと面白さ

★★才能トレーニング
1.感動→観察・記録→右脳へのプリント・イン
潜在能力活用、無意識にひらめく素地
2.情報蒐集、情報交換
複数の人の集まるところに文化があり
3.醸成、仮説、検証、創造
発見への意義付け

★★★感動
1.感動も習慣で豊かになる
一日十回の感動、好奇心育成、好むに如かず
2.記録することで観察力も増す
記録媒体は高度に進化、観察を多様化する、百人の村
3.右脳の活用
一度入れば24時間無意識かの作動、ひらめき、連想

★★★★情報
1.情報収集
手軽にすばやくできるファイリングと検索システム
2.情報交換
思いがけない出会い、人が集まると文化ができる
3.パソコン活用
インターネット、携帯端末、デジタル・デバイド

★★★★★仮説、検証
1.醸成から仮説へ
仮説モデルの立案による単純化
2.検証
仮説の正しさを多角的に確認する
3.創造
発見した仮説を創造的に活用する