B.G.Davis, L.Wood and R.Wilson『授業をどうする!―カリフォルニア大学バークレー校の授業改善のためのアイデア集』

授業をどうする!―カリフォルニア大学バークレー校の授業改善のためのアイデア集

授業をどうする!―カリフォルニア大学バークレー校の授業改善のためのアイデア集


amazonからお勧めされるままに買ってしまった本(笑)。内容としてはとても基本的なTIPSがまとめられていたのが、逆に良かったなと思います。すぐに使えそうな感じだし。こういうアイデア集みたいなのがあるのはいいな。仕事に活かせそう。

以下、メモ。

p.iv

訳者らは本書を翻訳する過程において、米国の大学社会に対する誤解を認識せざるを得なかった。すなわち、米国の大学はやる気と能力のある学生のみを対象としている社会ではなく、落ちこぼれをいかに拾うかということに努力を惜しまない社会であるということである。

これ、僕もそう思ってました。優秀な人をひたすら伸ばしていく方向ばかりクローズアップされますが、優秀な人を伸ばす仕組みがそのまま落ちこぼれる人を最小限にする工夫にもなっているのだな、と感じます。

p.17

初学者には枝葉を除く 経済学の教授の例

明確な説明をする秘訣は、1つの講義で扱う事柄の数を少なめにすることです。多くの先生方がおかす最大の間違いは、6個、12個、18個といった具合に、あまりにたくさんの事柄を詰め込もうとすることです。
私はたいてい主要なポイントを3つに絞り、講義があるたびに、いろいろなやり方でそれらを繰り返します。学び始めの学部学生たちには学問のこみいった複雑さを教える必要はありません。おし、そんなことをすれば彼らを混乱させるばかりです。初学者向けのコースは、基礎に重点を絞り、一般化した形で、原則をはずれる例外的なものをあまり多く取り上げないようにしたときいちばんうまくゆきます。

p.18
主要なポイントは言い方を変えて数回説明する
・繰り返すことは学ぶこと
・理解する可能性を最大に
・用いる言葉を意識的に変えて同じことを2回言う
・数式・言葉・グラフを用いる

具体的な例、あるいは覚えやすい例を多用する
・学生がよく知っている例を
子どもたちのトレンドに敏感に
・おもしろい、具体的な例を
子どもたちに親しみのあるもの
・認識しやすいような例を
これは東京ドーム○個分

p.35

ディスカッションを促進するように教室内を動き回る
○質問者には近づくな 経営学の教授の例
他の学生をディスカッションに引き込み、また私に対してと同様、学生同士でも意見を出し合うようにさせるためには、質問をした学生のところに行くより、むしろその学生から遠ざかるように動く方がうまくいくことがわかりました。こうすると質問をした学生は自分の意見をみんなにも聞こえるように言わなければならなくなり、その結果みんながディスカッションに引き込まれることになります。また、その学生が仲間に話しかける可能性も高くなるのです。


学生の質問を他の学生たちに向けなおす

p.44

大講堂での講義ではあらゆる説明を大げさに行う
○とにかく大げさに 経済学の教授の例
(略)800人の学生というのはすでに「聴衆」であって、通常の意味での「クラス規模」の学生たちの集まりではないのです。
非常に多くの聴衆の前では、学生数30人のクラス、あるいは100人のクラスの講義のときにすることは、ちっぽけでぎこちなく、よそよそしく見えるものです。ですから、聴衆の関心をひきつけるためには、とにかく大げさに、それこそ「人生よりだいじなこと」を話しているかのごとくふるまわなくてはなりません。

p.50
「いかにも楽しそうに始め」そして「力強く終わる」

p.51

声のピッチや抑揚を変えることを学ぶ
○聖書の朗読と組み合わせる ある教員の例
私は話し方のレッスンを教会における聖書の朗読と組み合わせ、好結果を得ています。別の教官は夏休み期間中にキャンパスで演技のクラスを受講し、教室での話し振りが改良されたのみならず、自分自身その演技のクラスを十分楽しんだようです。

