藤原帰一『「正しい戦争」は本当にあるのか」

「正しい戦争」は本当にあるのか

「正しい戦争」は本当にあるのか


「戦争と平和」は自分にとって、今の道に進むことになる最大のきっかけというかテーマだったし、今でも追いかけています。でも、タダの「ラブ&ピース」だけじゃダメなんだと思うんですよね。
戦争をなくしたいから、どうやったら戦争をしなくていい仕組みを作るか。どうしたら、「戦争なんておかしいだろ?」という所から一歩進んで、じゃあどうすればいいのか?を考えるリーダーが有権者がたくさんに生まれるか。それには教育が有効なアプローチだと思ったんだよね。
基本的には、その方向は自分で今も間違っていないと思う。あとはこれを伝えていくだけ。

そんな時期に、ちょうどこの本を手に取ったのは良かったかもしれない。わかりやすい語り口で、読みやすい。けど、そこから枝葉に分かれて細かく踏み込みたいことが多かった。

ラブ&ピースだけじゃだめなんだ

p.119【参考】
「デモクラシーの国家はお互いに戦争しない、ということを統計的に実証する試み
=ブルース・ラセット(イェール大学教授)
 『パクス・デモクラティア--冷戦後世界への原理』

これは、民主国家は戦争しない、という意味ではない

p.128

問題なのは民主主義じゃなくて、思い込みで民主化を押しつけるという政策なんです。デモクラシーが政府の資格、という考えは、ぼくは間違ってはいないと思う。シンガポールとかマレーシアとか、人権やデモクラシーの押しつけに反対する政府は、実は自分たちの権力と既得権を守ろうとしてるだけだと言ってもいい。でも民主化はなによりも国内社会から生まれるものであって、外から押しつけられるような制作は正しくもないし、成功もしないでしょう。

p.192
「冷戦はアメリカが勝った」史観:
冷戦はソ連・ゴルバチョフによる改革でバカなケンカが終わった

ソ連解体によって、アメリカの勝利という見方の決定打に

「冷戦はアメリカが勝った」史観:
※東西の合意とか協力じゃなくて、東側の瓦解であり、西側の封じ込め政策の勝利
※アメリカが果敢にソ連を追い込んだから
※ソ連に圧力を加え続けたレーガン大統領が英明だったから

<合意による>冷戦終結でなく、<正義による>冷戦終結史観


ソ連を脅したから冷戦が終ったんだから、中国も脅せばいいんだ、と変化

p.202-203

言葉を換えて言いますとね、戦争なしに国際関係の仕組みを変えるって言うのは本当にむずかしいことなんです。ことに、小規模で短期の戦争を伴うと、戦争という行動は合理的なんだっていうふうに考えられちゃうから、最悪です。もっとざっくり言っちゃうと、戦争やって痛い目にあうような、戦争なんて目的効率性がないんだと思えるときには国際関係の仕組みって大きく変わるんだけど、戦争ってけっこううまくいくじゃん、合理性高い!って思っちゃえるときには変わらないんですよね。というわけで、これだけ大きな変化のはずなのに、なにか単純なリアリズムだけで終っちゃった。なんかネズミ一匹で終っちゃう、その仕組みっていうのはたぶん戦争なしで終ってくれたっていう幸福と不幸だったのではないでしょうか。