p.58

間違いからいかに学ぶかを強調する
○間違いはだれにでもある、そこから何を学ぶか 生化学の教授の例
学生の実験レポートの日付など簡単に偽造できますから、私の主要な関心事は学生たちが正しい実験結果を得たかどうかではなく、自分の実験はなぜ失敗したのかを彼らが理解したかどうかなのです。もし、学生たちがなぜ正しい実験結果を得られなかったかを分析し、ちゃんと説明ができれば、その実験レポートは文句なしに合格です。だれだって間違いを犯すのだということを私は強調しています。重要なことは、そういった間違いからいかに多くを学ぶかです。

○間違いを隠すな、恐れるな 英語学の教授の例
学生たちの文献の調査が間違っているときは、彼らが快くそれを認めることができるように、指摘する口調に注意しています。私のコースは文献の調査の方法論とその技術的な範囲を学ぶことに焦点を合わせています。

p.72

○解答は試験の直後に 化学の教授の例
試験に際し、正解を記した印刷物を準備し、学生たちが答案を提出して教室を出て行くときにそれを配布するようにしています。試験が終わった後、自分のできがどうだったか知るために、学生たちを何日も何週間も待たせることには何の意味もありません。彼らが試験の結果に最も関心があるのは、試験が終わった直後です。それに、学生たちの知識が最もよく強化されるのも、やっぱり試験直後です。

p.96

自分の教え方の質がよいかどうかを気にかけていることを示す

○調子はどう?何か提案は? 教育学の教授の例
私は学生たちに、インデックス・カードの表と裏に書かれた2つの質問に答えるよう依頼しています。私のする質問とは、「調子はどう?」というのと、「何か提案したいことはないですか?」です。

p.98

ときどき講義の終わりに「Minute Paper」を実施する。
○重要なことは「疑問は?」 物理学の教授の例
私は学期の間何度か(だいたい週に1度程度ですが)クラスに少し早めに行きます。そして黒板に次の2つの質問を書き出しておきます。
1)今日学んだ事柄のうち何が最も重要であると思いますか?
2)今日のクラス講義の終わりに、真っ先に心に浮かんだ疑問は何ですか?
そうしてから、私は49分間の講義をします。講義時間終了の1分前に、私はクラスの学生たちにこう言います。「紙を用意して、1分間でこの2つの質問に答えること」とね。
(略)
講義が終わりに近付くにつれ、彼らは今度は「さて、今日の講義が終わったときに、真っ先に心に浮かぶ疑問は何かなぁ」などと考えることになるのです。
学生たちの文章力も向上します。学期の最終週に私が受け取る学生たちの回答は、実に理路整然としており、最初の頃と比べてずっと長いものになっています。

p.102

○低学年にも最新情報を 政治学の教授の例
私の受け持つクラスでは、低学年のコースの学生たちでも最新の考え方を知ることが重要です。したがって、リーディング・リストには最新のジャーナル論文を少なくとも数点必ず入れるようにしています。

p.105

ある1つの理論に基づく見解を伝える教科書を選び、それと対立する考え方に沿った講義を組み立てる
○教科書の内容を繰り返すより補完する 経済学の教授の例
自由主義経済学者の理論を説明する教科書を採用し、講義自体はもっと保守的な経済理論、あるいはより急進的な経済理論に沿ったものにします。

p.115

私は学生を指名して黒板まで来させ、問題を解かせるようにしています。黒板の前で途方にくれたままでいないように、学生は「コーチ」役の仲間を1人連れてきてもよいことになっています。

p.119

試験にメモの持ち込みを許可することで、公式を覚えなければならないという学生たちの心配を軽減することができます。それにこういったカンニング・ペイパーを準備することは、学生たちが注意を集中して勉強する一助ともなるのです。持ち込んでよいメモを1枚に制限しているので、学生たちに、コースの最も重要な部分を総合的にまとめさせることにもなります。